「・・・最近、アイツ、なんか隠しごとしてるだろ」 剣呑な瞳でそう言ったシリウスが示すのは当然のことで。僕はそれを少し面白がりながら、そうだねえ、なんて曖昧に返事をしてチョコレートの包み紙を開けた。 45. 「一体全体、なんでそんなにイライラしてるんだい?隠しごとったって、彼女のことだから大したことでもないはずじゃないか」 「・・・じゃーなんで最近スネイプとばっかいるんだよ!」 「・・・・・・そこまで言うほどかい?」 シリウスの言うとおり、は最近、僕らと居る時以外はスネイプといることが多い。とはいえ、そのシリウスの言葉をジェームズが不思議がるのももっともで、僕らといる頻度がそこまで下がったわけでもないし、ただ単に自分の魔法薬の成績に危機感を感じただけのように見える。だっては、スネイプのところに行く時は必ず魔法薬の教科書を持っていくからだ。僕も誘われたことあるし。行かなかったけど。 「そもそもにとっては、スネイプはホグワーツでできた初めての友だちじゃないか。おまけに彼は魔法薬が得意なわけだしね。が頼るのも分かるだろう?」 「・・・そりゃ、そーだけど。じゃーなんでリーマスは行かねえんだよ?リーマスのがマズいだろ、魔法薬は」 「え?僕、誘われたよ?普通に。行かなかっただけだよ」 だって魔法薬の勉強なんて好き好んでしたくないしね!そう言うと笑顔のままのジェームズの額から汗が滑り落ちた。ごほん!と咳払いをしてから彼はシリウスに向き直る。 「よーするに、寂しいんだろ?君は!」 「うるせー!!」 犬だね。 うん、犬だ。 噛みつくシリウスを見ながら、僕とピーターは無言で頷き合った。 * 「ああああああもー!!!」 「落ち着け。次は2回右回し、3回左回し、つぎにイモリの黒焼きを入れる」 「2回、右ー、3回、左ー、つぎに・・・ヤモリ?」 「イモリだ!!」 別にヤモリもイモリも一緒じゃねえかよー。そう言うとセブにすごい勢いで怒られた。全然違うそうです。わかんねえよー! コトコトと煮られる鍋を見ながら、オレは必死で教科書と向き合った。ここ数日はえんえんとこの作業ばっかりだ。魔法史や薬草学はともかく、魔法薬だけは一朝一夕で頭に詰め込める内容じゃない。ゆっくりと頭に叩き込まないとどうしようもないのだ。 「・・・よし。いいな、これで冷やしてエメラルド色になれば成功だ」 「セブに褒められた・・・っ!!」 最初はドコバキとしょっちゅう教科書で殴られながら怒られながらの練習だったのが、だんだん努力が実を結んできたのかちょっとずつ褒められるようになってきた。これはやっぱり素直に嬉しい。苦手教科だし。 「よしゃ!これで、一応全教科制覇!!」 「ああ」 「変身術の復習、しない?」 「・・・そうだな。やっておくか」 変身術は得意科目なので練習するオレもテンションが高くなる。これくらいなのだ、オレがセブに教えられる科目は。防衛術も得意だけど、闇の魔術に妙に詳しいセブはもちろん防衛術だって詳しいから意味がない。・・・とはいえ、変身術だってセブはそんなに苦手じゃないけどね。 「でもさ、オレたち、頑張ったよな!」 「ああ」 オレの涙ぐましい努力を知っているセブは、感慨深げに頷く。良く頑張った、ここまで・・・!それこそ地道だった。ジェームズとシリウスが遊んでる間に勉強しなきゃいけないというのはものすごい苦痛だった。でも、これでアイツらに一矢報えるかもだぞ。 「あとの望みは、あいつらが勉強してないことを祈るだけだな・・・」 「・・・・・・・それはどうなんだ、・・・」 だってあいつらが勉強してるかしてないかによって大きく戦況が変わるじゃんか!!そんな様子ないけど、でも寮の部屋はもちろん違うわけだから、そこで勉強してるかもしれないし。そんな風には見えないけどさ。 「頑張ったんだから、いいだろう」 「・・・そ、だな」 「あとは、本番だ」 「―――うん」 学年末テストは、明日だ。 * 「「・・・・・・・・!!??」」 絶句したシリウスとジェームズの前に張られているのは、今回のテスト結果で。僕も慌ててそれを見上げると、そこには驚くべき結果が書いてあった。 「首席、ジェームズ・ポッター、セブルス・スネイプ・・・!?」 「オレは次席のままだけど・・・、ちょっと待てよ、なんでが5位に食い込んでるんだよ・・・!?」 呆然とそれを見る2人の横で、がにぃっと悪戯っぽく笑った。そして彼女はひらりと後ろを振り向くと、誰かを探すようなしぐさをしてから手を振った。そこに立っていたのは、セブルス・スネイプ。 そういうことか!その瞬間、すべてが分かって僕は吹き出しそうになった。そんな僕を振り返って、が楽しそうに笑う。 「テスト前に、あいつらが言った言葉がどーもムカついてさ。セブと見返してやろうって話になったんだよ。やっぱセブはすごいな、ほんとに首席取っちゃうし」 5位かー、もうちょいだったなー、なんて呟くを見る。スネイプがそんな企みに乗じるとは思えなかったけど、どうせ彼女にほだされたのだろう。僕よりもずっと下だったの順位は、今や僕なんかよりはるか上位だった。学年で5位以内に入ったなんて、いくら悔しかったって言っても、すごいとしか言いようがない。 「でもな、リーマス!オレ、教科によってはシリウスに勝ってるんだ!」 「へぇ、そうなの?」 「そ。魔法史と魔法薬だけは勝てた!」 魔法薬、苦手だったのにね。それだけ特訓したんだろう、彼女の目には得意げな色が光っていた。今だに呆然と順位表を見る2人の耳には、の言葉は届いているのかな。自分の順位を見つけたピーターが嬉しそうに顔を赤らめたのを見て、僕らは楽しげに笑った。 ←BACK**NEXT→ 091224 |