「オレの小さいころ?」 こくこくと頷く5人(例の4人&リリー)とオレの後ろで興味なさそうな顔で座っているセブ。なんでそんなこと聞くのかと問えば、ジェームズが口を開く。 「空白の3年間ってなんだい?」 57. 「アオト兄から聞いたのか!」 「ああ」 聞けば、去年の夏。彼らがウチに来てたときに、アオト兄がさらりと言った言葉らしい。別に隠したいわけじゃないから、オレは困ったように頭の後ろを掻いた。 「言ったっていいけど、別にそんなに面白い話じゃねえと思うけど」 「それでもいいんだ、」 リーマスが言う。・・・まあそんなに言うなら。 「オレの母さんさあ、父さんと駆け落ちしてるんだ」 「「「「「「えええ!!?」」」」」」 うしろにいたセブですら驚きの声を上げた。そりゃ驚くよなあ。そのままオレは腕を組んで首を傾げる。駆け落ちした母さんは、夕蒔家のたった一人の跡取りだ。そんなヤツが簡単に家出など出来るわけない。 「とは言っても母さんも父さんも相当な実力者だからさ。日本からの追手の目も避けてすげえ逃げてたんだ。そんななかアオト兄が生まれる」 夕蒔家の正統後継者の目は空色だ。アオト兄の目の色は父さんと同じ海の色。おそらくその目の色、その目の力をきっかけにするようにして呪術を放っていた夕蒔家には捕まらない。だけど。 「――――まさかあなた」 「リリー正解。そ。オレ、夕蒔家の正統後継者なんだよ」 きらりと光る自分の瞳を指差しオレは笑った。目を見張る彼らは、揃いも揃って口を開く。そんななかシリウスが思いきり空気の読めない言葉を口にした。 「じゃお前ムーバげふっ!!」 「ごめん続けてくれる?」 ≪mover(移動者)≫と口にしようとしたシリウスの後頭部を思いきり殴ったリーマスはにっこりと笑った。リリーもセブもオレの力は知らない。こんなとこで軽々しく人の最大の秘密を口にしないでくれるかな全く。リーマスには感謝だ。シリウスが言いたいのは多分、要するにオレは夕蒔とにおいて、両家の跡取りなのだろうか、ということだろう。そしてそれはその通りだ。ややこしい立場にいるんだよなあ、実はオレって。ブラック家長子のシリウスにはきっと理解できる。 「つまりオレの目のせいで、父さんたちは見つかっちゃったわけ。母さんの目にはしっかりカモフラージュじゃないけど、そういう魔法がかかってた。でもオレが生まれて、その瞬間に魔法をかけるなんて出来ないだろ?そのときに、な」 「じゃあ、そのあとまさか、君は」 「ああ。ジェームズが考えてる通りだと思うよ。―――夕蒔家に攫われたんだ」 息をのむ全員。さすがに生まれた直後に攫われたわけじゃないけれど。3歳のころ、アオト兄がちょうどホグワーツに入学したころ。オレは母さんと一緒に日本に連れてかれたのだ。それから4年間、父さんと母さんの必死の努力の末にオレはこっちに帰ってきたのだ。もちろんまだ、オレが夕蒔家の当主を継ぐ可能性も残っているし、母さんが強制的に連れ帰らされることだって考えられる。 「だけど、ひとまず、ね。今の夕蒔家の現当主はオレのじいちゃんで、後継ぎは名目上はハトコだか誰だかになってるけどな」 「、日本に行っちゃうの・・・!?」 「行かねえよ、多分な。今のとこじいちゃんはピンピンしてるし、表面上はオレの両親とも和解してるハズだし。そもそもオレ、この目を持ってるけど力なんか全然なかったんだ」 「え?」 キョトンとするピーターに苦笑する。要するに霊感とか、そういう呪術を扱える能力、だ。母さんはそりゃ元跡継ぎだっただけあってむちゃくちゃそういう力はあったけど、オレにはさっぱり。そんなことは日本にいた4年間でもう夕蒔家のほうも痛感したはずだ。小さかっただろうがなんだろうが、全く持って上達どころか習得すらできなかったから。 「コリたと思う。ただですら金髪で明らかに異国人。で力があるならともかく全く持ってなにもできない。そんなヤツ跡継ぎに出来るわけないし」 「そりゃそうだな」 頷くシリウス。そういうわけだから、現在は夕蒔家ではなんか遠縁の子が跡継ぎの地位には一応いるはずだ。 「つまり、その日本にいた期間、が“空白の3年間”ってわけだね」 「らしーよ。まあアオト兄と父さんにしてみれば大変な3年間だったらしいけど。で、オレがマグルとして暮らしてた3年間ってわけ。だから日本語も喋れる。母さんも時々日本語使うから、あまり忘れないですんでるんだよな」 「そうだったの・・・」 ジェームズのまとめる声に頷いて、オレは日本語を話せる一番大きな理由も語る。その声にリリーが納得したように呟いた。 「っつーわけで、な、別に面白くもなんともなかっただろ?」 「確かに」 「・・・シリウス正直だな・・・別にいいけどさ」 「まあまあ、ところでトランプでもしないかい?そこのスネイプくんもホラ今日くらい僕らだって何もしないよこんな素晴らしい日に!」 「貴様の言葉は信用できるか!!」 「だいじょーぶだよ、なぁシリウス?ジェームズ?」 警戒心剥きだしでジェームズの誘いに噛みつくセブをなだめて、オレは唇だけ笑みの形に歪めて2人を見た。とたんに2人の肩がびくりと震えて、「あ、ああもちろん!」「んなコトするかよ!!」よしよし。 「何するかい?ババ抜き?大富豪?七並べ?」 「僕はポーカーがいいなあ」 「げっ!!嫌だよ、リーマス強すぎだろポーカー!!ダウトやろーぜダウト」 「それもリーマスが強すぎな気がするけどいいのかい・・・」 「少なくともダウトだとビリにはならねえよ、シリウスがいるもん」 「てめえ!!いいぜダウトやろうぜ!ボッコボコにしてやるっ」 「ダウトね?じゃあ配るわよ、セブ手伝って」 「・・・分かった。一人何枚だ?」 「えっと、7人だから、・・・」 「一人につき7、8枚だな。ペディグリュー、計算しなくていい」 ダウトの結果はシリウスが6敗、ピーターが2敗。やっぱり弱かった。強かったのはやっぱりリーマスとジェームズで、セブもそこそこかな?オレは結構ラストまで残っちゃったけど、大体シリウスが失敗してくれるからなんとかビリにはならなかった。なんでシリウスって頭はいいのにこういうゲームは苦手なんだ?騙し合いとかホントできいないんだろうなあ。顔に出るし。 ←BACK**NEXT→ 110416 |