「・・・クリスマス・・・終わるの早かったな・・・」 遠い目をしてシリウスが呟いた。物凄く同感である。 64. 「寒ィなー、いつのまにイースター前になってんだよ?」 「本当、月日がタダモノじゃないってくらい速いね」 ジェームズが羽ペンをくわえながらため息をついた。どっちゃり出たイースター前の課題のおかげで毎日がてんてこ舞いだ畜生。加えてクィディッチの練習に秘密特訓と忘れちゃいけない、イタズラと。・・・過労死するんじゃね?まだ休みにも入ってないのに課題を出しまくる先生たちがそもそも鬼だ。 「僕は思うんだけど、無理してイタズラしなくていいんじゃない?」 教科書から顔を上げたリーマスがそう言った。うーん、と羊皮紙の上に突っ伏すオレと困ったように首を傾げるピーターを尻目に、勢いよく首を振ったのはシリウスで、ついでにジェームズが驚いたように大げさに両手を広げた。 「何を言うんだい、リーマス!」 「おいジェームズ大声出すと殺されるから声殺せ」 「あ、ごめん。ええとなんだっけ?・・・つまらない日常に適度なスパイスを!それがイタズラ、だろう?やらないわけにはいかないよ!僕らはたくさんの支持者に期待されているんだから!」 ・・・うーん、さすがに試験前はピリピリしてるから、実のところあんまりやらないほうが喜ばれるとは思うけど。下級生はともかく、上級生なんか特に。5、6年生なんかはOWLやNEWTを控えてるし、逆鱗に触れるとめちゃめちゃまずいんだけども。 とまあオレが思ったのはともかく、リーマスは妙に真黒な笑みを浮かべて首を傾げた。唐突に舞い降りた腹黒オーラに思わずオレは口の端を引きつらせた。さすがのジェームズも笑顔が凍りつき、シリウスに至っては突然真顔だ。ピーターはものすげえ目が泳いでる。も、相当泳いでる。バタフライ? 「でもね、君たち、僕に隠れて何かコソコソやってるんだから忙しいでしょ?」 ・・・・・・バレてた。 ・・・・・・・・・・・・・ですよね!!!! やばいやばいやばいリーマスが超怒ってる。すげえ怒ってる。だよなあいくらなんでも不自然だったよなあバレるよなあどうする!つーかこないだのジェームズの仮病とかが完全にアウトだったよな!分かってるよ!アレ隠しおおせられたらすごすぎるもんな!ただでさえ相手はシリウスとかピーターじゃなく、リーマスだもんな!!無理だよ!!! 「・・・え、と、リー、マ・・・ス?」 「うん、なに?ピーター?」 「う、え、えと、え、と・・・」 もうやめろもういいピーターお前の努力は認める無理するな。マジで。珍しく勇気を振り絞ったピーターが必死で弁解しようとして口を開きかけ挫折した。リーマスと目が合った瞬間心が折れたらしい。そりゃそうだよな、だってリーマス目が笑ってねえもん・・・。 「・・・えーとリーマス。そうだな、うん、あの、厨房行こうぜ!でさ、屋敷しもべ妖精に新作ケーキ頼んでみようぜ」 「悪いけどシリウス、僕以上に厨房のスイーツ情報を把握してる人物はいないと思うよ」 「・・・・・・・・・」 シリウス、惨敗。甘いもの苦手なはずのお前が・・・よく頑張ったよ・・・。そんな提案出すとか、無理すんなよ、ほんと。ていうかリーマスの発言が気になって仕方ないんだが。どういうことだよ。厨房のスイーツ情報全把握してるのかお前。 「はっはっはっはリーマスくん、そんなこと気にしていたのかい?大したことはしていないよ!ところで僕の魔法史の教科書知らないかな」 「ジェームズ、それ僕の質問に全く答えてないしその上魔法史の教科書は君の腕の下にあるソレがそうなんじゃないかな」 「・・・親切にありがとうリーマス」 「どういたしまして」 もおおおお肝心な時に役に立たねえなジェームズお前!というかリーマスが2枚も3枚も上手だ。流石だ。とか言ってる場合じゃない、今度はオレにリーマスの視線が降り注ぐ。どうする。どうする。どうするオレ! 「え―――――――と――――――・・・」 「なに??」 「――――あの・・・その、ね、リーマス!」 「ん?」 「試験終わったら全部言うから待っててお願い!!」 ってオレえええええええ!!!!???? それって試験後までにアニメーガス成功させなきゃってことじゃねーの!?なに自分で自分らの首絞めてんの!?3人が思いきり「お前マジかよふざけんなアホか!」っていう目で見てくる、うん、ごめん!だけどオレのその言葉に、リーマスの怒りがちょっと沈静化した。戸惑ったような顔で聞いてくる。 「・・・試験、終わるまで?」 「う、うん。そしたら全部話すよ、リーマス」 「・・・それって今、イースターよりも前だから・・・あと、4か月近く?」 「・・・ご、ごめん、長いよな!だけどそれまで、本当にそれまででいいから待ってて、リーマス!ごめん!」 長くねえ長くねえんだ恐ろしく時間がねえよオレたちには!!なんてリーマスには言えず、とりあえず必死でオレは懇願する。視線を向けられた3人もさすがにこくこくとありったけの誠意をこめて頷いた。そんなオレたちを見てリーマスも諦めたのか、そっとため息をつく。 「・・・・・・わかった。信用するよ」 「ありがと!リーマス!」 「全く・・・の頼み事には弱いなあ」 リーマスの言葉の後半はほとんど口の中で呟いていたからあまり聞こえなかった。そのまま黒いオーラを収めてリーマスは仕方なさそうに笑う。ホッとしながらオレは、こっそりと冷や汗をかいた。やべーあとで3人に怒られる・・・。 「ちょっと!あと4カ月でどーやって成功させるつもりなんだい!!」 「・・・無理だよね・・・」 「だってしょーがねーじゃんあの場で他にどーいえばよかったんだよ!!」 「もっとなにかなかったのかよバカ!!」 「シリウスなんか玉砕してたじゃねえかよ!!!」 「もう、仕方ないね、頑張るしかないなこうなったら」 「なぁジェームズ、グリフィンドールって今リーグ何位だっけ・・・」 「次のレイブンクローがスリザリンに負けたら2位。でそのスリザリンに僕たちが負けたら3位」 「うわああああああ絶対ェ練習キツいじゃねえかよ」 「・・・こうなったらやるしかないだろう?」 ←BACK**NEXT→ 110724 |