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「う―――・・・ん・・・?え?ここ、こーでいいの?」 「そうそう、ここをこうしてね・・・こうやるの。そうよ、シェスアって結構器用よね」 「いやそーでもないよ、リリー」 ほんとにそーでもないよ。無理してるんだよ・・・。 81. 「え―――??もうオレほんとこーゆーのあんまり得意じゃないよー」 ちまちました作業苦手なんだってば!可愛い水色の毛糸と悪戦苦闘しながらオレは泣きごとを吐く。そばでリーマスが紅茶を出してくれながら苦笑した。 「そんなことないって、シェスア。ほら頑張りなよ、あともう少し」 「うううう―――・・・っつーかリーマスが上手すぎるわ」 「そうかな?」 淡い黄色の、たんぽぽみたいな色のちっちゃい靴下が目の前にある。毛糸で編まれた可愛いそれは、なんとリーマスお手製だ。もともとリリーが「アリアさんの赤ちゃんにクリスマスプレゼントしましょうよ!」とか言いだすからオレが巻き込まれて、それを見てたリーマスが教わってるオレの傍らでひょいひょいっと編んだもの。すげーよ。 「靴下っていっても小さいし」 「それは確かに」 指3本くらいしか入んない靴下だ。可愛い。向こうの方でジェームズとシリウスとがチェスをやっていて、ピーターはそれを見学。あいつらはこういうことには興味が無いし。リリーはにこにこしながらマフラーを編んでる。妹に送るらしいけど。 で、オレの担当は帽子だ。淡い水色の毛糸でひたすらひたすら編み編みだ。そもそも編み物なんかしたこと自体が初めてだ。だからもうリリーに聞きまくりである。油断すると間違えるし。 「しっかしリリーは上手いな、ほんとに。さすがだなぁ」 「そりゃあ僕のリリーだからね!!!当然じゃないか!!!」 「チェックメイト」 「ああああああああ!!!」 うるせーなジェームズ。 「ありがとう、シェスア。うん、でも喜んでくれるかわからないんだけど」 「喜ぶって!てゆーかオレのも編んでよ、リリー」 「あら!いいわよ、っていうより用意してたの!」 「えっほんとに!?やったー!」 嬉しそうに鮮やかな空色の毛糸を取りだしたリリー。「クリスマスプレゼントにするつもりだったの!」とか、可愛いこと言ってくれるじゃんわーいさすがだMY親友!ええ?今年のリリーへのプレゼントどーしよーかなー。なんにしよーかなー。 「シェスア、ところで今年のクリスマスは帰るの?」 「んー、どーしよっかなーって思ってるんだけどさ。手紙来ちゃったんだよね」 「手紙?」 「うん」 そう。帰ろーか残ろーか悩んでたら、親から手紙が届いたのだ。しかも内容は、 「今年は帰ってくんなだってさ」 「え?」 「うん。なんか『今年はアリアと二人きりで過ごせる最後のクリスマスなんだから気ィ使えよ』ってアオト兄は言うし『たまにはお母さんと二人きりでデートに行ってくるからお前はホグワーツにいろよ』って父さんは言うし・・・」 「アオトさんとアリアさんはそうよね、来年のクリスマスにはお子さんが生まれてるものね」 「まーね。けどオレこの手紙来た瞬間決意したけど。帰る」 「・・・え?」 だってさぁこんなこと言われたら邪魔したくなるじゃーん。今年はジェームズもシリウスもリーマスもピーターも、みんな帰るって言ってるし。シリウスはジェームズの家に寝泊まりするらしいけどそれはともかく、一人でホグワーツにいるのも寂しすぎるし。それくらいなら帰るし。うん。 「だから帰るねって手紙送っといた。帰るっていっときゃ迎えてくれるだろ」 「そうね・・・今年はホグワーツに残る子も少ないみたいね」 「嫌なニュースが続いてるからね。帰って家族の顔を見て安心したいって思うんじゃないかな。僕も帰るから」 リーマスの言葉に頷く。新学期が始まって、新聞にいつ自分のファミリー・ネームが載るかとみんな戦々恐々としている。「死喰い人」・・・嫌な集団が台頭してきた。泣きながら大広間を出て行く生徒の姿が1か月に1度くらいのペースで起きている。 「ンなの見てたら、次にいつ家族に会えるかって思うよな」 「そうよね。襲われてるのって『血を裏切るもの』・・・って聞くから・・・私はマグル出身だし、襲われてもおかしくは無いし。家族を守れるのは私だけなのよね」 「純血でも襲われてる家はあるよ。あまり関係ねーんだよ、あいつらにとっては」 「ヴォルデモート」と名乗る男の率いる「死喰い人」の集団。冗談じゃない。おかげで闇祓いのアオト兄はひっぱりだこだそうで。既に前線を退き司令塔に回っている父さんももちろん家を空ける日がかなり増えているらしい。 「嫌だよね、こんなの」 「うん、でもまぁクリスマスくらい楽しくすごしたいよな!」 けど。オレはこのとき。 今年のクリスマスが人生で一番心に刻まれた、 一生忘れることなんてできない日になるなんて。 考えも、しなかった。 ←BACK**NEXT→ 120128 |