どーしようこんなデレデレなアオト兄見たことない。 72. 「ー!夏休み終わったら本返すねー!」 「元気でなー!!」 「!イタズラ楽しみにしてるぞー!!」 なんて、同級生から先輩後輩までいろんな人に声をかけられながらそれに答えを返しながら、オレは列車から荷物を下ろした。人気者なジェームズやシリウスも握手やらハグやら求められてて降りるのに苦労してる(特にシリウスは女の子からのちゅーとか受けまくってて顔を引きつらせてた)し、リーマスはいまだに売り子さんのとこでケーキやらお菓子をドカ買いしている。お前もう駅に着いてるよ?ピーターは言わずもがな、トロい。 「!」 「アオト兄!」 迎えに来てたのは案の定アオト兄で、やっぱり父さんと母さんは忙しいみたいだ。アリアさんも一緒に来てるかなあと思っていたけど一人だったことに少しだけ目を瞬かせる。 「アリアさんは?家?」 「ああ、それなんだが・・・」 「「「「御無沙汰してますアオトさん!!!」」」」 「おお、お前ら。元気してたか・・・って聞くまでもないな」 雪崩れるように顔を出した4人の声に、アオト兄が笑う。そのうしろから駆けてきたのはリリーだ。嬉しそうに相好を崩すジェームズを無視して、彼女はにこにことオレの肩に手をかける。 「アオトさん、お久しぶりです!もう、置いてかないでよったら。ひと月以上逢えないのよ、寂しいじゃない」 「ゴメンね、リリー。オレも寂しいよ、一か月も逢えないなんて」 「・・・・・・お前らどこのカップルの会話だよ」 シリウスが呆れかえった顔でツッコむ。その後ろで思いきりジェームズがスネている。セブがこっちを見ているのに気付いて、オレは手を振った。リリーも一緒に振り返り笑うと、セブは妙に照れたようなしぐさで手を振り返して踵を返す。最近アイツ素直になってきたような気がする! 「あ、今日はアリアさんいないんですね」 「ああ、留守番してる」 リーマスの言葉にアオト兄は頷く。その声になにか含みを感じてオレは兄を見上げた。その視線に気づいたアオト兄は嬉しそうに顔をほころばせる。アオト兄が・・・!黒くない純粋な嬉しそうな笑顔とか・・・!!レアだ・・・!! 「ん、それなんだけどな。、あのな。オレ、」 「父親になるんだ」 「え。まってアオト兄・・・それって、」 「そうだ。アリアが妊娠した。いま2カ月だ」 ピタリとみんなが静まり返り、数秒後に爆発した。沈んでいたジェームズが復活し、シリウスが顔を赤くして「すげー!」を繰り返し、リーマスがふわりと笑って「おめでとうございます」ピーターはどもりながら懸命に祝福の言葉を口にし、リリーは全開の笑顔で歓声を上げた。そしてオレは、みんなのそのテンションに乗っかり損ねた。 「おめでとうございます!!」 「ありがとうな。つわりも酷くねぇんだけど大事を取って留守番だ」 どこいっても寝ちまうから危なっかしくて、と笑う。その言葉でようやくオレは何が起きたのかを脳が認識して、それから恥ずかしいような嬉しいような笑いだしたいような泣きたいような、結婚が決まった時よりもっと、もっとキラキラした、なんだか、いろんな感情がごちゃ混ぜになって、とりあえず、アオト兄に思いきり抱きついた。流石に驚いたのか頭の上から「うわ!?」だとか声が聞こえる。 「おい、ばか!お前いくつだよ、ガキじゃねーんだから」 「やった!やったっ、やったねアオト兄!やったね!」 「・・・・・・おお、サンキュな」 赤ちゃんが生まれるんだ!すっげー!アオト兄が本当にアリアさんを大事にしていることは知っていたから、まるで自分の事みたいに嬉しかった。大好きな兄と大好きな義姉の子供だ。オレだってすごく楽しみだ。 「つーことは、お前、オバさんになるんだな」 「ん!?」 シリウスの言葉に顔を上げる。彼はオレを見てにやりと意地悪い顔で笑った。 「だって姪だろ?その子からしてみれば、お前は叔母さんじゃねーか」 「うっ・・・た、確かに」 ・・・・・・来年生まれるとして、14歳くらいでもう叔母さんなのか・・・。すごく複雑な気分だ。だけど言わせてもらえばそんなこと言ったらお前らみんなおばさんおじさんだろ!? 「いや。オレは絶対シリウスさんかシリウスお兄さんって呼ばせるね」 「じゃーオレだってお姉さんって呼ばせるよ!!」 「お前はお姉さんってガラじゃねーだろ?」 「ンなことねーよ!・・・そりゃオレだってリリーのほうがお姉さんぽいなーって思わなくないけど」 かといって今更オレが女の子らしいことしたら気持ち悪いじゃないか。そういうとリーマスが苦笑した。なんだよそれ。 「そんなことないよ。たまには制服以外にスカートも着てみれば?」 「え゛っ・・・だってさ、リーマス、動きにくいし」 「そうよ!今度買いに行きましょうよ!」 「に、似あわないし?」 「そ、そんなこと、ないよ!きっと、似あうよ!」 いやいやなんなんだよピーターまで! 「猿がなに着たって猿だろー?」 「よしわかったシリウスお前クチ開けてろ」 「?・・・!?・・・・・・!!!!!!」 咄嗟にポケットから百味ビーンズを取り出してシリウスの口の中へと吹っ飛ばした。青くなって赤くなってまた青くなったシリウスは口元を押さえてオレたちに背を向ける。それを見守っていたジェームズが、アオト兄と交わしていた言葉をオレは知らない。 「全くなんなんでしょうねこの2人は」 「お前とあの子よりずっとわかりやすいよなあ」 「・・・アオトさんそれは言わないでくださいよ・・・」 「おーいシリウスー、バカシリウスー、シリウスくーん?」 「うっ・・・せぇアホ、なんだよ!?」 「何味?」 「血。」 「うわぁ」 ←BACK**NEXT→ 111011 |