風が凪いだ。 「どうする?そっちから行くかい、◇」 望むところだ。 ***26輪*** ピピピピピピピ。 と、ヒソカに危うく闘技場に拉致されかけてたあたしを救ったのは、持参していたノートパソコンのメール受信音だった。振り切るようにしてパソコンの前に移動して操作すると、届いたのは依頼。よっしゃあああああ仕事入ったあああああ―――・・・とあたしは思わずぐっ!ガッツポーズをしかけて、依頼人の名前で凍りついた。 『イルミ・ゾルディック』 依頼ってゆーかただの呼び出しじゃん!そういやあたし、イルミの留守を狙って飛び出してきたんだった忘れてたやばい捕まったら怒られる!!そんな馬鹿な!!よりいっそう闘技場に出るわけには行かなくなった。あんなのに出たら一発で居場所バレるじゃん!! 「無理!無理無理無理無理!絶対嫌だ!!ヒソカっ!情報なら今渡して、闘技場に出ることだけは嫌!」 「・・・一体どうしたんだい◆」 「嫌だって言ったら い や !!」 「もう◇我がままだねったら◆」 なんとでも言いやがれあたしはむしろ今すぐにでもここを引き払って逃げたいくらいだ!従兄弟の手がかりはもうこの際あとまわしだ、あたしは自分の身のほうが大事だ! 「ということであたしは消える。じゃあねゴン、キルア」 「えっちょっと!?」 「なんでいきなりなんだよ!?」 「仕事だよ仕事」 荷物は基本散らかさないタチだから簡単に手元のものをまとめはじめる。「なんとかしてよヒソカー!が帰っちゃうよー!」余計なこと言うんじゃないよゴン!! 「うーん仕方ないなあ◇ゴンもそこまでと戦いたいの?」 「うん!!」 「そんなにゴンに思われるなんて嫉妬しちゃうなあボク◆」 「勝手に言ってろピエロ野郎!!」 「だんだん言葉遣いに遠慮がなくなってきてるよ◇」 貴様相手に最初から遠慮も何もないわ!!・・・若干キャラが崩れつつあるな、あたしの。ゴンの必死の願いにヒソカがあたしを呼んだ。 「仕方ないなあ◆じゃあ手合わせでどうだい◇」 「・・・。手合わせ、って・・・」 「そこの森でいいよ◆ただしボクは念とか使わせて貰うけど」・・・っていうか、それ、ただの殺し合いじゃあ・・・あたし死にたくないんだけど。 だけど結局ほだされたあたしは、ここを発つ前にヒソカと一戦やらかすことになった。条件は「まいった・降参あり」でゴンとキルアは近くから見学。ゴンがあたしと戦いたいんじゃなかったっけ、とは思ったけどゴンはまだ怪我の治療中で戦闘も止められてる、と。(なんかちゃっかりウイングさん?に見学の許可貰いに行ったんだけどあの子。が帰っちゃうから!!とかなんとか言って)・・・うーん、上手く乗せられた気がする。 * たっ、とが真っ先に地を蹴った。隣でゴンが息をのむ。力は正直、はそんなに強い方じゃない。ゴンとどっこいどっこいだろ。多分、ヒソカの方が圧倒的に強い。だからやるなら先、先手必勝だ。相手の出方を見ている余裕は、にはおそらくない。 「っ!」 「いい蹴りだ◇」 繰り出した蹴りは軽々捕えられて、だけど勢いをつけてその拘束から逃れる。すかさず腹に入った重い一発に呼吸が一瞬止まる。咳き込んでる暇もなくは地を跳ねるようにして遠ざかった。 「柔軟性が高いね◆猫みたいだ◇」 「・・・どーも」 そんなにすぐ、相手の動きを分析できるのはやっぱりヒソカは流石だ。「じゃあこっちも◆」なんて言った瞬間、その姿が消える。は背中から飛んできた鋭い手刀を髪一筋でよけて代わりに肘鉄をお見舞いし(あまり効いてない。多分、は軽すぎる)ヒソカの肩を借りて後ろに飛んだ。 「・・・◆」 しばらく攻防が続く。だけど、オレから見ても明らかにが押されていた。細い肩をかすめて、そこから赤い鮮血がぱたたたっと滴るのが見えた。「!」とゴンが思わず呼んだその声に、はふと笑みを浮かべる。・・・なんだあれ、余裕かよ。 「あれ・・・、ねえキルア、なんだか霧みたいなの見えない?」 「―――え」 ゴンの言葉に、オレはようやくとヒソカの周りの白いもやに気がついた。ほとんど意識しなければ分からない程度の薄い霧だ。しかもそれはよく見ると、2人の上空にあるように見える。次の瞬間、が不敵に笑うと組みあっていたヒソカから飛び退った。 「≪氷晶の雨(ダイヤモンドダスト)≫」 「「「!!」」」 がそう呟いた瞬間、霧から瞬時につららにかわった『それ』がまるで雨のようにヒソカに降り注ぐ!さすがのヒソカもよけきれずにいくつか受けて血を流した。 「・・・すごいね。さすがだねヒソカ。あそこまで避けるなんてね」 「君の能力がいまだによくわからないなあボクは◇」 「生憎、バラすつもりは毛頭ないから」 これでもヒソカもほとんど同量ぐらいの血を流しているだろう。