「今日はみんなに紹介したい新しい選手がいるんだ」


 クィディッチの練習中、我らがキャプテン、クライスに連れられて来たのは。強い意志の光を放つ烈火のような瞳をもつ黒髪の少女、で。


「・・・メイファ・ロウです。よろしくお願いします」


 流石にオレは顔が引きつったのを自覚した。ジェームズが憐みの入り混じったような目でオレを見る。え、マジで?





61.




「ちがいます!違うわ!!なんでオレがケイシュウの恋人と浮気中でかつメイファに手を出してて恨まれてるってどーいう筋書きですかおかしいだろどう考えても!つーかそれじゃあオレただの最低男じゃねーか女だって何回言わせるんだよ!!せめて女のポジションに組み込めよジェームズ!!!」
「えっじゃあラブラブだった2人に割り込んでケイシュウを奪っていったドロボウネコっていうのは
「じゃあじゃねえよ!!」
もういいかな2人とも
「「はいすみません」」


 練習が始まってほんの数分で(!)クライスはもちろん、チームメイトの全員がジェームズにオレとメイファの間の確執を問うという羽目になった。ふんだんに脚色されたジェームズの話を聞いたみんなは一斉にオレに向かって「うわぁ」みたいな顔をしたから何かと思えばドロドロ昼メロサスペンスみたいなことになっていた。ジェームズこのやろー!!

 でまあ結局、オレとメイファの関係はチーム内に知れ渡ったけども、これってかなりの障害だった。だってキーパーに協力する気ゼロのチェイサーってどうなんだよ。ただ、一緒に練習をしてみた結論から言うと、メイファの実力は相当高かった。クライスがスカウトしてくるのも頷ける。(クライスは普段から有望そうな子を発見しようと目を光らせている。オレとジェームズもその類だ)オレのセーブも、10回中2回はクリアした。速さも申し分なければ、判断力も言うことない。

 もちろん、チームは彼女を諸手を挙げて歓迎することになった。


「・・・で、お前はいいのかよ」
「何言ってんのさシリウス、オレがどーこー言う立場じゃないよ」


 だけど、とシリウスは唇を尖らせる。別に、メイファは「オレ以外のチームメイト」には愛想だっていいし、普通につき合いもうまい。まあ若干ジェームズに対しての態度は硬いけど、オレ程じゃない。それに、


「オレはメイファが嫌いなわけじゃないよ。むしろ仲良くなりたいと思ってる。だってさ、見ててわかるじゃんか。あの子、本当はすげーイイ子だよ。オレがあの子に嫌われてるだけ」
「・・・
「リーマスだったら気付いてるだろ、メイファって口調はキツいけど世話焼きで、意外と友だちには頼られてるんだよな」
「うん、そんな感じするよね、確かに」


 そう、メイファが扱いづらくなるのは、決まってケイシュウが関わる時だけだ。オレは言われるまで気付かなかったけど、今になって思えばあんなに分かりやすいヤキモチもない。


「ところでシリウス、今日の昼休みに告白してた子って誰?」


 唐突にリーマスが言った言葉にシリウスが飲んでいたコーラを噴き出した。「わあ汚いなぁ君はもう!」ジェームズが悲鳴を上げて、コーラの直撃を受けてびたびたのピーターに向けて慌てて杖を振った。謝るのもそこそこに、シリウスは目をひん剥く。


おおおおおお前見てたの!?
「うん。てゆーか君が告白されるなんてすでに日常茶飯事じゃないか、何を今さら」
「じゃあわざわざほじくり返すなよ!」
「なんとなく、思い出したもんだからつい」


 クスクスと笑うリーマスが黒い。オレはぼーっとソファに寝っ転がりながらふーん、と頷いた。また告白されたのかー。


「シリウスの何がいいのかねー」
も人気あるよ?」
「女子に、だろ?学校にいるときは制服がほとんどなのに、なんで女の子にモテるかなあ」


 とても切実な悩みである。悪いけどオレにはそういう趣味はないし、女の子に懐かれるくらいなら構わないけど本気で恋愛されても困るだけなんだよなあ。


「ううん、男子に。人気あるよ、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?
「はいはい、僕も知ってるよ☆」
え゛っ!?こんな山猿が人気あんの!!?」
「遅れてるねえシリウスー」


 平然と言うリーマスに同調するのはジェームズで、オレと同様に目をむいたのはシリウスだ。ピーターは消えきらなかったコーラの残りを必死で拭っている。お前シャワー浴びてきた方が早いんじゃね?


「リリーも人気あるよね。可愛いし、綺麗だし、頭いいし」
僕のリリーにうつつを抜かしてるのはどこの誰だい?
「おめーだろ」


 確かにリリーは可愛い。認める。そう思ったらまたメイファの顔が出てきてちょっと憂鬱になった。ああ、明日は試合だー。まだ打ち解けてくれない、というかチームメイトなのに協力すらしてくれねえんだよなあどうしよう。はぁ、とため息をつきつつオレは立ち上がる。


「もう寝る。明日は勝たなきゃだしな」
「ああ、僕も先に寝よう」
「おやすみ、、ジェームズ」
「おやすみー、明日な」
「お、おやすみなさいっ!」


 談話室を2人で抜けて、ジェームズは男子寮、オレは女子寮への階段を上った。部屋に入るとリリーが出迎えてくれて、奥のベッドではすでにメイファが寝入っているのが見える。


「明日は期待してるわよ、。頑張ってね」
「ありがとリリー。おやすみ」
「おやすみなさい」


 ふわりと笑うリリーは、まだ早い時間なのにオレに付き合ってベッドに潜って電気を消してくれた。持つべきものは親友だなあ。明日のスリザリン戦に不安を感じながら、オレは眠りについた。















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110703