「!!ナイスプレイ!!」 「おう!!」 ジェームズがキャプテンになってから。グリフィンドールチームは今までにないほどの調子のよさを見せていた。初っ端のレイブンクロー戦は180対40の完勝。とはいえオレにはまだまだ課題が残ったけど、開始30分もせずスニッチをゲットしたジェームズはやっぱり実力がどんどん伸びている。 78. 「!ジェームズ!今日も頼むぜ!!」 「おう!」 「もちろんさ。シリウス、リーマス、ピーター。君たちの応援にも期待してるよ?」 「「「ああ!」」」 意気揚々と拳をぶつけ合って、オレとジェームズは深紅のユニフォームをまとってチームのもとに集まる。今までで一番最悪のコンディションだ。台風直撃、というか。嵐直撃というか?気を抜くと吹っ飛ばされそうなほどの風に雨。多少は防風雨の魔法が掛かってるだろうけどそれでも酷い。メガネのジェームズは顔をしかめて外を見た。いかにもやりにくそうだ。 「おい、キャプテン。大丈夫か?」 「ああ、え?ギル」 声をかけたギルはすっとジェームズのメガネを外した。完全に油断していたらしいジェームズはメガネを取られて戸惑う。けれどギルは杖を取り出して簡単に呪文を唱えた。「ほらよ」と返したそのメガネにはキレイに防水の魔法が掛けられている。すごいな、さすが5年生。ひとつ上のギルにはお世話になりっぱなしだ。オレも、ジェームズも。 「ありがとう、ギル」 「まぁな」 メガネをかけなおしてジェームズはさて、とオレたちを振り向く。 「今日の相手はハッフルパフだ。前回の準優勝寮、だけど今年の僕らには敵じゃないさ」 そう、外は生憎の最悪の天気だけど今年のオレたちは一味違う。チーム内のコンディションなら最高である。まかせろ!一言二言、言葉を交わしてオレたちは深紅の寮カラーを背負って箒を手にとび出していく。さぁ、始まる。 * 「セブ!」 「・・・リリー」 最近何故だか会えなかったセブを見つけて、私は嬉しくなって声をかけた。いつものように気難しげに眉をひそめた彼はスリザリン寮の端っこにいて。だけど今日の対戦はグリフィンドールVSハッフルパフだからスリザリンもそこまで応援に気が入ってはいない。(グリフィンドールをけなすのはいつものことだけれど、だからといってハッフルパフを応援しているわけではないから、この寮は) 「なんでこんなところに。グリフィンドールで応援すればいいだろう」 「あら、いいじゃない。人がどこで応援したって勝手でしょ?」 渋るようなその表情にはもう慣れたもの。スリザリンは怖い人たちばかりだけれどセブは決してそんなことはない。セブと一緒なら怖くない。 「帰れ」 「え、いやよ?」 帰れと頑なに繰り返すセブの表情がいつもより硬いことに少し不安を覚えながら、それでも私はセブの隣に無理やり腰を下ろした。それに、と私は笑顔で彼を振り向く。 「もう始まるわ」 諦めのため息が横から洩れた。飛び出していく深紅の選手たち、そして鮮やかな黄色いユニフォーム。わくわくが止まらなくて、私は首に巻いたマフラーを掴む。 空へと駆け上がるは本当にイキイキとしていて。とても楽しそうに飛ぶから、私はあの子の飛ぶ姿が好きだった。その瞳に空色を持つように、まるでそこが自分の本当の居場所の様に嬉しそうに縦横無尽に空を飛ぶ。・・・ジェームズもかっこいいことは、かっこいいけれど。 「ようこそ紳士淑女諸君!!お待たせしました、始まるぜてめーらァァ―――――っっ!!誇り高き深紅を背負い勇敢に戦え!グリフィンドールっっ!!!対するは太陽の光をまとい鋼の結束力を見せつけろ!ハッフルパーフっっ!!!」 シリウスの叫びに会場が応える。うおおおおおお、と観客が思いきり熱狂し、それに応じて選手たちもくるくるとパフォーマンス。試合開始のホイッスルが鳴る。と同時に、全員が配置についた。素早くはゴール前に待機する。 ジェームズは真剣な瞳でゆっくりとフィールド内を旋回していた。私はオペラグラスでその横顔を見つめ、ひとりこっそりとため息を漏らした。こういう姿はかっこいいと思うのに。 「現在クァッフルはハッフルパフです―――おおっとここで期待の3年生メイファ・ロゥが動いたっ!!素晴らしいカットです―――ボールはグリフィンドール―――」 そんなことをしている間に試合は進んでいた。同室の後輩が綺麗な束ねた黒髪を風になびかせて頑張っている姿に胸が熱くなる。メイファは今年、少し綺麗になった。 「っ、リリー・・・リリー!」 夢中になってクアッフルを追っていた私に、焦ったようなセブの声。慌ててセブに言われるままにの姿を探す。 「・・・え?どういうこと・・・アレって!?」 チェイサー同士の激しい攻防に目を奪われていた観客も次第に「それ」に気付きざわめきが大きくなる。 「・・・!!」 なにも出来ないまま、私はただ息をのんだ。 ←BACK**NEXT→ 120127 |