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ううむ、合縁奇縁、というかなんというか・・・。 会場のドでかい画面に映る見知った顔を見てあたしは目を丸くした。 ***23輪*** 天空闘技場で景気良く対戦相手を吹っ飛ばしたゴンの姿がでかでかと映し出された。うわー、9月1日どころか速攻で再会じゃん。とは言っても画面上なので一方的にあたしだけ、だけど。 もちろんあたしは不参加だ。別に戦いに来たわけではなくて、ただ単に仕事です。ここで依頼主と待ち合わせ。ゴンとキルアはすでに180階クラスだった。もう200階に到達するレベル。今クリアしたから190階に到達するか。さすがだなー、でも念使えてないから、多分200階で打ち止めだけど。 「ミオト◆」 「・・・ヒソカ」 「本当に来てくれたんだね◇」 「正式な依頼だからね」 すたすたと自然に隣に座ったヒソカに視線をやる。彼の服装は何故だかいつもの奇抜な衣装ではなく、普通にシャツだ。メイクもなし。そうしてると普通なんだからいつもそうしてりゃいいじゃん・・・。 「なんで天空闘技場?別にかまわないけど」 「戦闘のメッカに僕がいるのは不思議じゃないだろ?」 「・・・嘘つけ、どーせゴンとキルアを追っかけたんだろが」 「よく分かったね◆」 「アレ見ればね」 正直不思議だったんだけど、ここに来て二人の姿を見て納得した。ヒソカきもい。追っかけてきたってどういうことだよ、なんだもうこのひと・・・。それはもう舐めまわすように画面の2人を見るヒソカ。もう他人のふりしたい。 「まさかヒソカから依頼が入るなんてね。驚いたよ」 「そうかい?僕だってその世界の住人だからねえ◇」 「――――クロロから聞いた?」 瞬間、ヒソカの空気が変わった。それからニィ、と笑みを浮かべてあたしを見下ろす。それを躊躇いなく見返した。 「さすがは『零』だね◆調べたのかい?」 「きっかけは別にあるけれど、まあ確かに調べさせてもらったよ。相当深くてかなりしんどかったけど。幻影旅団ナンバー4、ヒソカ。よくも試験じゃ白々しい顔してたね」 「金髪の彼のことかい?そんなに君が気にすることじゃないだろ◇」 ぐっ、と口ごもった。確かにそうだ、けど。 「・・・クラピカは、友だちだから」 「へえ◆クロロが不思議そうな顔をしてたよ◇あのミオトが誰かとつるむとは、だって◆」 「なにそれ、・・・あいつらのことクロロに言ったの?」 「言ってないよ◇そんなもったいない事するわけないじゃないか◆」 睨みつけるとヒソカはくつくつとおかしそうに笑った。神経を逆なでするようなその表情に、あたしは自分が苛立ってることに気づく。落ち着け、相手のペースに飲まれるなんて『零』らしくない。 「もう戯言はいい。依頼を処理させてもらえる?」 「いいよ◇移動しようか◆僕の部屋に行く?」 「・・・・・・・・・・・遠慮します」 「残念◇」 いや、ヒソカの部屋なんかにのこのこ行ったら確実に食われるだろ。確実にケモノの檻の中のウサギだろ。自分から飛び込むアホがどこにいるんだ、どこに! * 「・・・・・え・・・?」 依頼を終えて帰ろうと思って。その前に軽く休憩しようかななんて思って。天空闘技場近くをうろついていたら。 目の端にかすった、見覚えのある姿。 思わず身を翻してあたしは駆けた。けれどすぐにその姿は人ごみの中に消える。走ったのと動揺したおかげで呼吸が乱れる。待って、こんなに動揺するなんて。あたしらしく、ない。なんだかここに来てからこんなことが続いてる(半分以上ヒソカのせいだけど)。 「・・・気のせい、かな」 呟いてあたしは目を伏せた。随分昔の話だ。もう遠い過去のような、そんなころのあたしのなかの記憶。―――金髪で頭がよかったあたしの、従兄弟。血は一応繋がっていたけど全然似てなくて、6歳のときに別れて以来のその姿。そこまで考えて、あたしはくるりともう一度天空闘技場に足を向けた。 ――――もうちょっとここで楽しんでいけばいいじゃないか◇ 「どうやら・・・留まる理由が出来ちゃったな」 仕事はある程度片付いたから。当分は入って来ないだろうし、パソコンも持ってきたし。運が良かったな。ホテルに電話する。部屋が予約出来たのを確認してから、あたしはため息をついた。 「あれ?帰るんじゃなかったのかいミオト◆」 「ひゃうえわあっ!」 いきなり耳元で囁かれた声にあたしは思わず変な声を上げた。ぞくぞくと背中に悪寒が走る。うええええ気付かなかった!不覚!そのことを本気で後悔した。 「ちょっ・・・と、ヒソカ!?なんでここに」 「別に散歩くらいしててもいいじゃないか◇」 「嘘くせえ」 「ひどいね◆」 くつくつと笑うヒソカ。その目が笑ってないことに気づく。隠し切れてない殺気に、あたしは警戒を強めた。なに?ケンカ売ってるんだろうか。 「別にミオトとヤるつもりはないよ◇安心して◆」 「じゃーなんでそんな殺気ビンビンなんですか」 「あの二人、ついに200階に来るよ◇」 「え?じゃあ、」 「そ◆さっき190階をクリアしてた◇」 「おお、やっぱすごいなアイツら。でもまだ念使えないんなら200階って無理じゃ・・・」 「うん◆だから今から威嚇しに行くのさ◇」 あー・・・だからそんなに楽しそうなワケ?嫌な笑みを浮かべたままのヒソカを見る。明らかにあたしをそのまま連れてく気マンマンな彼が気易く置いた肩の手をひっぱたいて、あたしは鮮やかに笑って見せた。 「生憎だけどあたしはアンタに付き合うためにここに残るわけじゃないの。ホテルに行くから。部屋に来たりしたらぶっ飛ばす。じゃあね」 「怖いね◆」 ゴンとキルアをつけまわすヒソカよりはマシだと思いますけど。それは言わずに、嫌な笑みを浮かべたまま天空闘技場へと足を向かわせその姿を見送って、あたしもホテルに向かって足を向けた。 つーか随分アッサリ諦めてくれたなあ・・・よっぽどあの二人にご執心なのか。もう本物の変態だな、あいつ。知ってたけどさ。 「・・・≪異界の航海者(サファイア・シーフ)≫ 」 歩きながら念を発動した。能力者以外なら見えることのない青い蝶が出現する。ひらりと飛んでいく蝶はこのごろ大活躍だ。今回はともかく、最近の依頼がハイレベルな証拠。―――驚くべきなのは、その大部分が9月1日のオークションについてのことだということ。あのオークション、毎年やってるしそれにかかわる依頼も毎年くると思うんだけれど、今年のはやたらと激しい。 「あの旅団が絡むしね・・・なんなんだ今年は」 今年は何かが起きる。不吉な予感に、寒気がした。 ←BACK**NEXT→ 110301 |