「教科書はコレで全部だな!」
、インク忘れてるわ」
「おお、さんきゅ、リリー」


 荷造りしながらオレはちょっと首を傾げた。魔法薬の先生が、変わった。誰だ、このスラグホーンって?つーかあの嫌味ったらしいキアリス教授はどうしたんだ。うーんついにクビになったのかなー。別に嫌いだったから興味無いけど。





 58.




、リリー、これで全部?」
「うん、ありがとアリアさんっ」
「ありがとうございます」


 家の前に全員の荷物が積まれて、更にそれをアオト兄が次から次へと車の中に放り込む。父さんが2階の窓から顔出して、「おいパンツ忘れてんのいるぞ!誰だこの赤地に星柄のド派手な」「うわあああああ僕ですッッ!!!」と走り出したのはジェームズだ。


「趣味悪いなアイツ」
「ありゃまだマシな柄だ」


 オレの呟きにシリウスがそう返す。さすが男子寮で同じ部屋なだけあるなあ・・・。まじまじとシリウスを見る。


「なんだよ?」
「シリウスのパンツってシンプルっぽい気がする」
「何考えてんだバカ!」


 呆れかえった瞳に、オレはけたけたと笑い、赤いパンツを握り締めて戻ってきたジェームズを見た。リリーがものすごい目でジェームズを睨む。うん、まあ、正常な女の子の反応ならそうなるのかな。・・・オレって・・・。


「あなた本当に最低ね」
「はっ!?いやいやこれは・・・ごごごごめんリリー!!」
「デリカシーがないのよ、デリカシーが!!早くしまいなさいよ!!」
「はいっ!もちろんだよリリー!!」


 そう言ってジェームズは慌ただしくパンツをカバンの中に押し込んだ。セブの呆れを通り越して軽蔑の視線がなんかもはや面白い。


「全くもう、ジェームズは・・・。もう忘れ物はないよね?ピーター、大丈夫?」
「う、うん!大丈夫だと思うよ、リーマス・・・!た、多分・・・」
「よしお前ら早く乗れ。行くぞ」


 車のドアを開けたアオト兄に誘導されながら、オレたちは順に車に乗り込んでいく。オレの後から車に乗ったリリーが、車内を見て驚きの声を上げた。


「え、広い・・・!?」


 パッと見は普通の乗用車ってサイズの車だけど、さすがにアオト兄も含めて8人も乗るわけで、しかもオレたちの荷物もあるわけだから、そこそこ大きめの魔法のかかってる車を父さんが借りてきてくれたわけだ。中はちょっとしたバス程度の広さ。運転席に座ったアオト兄が窓から首を乗り出した・・・・・・あー、アリアさんと行ってらっしゃいのちゅーかな、熱いねー新婚さんは。リリーも気付いていたようで、とても楽しそうににこにこしてる。

 で、アオト兄は顔を中に戻すとオレたちを振り返った。


「出発すんぞ!」


 それでオレは慌てて窓から顔を乗り出す。父さんと母さんも玄関まで見送りに来てくれていた。


「行ってきます!」
「行ってらっしゃい」
「またな」
「行ってらっしゃい、みんな!また来てね!」


 アリアさんのふわりとした笑顔がオレたちを見送る。


「ありがとうございました!」


 ジェームズが言ったのを皮切りにして、次々とお礼の言葉が飛び出していく。さあ、帰るぞ、ホグワーツ!




*




「おなか減った―――!!」
、お前さっきまでひたすらケーキ食ってなかったか?」
「うるせーよセブ、成長期なんだからしかたねぇだろ!」
「いやどう考えても食い過ぎだろう」
「つーかセブこそもっと食えって!!オレに身長ぬかされるぞー」


 洒落にならないのかセブは本気で嫌そうに渋面を作った。ちなみにオレはまた身長が伸びた。リーマスとは並んでいる。去年はオレのがちょっとだけ高かったのに、今年は追いつかれた。悔しいな、なんか。ちなみにジェームズとシリウスに関しては論外だ。もー追いつけるわけねえよ。


「それじゃあ僕はこれで」
「うん、またな、セブ!」
「ああ」


 無愛想にそう言って汽車を降りたセブは、そのままスリザリンの生徒たちの列に紛れ込んでいった。


「なにやってんの、置いてくよー」
「あ、悪ィ!」


 リーマスの声にオレは慌てて地面を蹴った。城について、それぞれの寮の席へ。オレたちはもちろんグリフィンドールだ。前の方から「先輩――――!」の声。わざわざレイブンクローからよくもまあ・・・ケイシュウだ。でもって、たまたま斜め前に座ってた黒髪の女の子が振り向いてオレを睨む。・・・メイファだ・・・相変わらずオレのこと嫌いなんだなあ。


「まだうちとけてなかったのかい?」
「あー、うん。オレ、頑張って仲良くしようとしてるんだけどなあ」


 ジェームズがこっそりとオレに向かって聞く。ため息交じりに答えるけれど、メイファはふいっと視線を外してしまった。睨んでるのは友達と笑顔で話すケイシュウのこと。一体オレ、いつになったらメイファと仲良く出来るのかなあ。


「・・・・・・私なんとなく理由はわかってるのよ」
「え!?そうなのリリー!?」


 思案気に言うリリーを振り向くと、彼女はなんともいえないような表情でオレを見返す。わかんないの?と言外に言われてるようでなんとなく気まずい。分かってないのはシリウスもピーターもらしいけど。こっちは完全にわかってるらしいリーマスが隣から口を出した。


「でも悪くないよね」
「そうなのよ」
「え?え??」
「あれってつまりは本人同士の問題じゃないのかい?」
「ていうか本人たちが気付いてないんじゃないのかな」
「本人てオレじゃねーの?」
「・・・・・・あー・・・」
「え、なにシリウス分かったよーな顔してんの!?」
「ああ・・・うんお前にはわかんねーよ
「はァ!?」
「・・・そうね、は・・・だもの」
「えっちょ!リリー!?」
にはずっとそのままで居てほしいな」
「リーマス!?」
「そんなが大好きだよ。リリーには負けるけどね!」
「私のをそういう目で見ないでくれるかしら」
「えええええリリー!!?そんなぁぁ!!」


 なんかみんなに流されるんだけど。ぽかんとしているピーターと一緒に、オレはなんだか優しそうな目で愛でられる。・・・ってどういうことだよ!説明しろよ!


はそのままでいてほしいんだよ?」
「なんで疑問形なんだよリーマス!」

















 ←BACK**NEXT→






110511