「いやーもーありがと、クラピカー!ホントに恩に着るよー」
「・・・・・・いや」
「いやほんとにさ」
「・・・・・・こっちだね」



***4輪***



「すごいねゴン。犬?」
「え、そうかな。だって匂うじゃん」
「匂わねぇよ」
「・・・・・・ゴンだけだと思うぞ?」


 うん。ここまでスゴイ人はあたし生涯であと一人しか知らない。…ん?

 たかたかと軽い足取りで、あたしはゴン、クラピカの後に続く。
 レオリオをかついで消えたヒソカの匂いをかいで後を追うゴンは、犬さながらの嗅覚をもっているらしい。すごい。けれど、その道筋には、道しるべのように動物たちの死体が転がっていた。中には人間の死体もある。おそらくヒソカにやられたのだろう。道しるべか何かのつもりなのだろうか。ありがた迷惑だ。気分が悪いことこの上ない。ていうか、狙ってやってる気がする。なんて性質の悪い。


「…ねぇ、クラピカ、。ヒソカが言ってたオレとレオリオとは合格っていったい・・・、どういう意味だと思う?」
「…あー」
「やつは試験管ごっこだと言っていた。つまりヒソカはわれわれを審査していたんだよ」
「どうやって?だってオレ、ヒソカに顔を見られてただけだよ」
「その前にあいつに一発くらわせたんだろう?」


 クラピカのもっともな答えに、ゴンは頷きながらもさらに聞く。


「うん、オレはね。は?」
「あたしは・・・うーん・・・・・・・・・。まぁ、一応そんな感じかね」
「そっか。でも、レオリオは殴りかかって逆に倒されちゃったよ?それでも合格だって」


 ゴンの言葉にクラピカはしばらく考えるように黙り込んだ。それから、また口を開く。


「ヒソカにハンターの資質があるとは私は絶対に思わない!」
「だけど、あのとんでもない動き方と技は見事だね。戦闘においてはあのヒト、天才だよ。天才以外の何者でもない。まるで、人殺しが宿命みたいにあたしには思えた。・・・・・・違うな、生きがい、かな?」
の言うとおりだ」


 あと念もね、とあたしは心の中で付け加える。


「特異な能力を持つものが同じような才能の持ち主を発掘することはよくある。多分ヒソカなりの勘や経験で、3人にハンターとしての素質や将来性を感じたのではないか?

 “今 殺すには惜しい人材だ”

 そんな風に考えたのかもな」
「今殺すには・・・ねぇ。 ってことはいつか殺されるのかもね」
「・・・すまない、無神経だった」
「へ?いや別に気にしてないよ」


 謝るクラピカに慌てて首を振って、あたしは地面の倒木を飛び越えた。するとゴンは、ゆっくりと話し出す。


「少しずつ…わかってきた気がする。オレがあの時感じた変な気持ち」


 目の前にヒトがゴロゴロ倒れていて。
 そうした張本人…ヒソカが自分に近づいてきて。


「強力な圧迫感があって怖くて逃げ出したいけど背を向けることも出来なくて、絶対戦っても勝ち目はない!オレも殺されるのかなァなんて考えながら。その反面……なんていうのかな。殺されるかもしれない極限の状態なのにさ」


 そりゃそうだよ。あんな残酷的で凶悪な殺気初めてだった。


「変だよね?オレ、あの時少しワクワクしてたんだ」


 ………。
 似てる。
 ゴン・・・ゴン・フリークス?
 まさか。


 あのときの憶測が核心になったことを知って、あたしは気づかれないように息をついた。





 不可思議な音がする大きな建物の外にぞろぞろと受験者がいるのを見て、クラピカが間に合ったようだと口にする。その瞬間に、あたしと目のあったヒソカがすばやく念で宙に文字を書く……“おつかれさま◆” ・・・。ああハイハイ。アンタも相当ムカつくヤツだね全く。


「レオリオ!」
「うむ、腕のキズ以外は無事のようだな」
「いやクラピカ、顔!顔!!


 木の幹に寄りかかって座るレオリオを見て、クラピカがほっとしたように声をかけた。いや、どう見たって顔無事じゃないだろ。とんでもなく右頬腫れてるよ。これで無傷ってんなら酷いって。大分可哀想なコトになってる。コレ、跡残らなきゃいいけど。女の子なら致命的だけどレオリオなら大丈夫かな。 当のレオリオは、湿原内の記憶がはっきりしないらしい。それはそれで幸せだろう。


「ところでなんで、みんな建物の外にいるのかな」
「中に入れないんだよ」
「キルア!」


 声の主に、ゴンが嬉しそうに笑う。お前らすっかりいい友達だなぁ・・・!!かわいいよ。すぐ仲良くなったのか。いいねぇ若いもんは。つっても5歳しか変わんないんだっけ?5歳も離れてりゃあ結構違うけど。


「建物の上に “本日正午 二次試験スタート” ってあるし、それまで開かないんじゃん?」
「ああ。変なうなり声はするけど全然出てくる気配はないし。まぁ、待つしかないんだろうけど」


 正午まで、残り五分。
 周りが緊張してくる中、あたしはさほど心配していなかった。でもなんか・・・やな予感はしていたけれど。


 正午。
 音を立てて開くドアから出てきたのは、巨大なデブと綺麗なお姉さんだった。おそらくあのうなり声はこのデブの腹の音だったらしい。嘘ぉ!?


