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「!」
「霧か」




***3輪***




 入った瞬間、霧が一段と濃くなった。
 ヤバイ、こんなところにいたらサトツさんを見失う。この人の波を割いていってもいいけど、レオリオとクラピカを置いていくことになる。どうせ彼らはついてくるだろうし、それなら少しずつ離れて、自然なはぐれ方を・・・


レオリオ――!クラピカ―――!!ミオト――――!!!キルアが前にきたほうが良いって―――!!
「どあほ――!いけるならとっくに行ってるわい!!」


 思わずあたしは、前につんのめってこけそうになった。き、緊張感のかけらもない・・・・っ!!クラピカも同じように頭を抱えている。気持ちはすごくよくわかる!!!疲れるよねこの人たち。


「そこを何とか頑張ってきなよ―――!!」
「ムリだっちゅーの!!」
「・・・・・・・・・・・・レオリオ」
「あ?なんだミオト」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・やっぱいいや」


うわぁぁあああああぁぁぁ――――――――っっ!!!!


「!」


 少し離れた場所から、数人分の悲鳴が飛んだ。更に時をおかずに、すぐ後ろでも。たちまちのうちに悲鳴や絶叫、ものすごい騒ぎになる。


「ちぃ!!知らねぇうちにパニックに巻き込まれちまったぜ!」
「どうやら後方集団が途中から別の方向に誘導されてしまったようだな」
「やばいなー・・・。これじゃ動きようがない・・・・・・・っ!?」


 言った瞬間に、トランプがすごい勢いで飛んできた。反射的に避けると、後ろにいたレオリオに向かう。くっそぉ危ない!!


「レオリオ!!避けろ!!」
ってぇ――――――――っ!!!
「くっ!!」


 叫んだのも遅く、レオリオの腕にトランプが突き刺さった。駆け寄って、レッグウォーマーを止めていたバンドを外してぎゅっときつくレオリオの腕に止めた。そんなに深い傷じゃあない。一方クラピカは、剣でトランプを弾き飛ばして難を逃れる。


「さんきゅーな、ミオト・・・。てめぇ、何しやがる!!」
「くくく◆試験官ごっこ◇」


 ヒソカが怖気の走るような笑みを浮かべて、トランプを切りながらあたしたちを見る。すぐ傍には、トランプで切り殺された死体の残骸が転がっていて、何とか生きている集団はヒソカを中心にじりじりとあとずさる。


「二次試験くらいまではおとなしくしてようかとも思ったけど、一次試験があまりにタルいんでさ◇選考作業を手伝ってやろうと思ってね◆ボクがキミたちを判定してやるよ◇」


 あまりにあまりな言葉に言葉を失う集団。そりゃそうだ。あたしだって呆然。けど、そんななかで冷や汗をダラダラと流しながらだけれど、ヒソカに向かって暴言を吐く男がいた。あなたの勇気をたたえよう。それと空気の読めなさも。致命的過ぎる。


「つまりお前も俺たちも取り残された不合格者なんだよ!!」


 なんてまぁ根性の据わった人だね。普通無理だよ、こんな念混じりの殺気を向けられたら、常人だったら気絶していてもおかしくない。あたしだって念を覚えて何年かたつけど、・・・・それでも怖い。


「失礼だな◆キミとボクを一緒にするなよ◇冥土の土産におぼえときな◆奇術師に不可能はないの◇」


 その男が言い終わると同時にヒソカのトランプが男の額に見事に突き刺さる。それを見て、一気に殺気づいた周囲が、ヒソカを取り囲んで口々に「ハンターになる資格はない」とか言う。あたしたちは、少し離れて何も言わずに、ていうか愕然としたまま、つったってるだけだった。だってどうしようもなかった。じゃあこの人数をどう助けろって言うの。自分の身は自分で守れ。それだけの覚悟はしているはずだ。

 そうこうしている間に、ヒソカに襲い掛かった男たちが一瞬のうちにヒソカに殺された。たった一枚のトランプを使って。


くっくっく・・・・あっはっはっはァ―――――!!!


 思わず逃げ出した男らも、無駄。見事に急所を貫いて、そこにはヒソカに殺されたものたちの屍が、そうまさに死屍累々。


「・・・・・っ・・・・」
「・・・・・大丈夫か、ミオト?」
「・・・・・・まぁね・・・・・・なんとか」


 まぁいろいろありまして、たった16年の短い人生ながら、人の死なんかそれなりに見慣れていたあたしも、こんな数の無残な死体は見たことない。ああ・・・・まぁ少しなら見たことあるけどさぁ。こんな、たったさっきまで生きていて、心臓が脈打っていて、話だってして考えたりだってして、戦えて怒れて声を出していた人たち。それが、ただの肉塊と化してそこに転がっている。


 ――嫌だ。   思い出す、 から。


 警戒を崩そうとしないままクラピカに心配そうに聞かれて、あたしは小さく答えた。


「残りはキミたち四人だけ◆」


 ヒソカがあたしたちを指差してそう笑う。四人。あたしと、クラピカと、レオリオと、あと76番のマユゲが太い人(失礼) 一歩一歩、ヒソカはじりじりと、近づいてくる。


(おい、オレが合図したらバラバラに逃げるんだ)


 唐突にマユゲ(呼びかた決定←失礼すぎる)が囁いた。視線をヒソカに向けたまま、あたしはマユゲの言葉に耳を傾ける。


(ヤツは強い・・・!なぜなら人を殺すことに一片の躊躇いもないからだ。オレたちとは実戦経験において天と地ほど差がある!!)


