「ちょっ・・・!?」 「よかったっ・・・よかった、セブが無事でよかった・・・!」 「ちょっと君ねえ大怪我の僕よりスネイプの心配なのかい」 「当たり前だろ」 その言葉に、若干スネたような表情でポッターはブラックに面倒くさそうに慰められていた。なんのことはない、貴様が意識を失っている間、は蒼白の上にぼろぼろ泣いていた。 だけどそんなことは絶対に教えてなどやらない。 67. 「・・・そろそろ離れてくれないか」 「やだっ!」 ・・・・・・・いや、あの、後ろのルーピンが恐ろしいオーラを放ちながらも満面の笑みでこっちを見ていて非常に恐ろしいことこの上ないのだが。その上、ここは医務室ではなくて食堂なのだから人目が多くてめちゃくちゃ目立っていてとてつもなく居心地が悪いのだが。なんとか説得を重ねてを引き離すと、彼女はホッとしたような笑顔を見せた。 「オレ、医務室で起きたとき、もうセブが寮に戻ったって聞いて、無事だったって人づてでしか聞いてなくて、それで・・・」 「ああ、もう!わかった!!」 言い募るの肩を掴んで視線を合わせる。・・・いつのまにか僕の方が身長が伸びていることに唐突に気付く。 「僕は無事だ。だから安心しろ」 * セブの言葉にオレはこくんと頷いた。なんだかやっと一安心した。セブはそんなオレを一瞥すると、スタスタとスリザリンに戻っていく。 「・・・あのヤロー」 「今日ばかりは僕もシリウスに同感」 「珍しく気が合うね我が友よ。僕もさ」 「・・・僕も」 ぼそりと呟き合う4人の言葉に聞こえないふりをして、オレはトーストに手を伸ばす。飲み物は何がいいかなー、今日はアップルティーがいいなー、あ、ベーコン食べたい。 「ねーシリウス、バターとって」 「ん。んーん」 「あ?ドレッシング?ピーター、それ取って」 「う、うん!ハイ!」 「全く君は口にものを入れたまま喋るのはよしなよイテテテ」 「ジェームズ、そんなに手を伸ばしたら傷が引っ張られて痛いのは当たり前だよ?サラダだったら僕が取るから」 「あの」 「あっおいバカ、トマト避けてオレの皿に入れんなよいつもいつも!!」 「食べてよシリウスくん☆」 「お前のブリッコなんか効くか、自分で食えよ!」 「ピーター、袖にソース付きそうだよまくった方がいいよ」 「あ、ありがとリーマス・・・!」 「うるさいなぁシリウス、それくらい食べてあげなよ」 「ジェームズてめぇ自分もセロリをオレの皿に移すな!!つーか最初から皿に入れなきゃいいだろ!」 「「だって入っちゃったんだもん」」 「ピーター、そのカップ僕の!」 「あ、ごめん!」 「あの!!!」 「「「「「ん?」」」」」 「・・・あれ。レギュ」 「兄様・・・。僕が何度呼んだと思ってるんですか」 「んー。2回?」 「・・・・・・」 唇を引きつらせたその少年は、シリウスに瓜二つだった。シリウスをちょっとミニマムにして身長を差し引いて髪をもっとこぎれいに短くした感じ。思わずオレは口にレタスをくわえたまま固まった。 「今年の夏は帰ってきてくださいね、母様に怒られるのは僕なんですから」 「・・・あー」 「去年もその前も、家にいたのは2、3日ですぐに出かけてしまったじゃないですか。今年は親族の集まる日に次期当主お披露目だと言ってました。自覚を持ってください」 「・・・・・・・」 途端に剣呑な空気を醸し出したシリウスに、オレたちはちらりと目配せあった。以前みたいに突然ブチ切れることはなくなったけれど、シリウスは実家が嫌いなところはそのままだ。 「・・・・・・お前に自覚を持てと言われる筋合いはねぇよ。けどわかった。今年は家に帰る」 予想外に素直なシリウスの言葉にオレたちも驚いたけど、ミニシリウス少年のほうが驚いた様で目をぱちくりとしていた。だってあのシリウスが家に帰るって言うんだから仕方ない。 「もういいだろレギュ。スリザリンに帰れ」 「・・・」 「まだなんかあるのかよ?」 「・・・いえ。それじゃ」 冷たいシリウスの目に、ほんの少し傷ついたような表情を浮かべた少年はすぐに身を翻してスリザリンのテーブルに戻っていく。はぁ、とためいきをつきながらシリウスはフォークをサラダの中のトマトに突き刺した。 「・・・えーと、シリウス?」 「あ?・・・ああ、悪ィ。あいつはオレの弟だよ。レギュラス・ブラックだ」 「弟なんていたんだねぇ君」 「まーな。仲良しとは言えねェし」 「随分前にスネイプと歩いてるのを見たことがあるよ、そう言えば」 「ふーん・・・」 弟ねえ。そーかシリウスっておにーちゃんだったのか、そんな感じ全然しないけど。我がままだし。でもそーか、そういえば面倒見いいような気もする。そういえばだけど。 「オレ、シリウスが兄ちゃんは嫌だなあ。アオト兄でよかったー」 「お前の最強兄貴と比較すんなよ!!」 ←BACK**NEXT→ 110902 |