!」
「おージェームズ!シリウス!!リーマスもピーターも、よく来たなっ!」
「わあああああリリーなんて可憐なんだァァァァ!!!」
「ちょっとジェームズ近づかないで!!」
「つーかなんでスネイプがここにいんだよ!!」
「黙れシリウス、セブはオレの友達だっっ!!」


「つーかお前ら、騒ぎすぎだ」
「え、いいじゃないアオト!よろしくね、みんな」


 にっこり笑うアリアさんは純白のドレスに身を包んでいてめちゃめちゃ綺麗だ。一斉にシリウスを筆頭に男どもが顔を赤らめた。うーん、気持ちはよくわかる・・・。




 56.




 見事に晴れ渡った日、今日はアオト兄とアリアさんの結婚式だ。それ相応に着飾ったオレたちはみんなで集結して騒ぎまわっていた。挙式は終了して、披露宴。我が家の庭を使った立食パーティ。基本は仲良しな友人や家族だけのほんわかした会だ。


「リリーもうホント綺麗だ!!生まれてきてよかったっ!」
「うるさいわねジェームズ。でも、なんでドレスにしなかったの?」
「同感だよ、僕も見てみたかったなあ」


 深い赤の大人っぽいドレスに身を包んだリリーが首を傾げて、そこにリーマスが便乗した。オレはといえば、ジェームズやシリウスなどなど、男らと同じように黒のスーツでビシっと決めている。おかげで男気が増しているのかなんなのかよく分からんが女性の傍を通ると若干見とれられる。不本意だ!


「だってオレドレスなんか持ってねえもん。これアオト兄のお古」
「ええ!?お母さんのとかあるんじゃないの?」
「オレと母さんって全然体型違うからあわねえんだ。母さんは買ってくれるって言ったけど、成長期だしどーせ着れなくなるんだったらもったいねえかなって」
「えー!見てみたかったわよー!!」


 残念そうにリリーが言う。んなこと言ってもなあ。にやっとジェームズが笑って、なにかと思えばシリウスとリーマスを引っ張ってきて、オレを引き寄せてついでに自分も一緒になってびしっと体勢を決めた。なにがしたいんだお前。ところがその瞬間きゃあっと黄色い歓声が上がった。えええええ?


「あっはっは!すごいね、まるでアイドルみたいだ!!」
「・・・なんなんだジェームズ」
「ん?いやあ見事に美形が揃ってるから並んで見たら絵になるかなあと思って」
「ちゃっかりそこに自分を入れるのがさすがジェームズってとこだね」
「なんかオレ、褒められてる気がしねえんだけどなー・・・」


 もぐもぐとサンドイッチを食ってたシリウスが呆れたような目をする。ついでに言えば少し離れたとこから、黒のスーツを着こんだセブがものすごい冷めた目でこっちを見ていた。お、オレまでそんな目で見るなよ!

 でも確かに、更に身長が伸びたシリウスはなんかいい感じに黒にストライプの入ったスーツを着崩して、うっとうしいのかネクタイはゆるめられててサラサラの黒髪をかきあげる仕草が見事に決まってる。リーマスは少し色の薄いスーツで、鳶色の髪はそのままに、かなりしっかりと着こんでる。でも薄いオレンジのシャツがすげえ似合ってて。ジェームズは意外にも黒地一色のシンプルなスーツ(もっと奇抜な色かと思ってた)に真っ赤なシャツ、深いハシバミ色のネクタイ。目の色にあわせやがったな、すっごい似合ってる。スーツを着てるというより着られてる感じのピーターと比べると天と地の差だ。・・・ごめんピーター。


!」
「あ、アリアさん!アオト兄!」


 来客に挨拶回りをしていた兄夫婦(うわなんか恥ずかしいなこの表現!)がオレたちのもとに回ってきた。高い位置で二つに結ったアリアさんの髪が揺れる。


「今日は本当に、ありがとう」
「おいそこ、アリアに見とれるな」


 にこにこほわほわと笑うアリアさんに、ぽかっと見とれてた男どもに向かってアオト兄が噛みつく。でも、しょーがねーと思うんだよなー。女であるオレだってほれぼれするほど、今日のアリアさんは綺麗だ。


「綺麗だよ、アリアさんっ」
「ありがと、。このドレスね、千鳥さん・・・お義母さんにお借りしたの」
「え、そうなの?」
「そ。母さんと父さんの結婚式でも着たんだとさ」


 オレの疑問にアオト兄が答えた。じゃあもしかして、アオト兄が着てるスーツも父さんのものなのか?そう聞くと2人は頷く。へー、知らなかった。家にこんなものあったんだ。


「オレも知らなかったよ、だから貸してくれたときは驚いた。父さんと母さんの結婚って大変だったっつーのは聞いてたから式なんかやってる余裕もなかったんじゃないかと思ってたしな」
「でも本当に素敵なドレスだよね。私、こんないいもの着ていいのかって思っちゃったもの」


 肩ひもがない胸からのドレスで、腰からふわりとレースが伸びる。白一色で胸元にちりばめられた、ダイヤなのかなあ、透明な色の宝石がきらきらと光る。首元が寂しくなるから、着けたネックレスは豪華なデザインだ。派手ではないけれど上品でセンスもいいと思う。


「ねえ、
「ん?」
「いつか、も結婚する日が来たら。これ、着てね?」
「ん・・・えええええええ!!??


 後ろで聞いてたシリウスが噴き出した。反射的に蹴りを飛ばして、オレはぽかんと口を開けた。ジェームズがヒュウと口笛を吹いて、リーマスが目を瞬かせる。ピーターがチキンを口に加えたままの状態で固まって、セブが口に含んだドリンクに咽る。で、ただリリーだけが楽しそうに「きゃあ!」と歓声を上げて笑顔を見せた。


「素敵!そうよ、着てね、!!」
「ちょ、おおおい待って待ってオレが!?着るの!?コレを!?」


 ものすごい華奢でスタイルのいい女の人じゃないと似合わない気がするんだけどこのドレス!しかも、ちゃんとこう、胸もお尻もしっかりあってかつ腰はきゅっと細い女性じゃないとダメだろ!つーかオレそんないいカラダしてねえよ!!


「無理無理、オレが着たら胸で止まんねえもんそのドレス!
「なに暴露してんだお前!!」
「これから成長するのよ!!」


 ぱっかーん、と後頭部をシリウスに叩かれた。リリーのフォローもあんまりフォローになってないけど・・・。アリアさんはそんなオレを見てころころと笑う。アオト兄が呆れたようにため息をつく。


「まあ、お前もこのドレスが似合うようなイイ女になれよ?オレの妹なんだからそれくらいしてくれねえと」
「でもオレ、4年生になるまで男から求愛されてたアオト兄みたいに女顔じゃねえもん!」


 ピシッと額に青筋を浮かべたアオト兄はにっこりと真黒な笑みを浮かべた。わあああやべえ地雷踏んだ地雷!


「よく言った妹よ歯ァ食いしばれこの馬鹿」
「わああああああゴメンゴメンゴメンってギブギブ!!」


 しっかりとホールドを食らったオレは、首に回されたスーツの腕をパンパンと叩きながら必死で降参を訴えた。それをアリアさんはにこにこと眺めて、ジェームズたちはもちろんリリーですら助けようとしてくれない。ちらりとセブに助けを求めれば、困惑したような表情が返ってきて、ふいっと目をそらされた。お前もか!兄の晴れの日になにやってんだろ。でもこんなことですらなんだかおかしくて、笑い声が青空に響いた。





















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