「せ――――――んぱ―――――――――――いっ!!!!」 「おおー、ケイシュウも相変わらず元気だなー」 列車の窓からぶんっぶん元気よく腕を振り回すケイシュウと、その横で笑うメイファの姿が見えて、あいつらもなんだかんだ順調なんだなあなんておせっかいにも考えた。 96. 「!よく焼けたわね!」 「今年も期待してんぞ悪戯!」 「キャ―――!シリウスー!こっち来てー!!」 ざわめく喧騒の中、オレたちはいろんなところに顔を出しながらコンパートメントを探した。ようやく発見したひとところに荷物をどっさり置いて腰を落ち着ける。 「っふー・・・、僕らも5年生か。早いね」 「ほんとだ。早いね」 「今年もやるぜプロングズ!」 「ああもちろんさパッドフット!」 4人を尻目に、オレはきょろきょろとあたりを見回す。セブが見当たらない。人ごみだから当然だけど、それでも見当たらなくてどうしたんだろうと思った。この夏中も連絡はなくて、でも別に普段から頻繁に連絡を取り合うようなヤツではないから特には思わなかったのだけど。だからこそ、久しぶりに会いたかった。 「あれ、。そんなのいつもしてたっけ?」 「え?ああ、」 リーマスの指摘に、オレは首元のそれに触れてうなずいた。プラチナの鎖にオーロラ・クリスタルの嵌められたロケットは、オレの首からいつも下げられている。だけど普段は服の下に仕舞ってあって外からは見えない。たまたま屈んだ時に胸元から零れてきたそれを、オレは服の下に再び仕舞いながらそう答えた。 「1年のときのクリスマスに両親から貰ったんだ。・・・懐かしいな」 「そっか。大事なものなんだね」 「・・・・・・うん」 そうか、形見みたいなものになっちゃったな。そんなことに今さら気付いてちょっと切なくなる。“しるし”―――移動能力継承者の証に違いないそれは、つまりはオレの前は父さんが身につけていたということだ。・・・気づかなかったけれど、父さんも母さんも、アリアさんもずっと近くにいてくれてたのかもしれない。 「・・・ありがと、リーマス」 「え?」 「なんでもない!セブ探してくる!」 ぽかんとした顔のリーマスを置いて、オレはコンパートメントを出る。 家に帰るのは、正直言って、怖かった。オレの脳裏にはどうやっても消えないあの日の映像が刻まれていて。母の声も父の背中も義姉の目の色も、全部全部覚えている。それ以外で家に戻ったのは葬儀のときだけだったから。思い出すことが怖くて、戻ることが嫌だった。――――けれど、アオト兄がいたから。 きっと一人きりだったらつぶれてしまっただろう。アオト兄、そしてムーディがいてくれたから。そして、兄は。決して自分自身の話はしないのだ。 「・・・駄目な妹だよな。ほんと」 甘えてばかりで、何も返せない。 「?」 「え、・・・わ!ごめん!」 「何をボーっとしている、危ないだろう」 「うん・・・うん、ごめん、セブ」 「・・・・・・?」 ふと出現したセブは(というか、ぼんやりしてて近くに来たことに気付かなかったのだろう)オレを見下ろして不思議そうに眉根を寄せた。一見すると不機嫌にしか見えない表情で。夏休み明けて久しぶりに会ったけれど、そんなの感じさせない、まるで昨日までもずっと会っていたかのような。 「どうした」 「んー、いやぁ・・・」 ああ、安心するんだよなあセブといると。オレが駄目なことも、できないことも、情けないことも、全部わかってくれているから。 「なんでもない。久しぶり、セブ」 「・・・ああ、そうだな」 あれ?でも、なんか、 「用がないなら戻れ、」 そう言って、セブはくるりとオレに背を向けた。 「・・・・・・セブ?」 ←BACK**NEXT→ 120901 |