 汗が頬を伝って、一滴したたった。


(お前たちも強い目的があってハンターを目指しているのだろう。悔しいだろうが・・・ここは退くんだ!)


「今だ!!!」


 その合図で、バラバラに逃げ出す。森の中に飛び込んで、あたしは一目散に逃げる。逃げる。逃げ・・・、
 それでなんでそこであたしを追ってくんの!?


 いやさ分かるよ?そりゃね、念使える人とやったほうが楽しいだろうよそうだろうね。
 あたしだってそれなりに強いと思うよ?師匠のお墨つきだよそーだよ。
 でもねあのね?


 さすがにあなたと二人きりはいやなんだよ!!!


「くっくっく◇ 君も、念が使えるんだろう?」
「・・・・・・まーね。一応ね。でもまだこんなトコで見せるつもりはさらさらないよ。試験自体、念無しでやるつもりだから。フェアじゃないしね他の受験生に。公平主義なんで」
「ふゥん・・・・◆ フェアねぇ・・・◇ いいじゃないか、ボクは念が使えるし◆」
「そういう問題じゃない」


 臨戦態勢。何がしたいか良くわかんないけど。冗談。あたしはこんなとこで戦ってたまっかい。大体、あたしは念で戦うために来たんじゃない。ハンター資格を取るために来たんだっつの。戦いたいなら天空闘技場にでも行ってくりゃいい。てゆかさっさと消えろ。


「ヒソカ」
「なんだい?ミオト◇」
「覚えなくていいから。むしろ記憶から抹消しろ。誰に聞いたんだ誰に!ていうかあたしが抹消したいわあんたの名前。えー・・・。 あたし、今やる気無いから」
「ボクが逃がすと思ってるのかい?」


 ええ思ってないよそうですね思ってないよ!!!


「・・・・・・はぁ」


 ぎっとヒソカを睨みつけて、あたしは身構えた。ピエロの目が楽しそうに輝く。


うぉぉおおおおおお――――――っ!!!!
「はぁ!?」


 茂みから雄たけびを上げて出てきた彼を見て、あたしは思わず素っ頓狂な声をあげていた。


「へっ。こちとらやられっぱなしで我慢できるほど・・・」


「気ィ長くねーんだよォ―――――!!!ミオトから離れろや!」


 あのバカ!!

 ヒソカが手を伸ばす。レオリオが顔を歪める。念を・・・、
 だめだ間に合わない!!


 どごっ。


 肉を突き破る音を予想して思わず目をつぶったのに、聞こえてきた予想外の音にあたしは反射的に目を開けていた。そこに広がっていたのは・・・・、 正直、さらに絶望的な情景。


「ゴン!?」


 レオリオが声をあげる。でもあたしは、頭を抱えて絶叫したい心境に陥っていた。どーしてゴンまでここにいんだよ!?あぁぁもうコイツら、いい加減にしろ!!

 息を切らして釣竿を握り締めて、ゴンは固まったようにヒソカを見つめている。あたしは小さく舌打ちして、軽く地面を蹴った。レオリオは・・・、もうお願いだから、勝手に動くんじゃねー!!見捨てるぞこのバカども! ゴンに歩み寄るヒソカに向かって、再び棒を振り上げる。


「てめぇの相手はオレだ!!」
「!」


 レオリオの頬を、ヒソカの拳が殴り飛ばす。頭から落ちる!


「・・・・っああもう!!」


 念にしようか一瞬考えた。でも念は、常人にとって毒のようなもの。咄嗟にあたしが取った行動は、レオリオの頭を抱えて地面に思いきりダイブ・・・・だった。ああ情けない。様にならない。


「ちょ、ちょっともう!ったくレオリオ・・・しっかりし・・・・・ってゴン!!!ぎゃあーヒソカ!!


 ふっと顔をあげてみれば、ゴンがヒソカに首元を掴まれて嘗め回すように見られてる・・・ってどういう状況なワケ!?ああもう信じられない。わけわかんない。見捨てて勝手に逃げときゃよかったな。かなり後悔。


「ん~~、全く君達は面白いね◇合格だ◆いいハンターになりなよ◇」
「・・・はぁ?」


 首を傾げている間に、彼は携帯だかなんだか知らないけど、をだして、レオリオをかつぎあげて行ってしまう。いや本当、わけがわからん。あまりのことに呆然として・・・っていうか!足抜けない!!沼!沼にはまった!!ありえねぇ!!どこまで運がないんだよあたし!


「え、嘘!うわ最悪、沼にはまったとかってどういう!?」
「ゴン!ミオト!!」
「あ、クラピカ」


 クラピカが声まで青くして駆け寄ってきた。あたしの間の抜けた声に毒気を抜かれたのか、歩調がゆっくりになる。ゴンは、見る限り顔が青くて冷や汗を流してて、・・・あー・・・大丈夫か? まぁ、あれだけの異常なオーラに当てられてもおかしくない。


「大丈夫なのか?」
「まぁね。ゴンのほう見てやって・・・あ、ちょま、クラピカ助けて!!」
「なんだ!?」


「えーと・・・引っ張って?」


 クラピカの頬が引きつった。え、なんか変なこと言った?















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080308