「はあー!!?」 「ほらご覧よシリウス。まで驚いてるじゃないか」 「うるせー。しょうがねーだろ、我慢できなかったんだから」 「全く・・・」 いやいやいや、お前それかなりやばいんじゃないの?ブラック家長子の跡継ぎが勘当されて絶縁って・・・・・・。 73. 「リーマスとピーターはもう知ってるの?」 「リーマスにはもう連絡したよ。ピーターにはこれから」 「んな大げさに言うことねぇって」 「「ちょっとうるさいよ馬鹿犬」」 当事者のくせにオレとジェームズから一刀両断されたシリウスの首が暖炉の中から消える。ジェームズはオレに向き直ると、芝居がかったため息をついた。 夏場で火をつけていないはずの暖炉が不意に燃え上がったから何かと思えば、ジェームズの首が浮いてオレを呼んだ。休暇に入ってひさびさの顔にちょっと嬉しくなって、どうしたんだと聞けば返ってきた「シリウスが実家と縁切ってきた」という衝撃的な一言。そしてやりとりは冒頭へさかのぼる。 「で、今は僕の家に居候してるんだけどさ。とりあえず報告しておこうと思ってね、」 「うん・・・さんきゅ、びっくりした」 「ああ、それでだけど、。君も僕の家に泊りに来ないかい?」 「へ?」 唐突な誘いに目を瞬かせる。ジェームズは心底楽しんでいる目で笑った。 「もうリーマスには了解をとったよ。どうせシリウスもいるし、一人も四人も変わらないって、父がね。去年もおととしも君の家にお世話になったし、今年は僕の家へどうかな?夏休みもまだまだ日があるし―――ああ、女性一人になるのが問題ならリリーも誘ってくれて僕は全然構わないというか僕としてはもう誘いたくて誘いたくて仕方ないんだけど!!!」 「いや、それは却下」 リリーがジェームズの家に行きたがるわけがない。いくらオレが一緒でも、だ。思いきり顔を引きつらせるリリーの姿がありありと想像できてしまった。 「それはともかく、うん、行きたい!女性一人って言ったってお前らオレのことそんな目で見てないじゃん、平気だよ」 「・・・・・・いやあのねそれ君ねぇ・・・」 「なんだよ、いつもそうじゃんか!どーしても気になるっていうんなら、ジェームズ、お前の家だって母さんいるだろ?」 「そりゃそーだけどさ。まあ、君がそれでいいなら僕は構わないけどね」 「いいよ、全然。行きたい」 そんなに「女」だってことが気になるのかな。いつもはオレが「女」だってことなんかちっとも気にしない癖に。なんとなく、最近そんな風に言われることが増えて少し不愉快だった。「男」だったらもっと気楽にこいつらともいられるのに。 そんな風な思考がちらりと脳裏をかすめたけれど、そんなことには気づかずにジェームズは嬉しそうに笑った。 「よし、それなら一週間後に去年集合したところと同じ場所でいいかな?」 「おう!」 最後に一言二言交わして、ジェームズの生首は暖炉の中から消えた。ひとつ出来た楽しみにオレはなんだか心がうきうきしているのを感じる。楽しみだ!ジェームズの家ってどこなんだろう?どんなご両親なんだろう?なんとなく、だけどジェームズは父親にそっくりな気がしている。確か本人からもそんなことを聞いたような。あいつの父親って・・・どんな人物なんだよ? 「ー?ちょっと手伝ってくれるー?」 「はーい!!」 階下からの母さんの呼ぶ声にオレは元気よく答えると、暖炉の前を後にした。だけど、結局オレは、このとき、ジェームズの家に行くことはできなかった。 このときは、そんなことなんてなにも想像しなかったのだけれど。 * 「ウォルス、千鳥。落ち着いて聞いてくれ」 暖炉から現れた血だらけの男が、深刻な顔でオレの父さんと向き合っていた。「カーター」と母はその男の名を呼びながら駆けより楽な体勢をさせる。アリアさんの持ってきた水に手をつけることなく男はただ必死に父さんを見る。 「私たちの職場が襲撃にあった。君たちの息子も含め、みんなの安否は分からない。頼む、どうか魔法省に連絡を取ってくれ。私はここへ逃げてくるのが精いっぱいだった」 ただ頷いて迅速に動く両親、カーター氏の解放を続けるアリアさん。その傍で、オレはただ呆然と立ち尽くすことしかできなかった。(え?どういうこと?君たちの息子、って、アオト兄、だろ。どういう、こと、え?) なにが、おきてるのかわからなかった。 ←BACK**NEXT→ 111030 |