「――そんなわけで、二次試験は料理よ!!
 美食ハンターのあたし達二人を満足させる食事を用意してちょうだい!」


 料理。・・・マジですか? ・・・・・・師匠、アンタのとき料理じゃなかったな。確実になかったな。アンタの腕で料理試験受かるか!!でもいや、料理の種類にもよるのか。


「まずはオレの指定する料理をつくってもらい」
「そこで合格したものだけがあたしの指定する料理を作れるってわけよ。つまり、あたしたち二人が “おいしい” と言えば晴れて二次試験合格!!試験はあたしたちが満腹になった時点で終了よ!」


 なんともいえない・・・・・・試験だ。あたしが作れるものと言ったら・・・ひぃふぅみぃよ、どうしようそんなにレパートリー、ない。ほんとに女かあたし。師匠のことあんまり言えない。ヤバい。


「オレのメニューは…豚の丸焼き!!オレの大好物。森林公園に生息する豚なら種類は自由!それじゃ・・・

 二次試験、スタート!!」



 よかったあぁぁぁ――――!!!!! 豚捕まえて焼くだけかよ!楽じゃんよ!!つかそれ料理でいいんだ!



 よっしゃぁやったろじゃん。
 とか言ってる間に現れたのは鼻が異常にでかい豚。確か種類はグレイトスタンプ。・・・えーっと・・・食用だっけ?でも種類は自由っていってたし、うんまあいいや、コイツでおっけー。よし。

 せまってくる豚を軽く飛んで宙に避けると、力任せに額を蹴った。威力で吹っ飛んで、…あらら、ほかの3、4匹まで巻き込んでしまった。仕方ない勿体無いから誰かにやろう・・・あ。


「ちょっとそこの3人?いる?」
「お!?」


 一匹を軽々と担いで、あたしは必死で豚を探す変な目をした3人組に声をかけて、気絶している豚4匹を指差す。最初に顔を出した帽子をかぶったヤツが「兄ちゃ〜〜〜ん!」と振り返り、残り二人が出てくる。お前自分で決めろよ情けないな。アモリ三兄弟だっけ。


「その豚。いる?」
「…どういうつもりだ?」
「別に。倒しすぎたから勿体無いからいるかなと思っただけ」
「…お前、あと四人仲間いるだろ。そいつらにはいいのか」
「全然心配してないよ。アイツら、絶対自分で倒してるし。手助けなんか必要とするやつらじゃないから。あ、そうだ。タダってのもなんだし……」


 警戒する3人に向って、あたしは最高の笑顔を見せた。


一匹15000ジェニー!払って?




 問答無用で彼らに金を払わせて、暖かくなったふところを叩いて、あたしは意気揚々と豚を焼いて運んだ。しめて45000ジェニー。儲けた儲けた♪ 心配しなかったとおり、4人ともしっかり焼き上げた豚を運んできている。


「やるじゃん、キルア」
「! 。…オレ、こんな豚一匹食べられるかわかんねぇくらいなんだけど」
「普通そうだっつの。肉だし、途中で胃がもたれそうだし。でも相手はあれだからねー。あんま心配することないよ」
「………そういう問題かよ?」
「そういう問題。食えりゃおっけー。」


 あたしの言ったとおり。次々と豚を平らげていくデブの試験管・ブハラは見ていて楽しいほどだ。みるみるうちに骨の山が出来上がっていく。結果、もちろんあたしとキルアの豚もいれて合計70頭の豚を試験管は平らげた。



「やっぱりハンターってすごい人たちばかりなんだね!」
「ああはなりたくないけどな」
「同感」


 感心するゴンの言葉にキルアが言って、あたしは同感の意を示した。いくらなんでもあれはいやだ。
 とにもかくにも、試験は進む。今度はあのスタイル抜群なお姉さんが試験を出すらしい。


「二次試験後半! あたしのメニューは・・・・・・スシよ!


・・・・・・・・・。


ス   シ   っ   て   な   あ   に   ?


「それじゃスタートよ!!」


 いくつかの説明がされたけれど・・・形も何もわかんないモン作れるか――!!!















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080319