「・・・おい、顔色悪いぞ」 「・・・・・・・セブぅぅ・・・」 「・・・・・・いや、大丈夫だから落ち着け」 あんなに練習しただろう?と諭すセブに頷いて、オレは魔法薬の教室のなかに入った。さあ、試験が始まる。 69. 「残すは占い学と薬草学と魔法史・・・!」 グッと拳を握ってオレはガッツポーズ。今のところ手ごたえは良好(魔法薬も上手くいったはず)、アニメーガスの血のにじむ練習のおかげか変身術は今までで最高の出来。これはオレたち4人は共通して成功を収めた。リーマスも満足の出来だったらしい。 「よっし、頑張るぞシリウス!」 「おう!いざとなったらでっち上げような!!」 「放っといて先に行こうかリーマス、ピーター」 「そうだね。もう始まるよ」 「あ、うん!」 「「えっ待ってよお前ら!!」」 入るとアジアンな怪しい雰囲気。どうやらひとりずつ席について、水晶をのぞきこむらしい。でもって見えた結果をテスト用紙に書き込むと。いやぁ占い学が一番ヤバいな。ホントにでっちあげていいかな。 じぃっと水晶玉を覗き込む。つーかこれでなにが見えるって言うんだ、と言い出したらキリがないので我慢する。しぃんとした教室がうん、眠い。 「ん・・・」 心地よい香りにまどろみながら、オレは水晶玉に意識を集中させた。ぼやっとした白いもやのなか、なにかがうごめいたような気がしてオレはちょっと身を乗り出す。 ――・・・ろ・・・―― 「?」 映像と言うよりもなにか声が聞こえたような。そのまま、球の中心を睨む。 ―― 逃 げ ろ ―― 「え」 ハッと我に返ったときには、水晶玉のなかに映ったなじみのある風景は消え去っていた。心臓の鼓動が早い、呼吸がし辛い。なんだ、なんだよ、いまの! どう考えても、あれは、あの声は。あの、顔は。焦燥感に押しつぶされそうになりながらオレはただ自分の目を疑うことしかできない。だって、そんな、いつもはなんにも見えないのに。 「試験終了5分前じゃ」 チャイニーズ☆おじいちゃんの声にオレは慌てて羊皮紙を埋めた。 * 「?ちょっとどうしたんだい?」 「・・・・・・・・・あ、ジェームズ・・・」 「どうしたんだい君は。さっきの試験からなんだかおかしくないかい?」 「・・・あっ、いや、なんでもないよ、ごめん」 「・・・本当かい?」 さっきの占いの結果に思わず上の空で、ジェームズに覗きこまれて慌ててオレは頭をふって無理やりいやな想像を脳から追い出した。・・・つーかオレの占いなんて当たるわけねーし! 「なに?さっきの占いの結果でも悪かったの?」 「あー、まあ、うん、なんか変な結果でちゃって気になって」 「オレもさあ今日は見えたんだよね」 「シリウスが?」 不思議そうにリーマスが視線を向けた。無意識にどくんと心臓が大きく音を立てる。なんだよ、さっきからオレは気にしすぎだって! 「ん。それがさ―――・・・」 深刻な顔に思わずみんなで息をのむ。 「あのリリーとジェームズが2人で並んで笑ってたんだ!!」 「「「あ、それは無い」」」 「だろ―――――!!??」 「ちょっと君たちヒドすぎないかい!!?」 ジェームズが怒るけれども確かにそんな姿、想像できない。そりゃあ外れたなあ、シリウス。あ、考えられるとしたら。 「それジェームズに変装したオレだったりして」 「の変装か。ありうる」 「というかそれなら現実的だね」 「確かにやりそうだもんね、いつか」 「未来の僕とリリーの姿って言う考えはないの!!?」 「「「「ない」」」」 声をそろえるオレたちにジェームズは今度こそ落ち込んだ。それはもうエラい勢いで。だってなぁ、想像できないもん。素直に。くすくすとリーマスの笑い声が落ちてきて、途端にオレたちは若干凍りついた。 「ところでさ、みんな。約束の事なんだけどさ」 キタぜ。 「・・・・・・・・・」 ちらりとシリウスとジェームズが視線を交わし合った。正直、準備は万全とは言い難い。言い難いけど、約束は守らなくちゃ。・・・オレが勝手にした約束だけどな!ごめんな3人とも! 「・・・わかった。今日の夜、『便利な部屋』行こう。そこで全部話すよ」 「・・・・・・夜?」 「ああ」 しばらく沈黙していたリーマスだったけれどやがてこくりと頷いた。―――内心、オレの焦りはやばい。超やばい。だって成功したこと、無いもん。 ←BACK**NEXT→ 110923 |