「どうしようシリウス・・・」
「・・・・・・・・・・・いや・・・うん・・・」


 シリウスの整った顔がひきつっている。その瞳に、オレの困った顔が映った。後ろでピーターとジェームズもとても面白いことになってるけど。




 63.




「・・・・・・これは困った」
「いや、ほんとに・・・ふあはははは!!!
「ちょっと笑ってる場合じゃないんだよね僕を見て噴き出さないでくれるかい」


 ジェームズをみて思わず噴き出したオレはジェームズから憮然とした顔で言われて必死で笑いをかみ殺した。いやだって超面白いぜ、ジェームズの頭から鹿のツノが生えてんだぜ!?


「いひあはははは、ジェームズが鹿なー!おもしれー!」
「ト、トナカイかもしれないよ
「なんのフォローにもなってねーぞピーター」


 と言うシリウスは、黒いふさふさした妙に毛色のよいシッポがお尻から生えたままだ。表情を返るたびにぴこぴこ動くからもう面白いったらない。シリウスが笑うと横に触れるし、驚くとぴんっ!て立つのだ。笑い転げてたらすげえ睨まれたけど。


ぎゃ!?ひっぱんなジェームズ!!」
「いやあ君が犬ねえ。イメージそのままだね」
「だからひっぱんな痛ェ!コラ逃げんなピーター!」
ひぃぎゃあ!?

 
 敏感に危険を察知して逃げようとしたピーターの、これまたシッポをぐいっとシリウスは捕まえる。悲鳴をあげるピーターのシッポは、うん、どう見てもアレだ。鼠だ。鼠のちょろちょろしたシッポだ。


「でも想像通りだなー!あ、でもオレジェームズはヒョウとかでもいいかと思ってたけど」
「・・・ヒョウはちがくねぇか、ジェームズって」
「あ、そう?」
「というかオレからしてみればに驚いたけどな」
「いや僕は納得したよ?ぴったりじゃないか」


 シリウスとジェームズがオレを見て2人して頷き合う(ピーターはまだ涙目でシッポの付け根をさすってた)。そんなオレはといえば。


「鳥だろ?」


 こくりと頷く。オレは、両腕から明らかに鳥の羽毛と思われるものが出現していた。ぶわわわっと浮いたそれはまるでなりそこないの鳥人間でちょっと気持ち悪い。


「うーん・・・この状態だとたしかに気持ち悪いね」
「いっそ羽みたいに背中から生えたらかっこいいんだけどな!」
「・・・そうか?」


 うるせーよシリウスてめぇのシッポよりましだ。・・・そうでもないかもしれない。正直、腕から羽毛が噴き出してるってのは見た目がかなり悪い。ほんとに気持ち悪い(真顔)
 というか、本来オレたちはいまこんなに和やかに会話してる場合じゃない。微妙に変身できたはいいものの、問題が起きた。




 もとに、戻れない。


「どーすんだよばかー!!オレずっとこの中途半端鳥人間みたいなの嫌だよ!!」
「しらねーよオレだってシッポずっとつけてるわけにはいかねーよ!!」
「僕も嫌だあ――!」
「チョット君たち僕が一番困ってるってことを忘れないでくれるかな!ツノなんて頭が重いんだよ!?」




*




「・・・、風邪でも引いたのか?」
え!?なんでセブ、そんなことねえよっ!」
「・・・・・・いや、こんな暑い室内でそんなに厚着をしているから」
「アハハハなんでもねぇようん、ちょっと確かに風邪気味でな!」
「・・・そうか?」
「うんそうそうセブなぁコレ入れてもいい!?」
駄目だ!!!


 あ、焦った・・・!!やっぱセブは鋭い。けど確かにこの魔法薬の教室は、調合をしているせいかもう冬に入ったのに暑い。腕の羽毛を隠すためにローブをぎっちり着こんでいるオレは思わず浮いた冷や汗を拭った。

 結局、リーマスが帰ってくるより早くには元に戻る事が出来なかったオレたちは、仕方なく各自戻る方法を試行錯誤しつつ授業に出る羽目になった。明らかにごまかせないジェームズだけ仮病で寮にひきこもり、シリウスとピーターは制服にしっぽを隠して、だ。


「また何か企んでいるのか?」
「イヤイヤイヤセブほら鍋見て鍋」
「ごまかすな」
「イヤマジマジマジであのオレの鍋からなんか真黒な煙出ちゃってます」
はぁ!?この馬鹿!!だからツノヤドリグサは2杯以上入れるなと言ったんだ!!!」


 運よくセブの追及を逃れて(そのかわり散々説教されたけど)オレはほっと一息ついた。オレたちが体を元に戻して、ジェームズが仮病から復帰したのはそれから2日後だった。いやあ、リーマスにまで隠すのはほんとに大変だった。一番大変だったのはリリーとメイファだったけどな。同室だし。それを言えば、よく3人ともリーマスに隠し通せたなあ・・・。











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