オレは冷静になろうとしながら2人を見た。ただ流している時間的にはの方が長い。血を流しながら戦闘を続けてたはずだ。圧倒的にが不利なはずだ。―――なのに。 「・・・ッ◆」 ヒソカが、突然。なんの前触れもなく、唐突に。 地に、膝をついた。 「え!?」 驚いたゴンが声を上げる。ただ、ヒソカは膝をつきつつも笑みを浮かべたままだ。・・・血だらけのの方が実際、限界だろ。だけどその瞬間、くつくつと笑いだしていたヒソカがいきなり「降参◇」を宣言した。激しい組合いだったわりに唐突で静かな結末に、オレたちは思わず呆然とする。 「全く・・・キミは本当に面白いねえ◇」 「どーも」 「もっともっと君のことが知りたくなったよ◆」 血を拭うこともせずはヒソカの言葉を黙って聞き流す。最後にヒソカの呟いた言葉はオレたちには聞こえなかった。ヒソカは、ゆっくりと立ち上がると楽しそうに笑いながら木立の中へと消えていく。その笑い声が聞こえなくなって、の体が傾いだ。 「「!!」」 * やばいさすがにしんどい。血を流し過ぎた。耐えきれずにあたしはどさりと自分の倒れる音をどこか遠くから聞いたような気がした。ゴンとキルアの心配するような顔が近い。 「ねえ、―――今のって、どうやったの?」 抱き起してくれたゴンがもっともな疑問を口にする。咄嗟にあたしの傷を布で塞いでくれるのは、ああ、やっぱり2人ともしっかりしたところもあるなあ。あーあ、とりあえず今日のうちに出発するのは無理だなあ。 「ん―――・・・じゃあひとつだけヒントをあげるよ」 そう言ってあたしはポケットに手を突っ込んだ。取りだしたのはライター。目を丸くする2人に、あたしは小さく笑うと念を発動した。その瞬間、ライターの火が3倍ほどの大きさになる。 「ハイ。おしまい。あたしはコレ以上、言うつもりは、ないよ」 「「・・・」」 「・・・それでさ、2人とも」 考え込んでしまった2人にあたしは苦笑を浮かべながら名前を呼んだ。ん?とこっちを向いたゴンとキルアに、あたしは頼む。 「医務室まで、連れてって」 ・・・あたしの戦闘用能力は、操作系だ。何を操作するってそれは、正確に言うと「決まってない」。もっと正確に言うと「なんでも操れる」だ。あたしが操作するのは、そう、物質を構成するモノ。「原子」だ。 ≪氷晶の雨(ダイヤモンドダスト)≫は空気中の水素分子の操作。でもって、ヒソカが地に足をついたあれは≪朱の魔法陣(ルビー・テリトリー)≫、あたしのよく使う技の一つだ。 自分の血で描いた4つの星を支点にしてフィールドを展開する。あたしはそのフィールド内の酸素濃度を操作できるのだ。星が消されない限りあたしはフィールドを張り続けることができる。だけど一度展開すると、フィールドを消さない限り別の場所に展開することはできない。相手が酸素濃度の低下や上昇に気づかない限り、なにも分からないうちに相手を気絶させることだって可能。ただしそのフィールド内にいれば、あたしだって例外なく酸素濃度の影響を受けるのだけど。 「、ありがとう。ごめんね、無理言って」 「・・・んーん。気にしないでいーよ、ゴン。ただし今度あたしに何かオゴりなさい」 「・・・、うん!」 「キルアもね」 「・・・ああ、わかってるよ」 思っていたよりも血を流し過ぎてたらしく、結局あたしは医務室で輸血を受けてから闘技場を後にすることになった。おおっと忘れてた、イルミに見つかんないようにしなきゃ。 ←BACK**NEXT→ 110720 ≪補足≫ の能力ですが、非常に肉付けが甘いです← 申し訳ないことに管理人の理系能力が大変低く、「いやいやいやありえないだろ原子操作したってこんなことありえねえよwwww」という点がとてつもなく見受けられると思いますごめんなさいスライディング土下座!! 個人的に昔から化学と物理と数学つまりは理系の才能が全くなく← 能力を裏付けるために一応勉強はしたんですが、その、やっぱりよくわからないです\(^o^)/ もしも「いや絶対ありえない」とか納得いかない点がありましたらどうぞご連絡くださいませ。でもって解説して頂けると非常にありがたいですorz 一応、フィクションということで多少の甘い点は目をつぶって頂けると嬉しいです>< なんでこんな能力にしたんだwwwと自分で自分を突っ込みたくてたまりませんがもうどうしようもないです← 諦めました。(え) これからも管理人のエセ化学的能力が展開されていく物語だと思いますが、どうぞお付き合いくださいませ・・・! ここまで読んでくださってありがとうございました! |