「本気かの・・・アオト」 「はい」 間髪いれずオレは頷いた。静まり返った校長室にダンブルドアの重苦しいため息が落ちる。反対されるのは分かっていた。当然だろう。だけど。 目を閉じれば、蘇るのは。 「このことは、内密にお願いします」 「わかっておる。アオト自身が話すと決める時までは、わしはなにも言わぬ」 「恩に切ります」 91. 次の日、アオト兄とオレはたくさんのことを喋った。 あの日の事は深く触れられなかったけれど、既に葬儀を行ったこと。家は綺麗に片づけられてたこと。後見人としてムーディがついたこと。いろいろ、いろいろ喋って。 それから、無事を知ったアオト兄の友人たちがどっと駆けつけた。 「・・・っ、アオト!」 「クライス、お前仕事放り投げてくんなよ」 「放り投げてないよ!仕事の途中に寄ったの!!」 「それを放り投げてると言うんじゃねーのか」 とか言われながらなんだかんだ大騒ぎしてた、クライスさんを筆頭とした歴代グリフィンドールクィディッチチームのOBを含めた先輩達。アオト兄がホグワーツにいるにも関わらず面会者は後を絶たなかった。 「ほんと、アオトさんてすげーよな」 「な。びっくりするよ、あの人望っつーか人脈っつーか」 「分かる気がするけどな。お前も似てるよ、やっぱ兄貴に」 「・・・へ?」 なんてシリウスから言われてびっくりしたのも記憶に新しい。おっかしいなぁ、昔から全然似てないって評判の兄妹だったのに。だけどそう言われて素直にうれしかったから良しとしよう。 「よかったね、。アオトさんが帰ってきて」 「うん。そーだな」 リーマスの言葉に頷く。リーマスはせっせと新作のお菓子をアオト兄に差し入れたり、暇だろうからと本を差し入れたりしてくれてた。アオト兄は傷が完治するまでは医務室から出られないらしい。マダム・ポンフリーにそう宣言されてた。(本人は出たがってた)だからリーマスの心遣いにも結構喜んでた。そう伝えたら今度はジェームズが「僕もなにか送ろう!」とかつって何かを作り出してたけど。あいつ馬鹿だろ。 「なぁ、あのアオト・がホグワーツにいるんだろ?」 ホグワーツでは有名人なだけあって、ちらちらとそこかしこでそんなことが噂されていてなんだかむず痒い。アオト兄と面会中にそう伝えると、鮮やかに笑い飛ばされた。 「ばーか。胸張ってろ。オレの妹だろ」 やっぱり、かなわないなぁ。 毎日そんなことをしていたら。 とうとう、アオト兄が家へ帰る日がやってきた。 「もう泣くなよ、」 「泣かねえよ!!あのときはちょっと気が動転してただけだよ馬鹿兄!」 くつくつと笑いながらアオト兄は、迎えに来たムーディと一緒に校門から離れていく。全快だとマダムポンフリーは言ったけれど、首に巻かれた包帯だけは外さなかった。見えなくなるまでその背中を見つめていると、不意にぽん、と肩を叩かれる。振り返ると、4人がオレを待っていた。 「僕らもいるからね、」 リーマスが笑う。その言葉に思わず目を瞠る。そんなの分かってるよ、と言おうとして、あんなに心配してくれてたことを思い出す。ああ、そうかオレ、なにも言ってない。当たり前だろ、アオト兄が帰って来てくれたのはそりゃ大きいけれど。 オレがオレでいられたのは、壊れないでいられたのは。 「・・・ありがとな」 お前らが、いたからだよ。 「帰ろっか、寮に」 「お前が言うな」 ←BACK**NEXT→ 120409 |