「・・・・・・・・・お前、本当に帰って来やがったな・・・・・・」 「んだよ!可愛い妹が帰ってきたんだから喜べよ!」 はぁぁぁぁぁと深い深いため息をついて、アオト兄はオレを出迎えてくれた。酷いなもう!傷つくんだぞオレだって!! 82. 「んだよーそんなに帰ってきて欲しくなかったんかよ」 「そーじゃねぇけど・・・あぁもうお前は・・・。ったく、しょーがねーなぁ」 ふとアオト兄はいつもの笑みを浮かべてオレの頭をぐしゃぐしゃとする。 「おかえり」 「・・・ただいま!」 なんだかんだいってこの兄はオレに甘いと思う。まぁ7歳離れてるからなぁ、くだらないケンカはしたことないし、てゆーかいつもアオト兄が優位だし。勝つ気もなかったし。オレがわがまま言っても流されるか一刀両断されるか結局聞いてくれるかだったし。 だから結局オレってかなりブラコンなんだと思う。アオト兄は大好きだもん。怖いけど。怖いけど。・・・。 「お帰りなさい!」 「ただいまアリアさん!わぁお腹おっきい・・・!!」 「もう7カ月だもの。大分ね、動くようになったんだよ」 「へー!!さ、触っていい?」 「うん。ほら」 アリアさんは、長いセピア色の髪をゆるく片側でみつあみにして重そうな体で玄関にまで来てくれた。もともと小柄なせいかとてもつらそうに見える。だけど細めるオリーブ色の瞳は本当に幸せそうだ。オレの手を取ると、そっとそのお腹にあてた。 とくん、とくん。 ああ、ここにもうひとつの命があるんだ。 ただ感動してオレは息をのんだ。「寝ちゃってるのかなぁ、動かないねぇ」なんてのんびりとアリアさんは言う。アオト兄はそんなアリアさんの頬にそっとキスをして、でもってオレの肩をたたいた。 「行くぞ。母さんも父さんも待ってんだから。いつまでも玄関にアリアを居させるな」 「はぁい」 母さんも父さんも相変わらずで、オレはとりあえずお帰りなさい、と2人に抱きしめられた。大きくなったわねー、なんて母さんは笑う。 「よく戻ってきたな、」 「うん。だってみんな帰るみたいだったし、ホグワーツに一人で残っててもつまんないしね」 「・・・帰ってくるなって、言ったのになぁ。全く」 ため息をつく父さんはでもどこか諦めたような口ぶりだ。そんなにデートに行きたかったんだろうか。申し訳ないことしたなぁ。 「オレ留守番しててもいいよ?だから母さんとデートしてきなよ。アオト兄も」 「阿呆か。せっかくのクリスマスにんなことするか」 「どうせなら家族全員でクリスマスパーティするわよ。アリアも、安定期に入ってるから楽でしょう、体は」 「はい」 にこにことアリアさんは答える。そっかー、母さんは経験者だもんなー。・・・オレもいつかそんな経験すんのかなぁ。うっわぁ想像できない。つか相手は誰だ、相手は。・・・・・・より想像ができない・・・。 「ところで。どうせ帰って来たのだったら、今回の休みは家にいなさいね」 「へ?」 「あんまり外出してほしくないのよ」 「・・・なんで?」 母さんの唐突な言葉にオレは目を丸くする。 「ウォルスもアオトも仕事があるでしょう。私も最近外出が多くて。アリアの傍にいてあげて欲しいの」 「・・・・・・あ、そっか」 「安定期だし、そんなに心配することは無いんだけどね。念の為よ」 「ごめんね、」 すまなそうに眉を下げるアリアさんに手をふって、オレは頷いた。そりゃしょうがないよなぁ。別に行きたいとこがあるわけでもなし。じゃあ久々に本読んだり、映画見たりでもしようかな。ゆっくりしよう、たまには。 「って、母さんはなんで外出?父さんとアオト兄は『闇祓い』だろうけど」 「呪術の仕事よ。最近多いのよ」 「ふうん」 日本の呪術学校出身であり、神道の大家が実家の母さんは「そういう」仕事に関しては、イギリスでは重宝されるらしかった。実力も申し分ないし、わざわざ日本から呪術師を召喚させる手間も省けるし。意外とこっちの魔法では太刀打ちできない領分はあるらしい。オレにはよくわからないけど。 「さて、クリスマスのメニューでも考えましょうか」 「オレ、チェリーパイ食べたい!」 「いきなりデザートからか」 父さんに笑われる。だけど食べたいんだからしょーがないじゃん! ←BACK**NEXT→ 120203 |