リーマスと仲直りして数日。実は心配してくれていたらしいセブとも「ご心配おかけしました」「僕がアイツらの心配などするわけないだろう」「オレのことは心配してくれてたのー?」「・・・さっさと作業に戻れ」なんて魔法薬授業中に嬉しい会話を交わしたりして。リーマスの傷もほんの少し癒えたころ。

 ホグワーツに、雪が降りました。




 41.





「ひゃぁっほォ――――!!!」
「ケガするよー」


 元気よく白銀の世界に飛び出していったオレに、後ろからリーマスが声をかけた。ほぁほぁと白くなった息が舞う。吸い込んだ空気が肺まで落ちて鼻の奥がツンとした。転がるような笑い声が聞こえて、そっちに目をやると見事にすっ転んだピーターがいて。


「っはは!大丈夫かよピーター!!」
「だ、大丈夫だよっ!・・・ううう」
「おお、お前泣かなくなったな」


 雪で冷やされて赤くなった顔を拭い、ピーターは差し出されたシリウスの手に捕まって立ち上がった。どうやら大丈夫そうだけど、確かに泣かなくなったな。去年は事あるごとに泣いてたのに。そんなことを思っていたら、雪玉が顔に直撃した。


「ぎゃふっ!?」
「ふっふっふっふ油断大敵さ。そーれ!」
「そーれ・・・っておま、ちょ、ズルくねぇかそれ――――!?」


 元気のいい掛け声とともにジェームズは杖を一振り、そうしたらいくつもの雪玉がオレめがけて吹っ飛んでくる。さすがに逃げようと身を翻したけれど、足元は雪。もちろんとられる足。ということはつまり。


「のぎゃあっ!!」
「あーあ・・・」


 ピーターに負けず劣らず見事に、オレはべしゃ!と雪にダイブした。つ、冷たい!死ぬ!ジェームズ最低!リーマスの呆れ声が聞こえる。オレは「うー」と唸りながら雪に手をついて顔をあげる。ちっくしょー!気配に気づいてふと顔を上げるとリーマスがオレに向かって手を差し出していた。


「大丈夫?顔真っ赤だよ」
「ん。さんきゅ」


 その手に捕まって立ち上がらせてもらう。仕方ないねと笑うそのリーマスの頭に雪玉が直撃した。・・・・・・げ。オレは自分の顔がひきつったのを自覚した。シリウスたちが凍りついたのを気配で知る。その雪玉を投げた主を、ぎぎぎぎと音が鳴りそうなほどののろい動作で見る。そこには。


「はっはっはっは、この程度がよけられないとは、笑止!!」
ディサーダお前地獄を見るぞ


 腰に手を当てて高笑いをするディサーダとその愉快な仲間達に向けて、シリウスが的確な予言をした。その瞬間、シリウスの黒いサラサラの髪をかすった雪玉がディサーダの顔にクリーンヒットする。ばごっ!と音がした。怖ぇ。


「・・・・・・・・・・・・・・死ぬな」


 にっこにこの真っ黒い笑みで雪玉の猛襲をし始めたリーマスを見ながら、オレは悲鳴をあげて逃げ惑うディサーダたちにむかって十字を切った。アーメン。





*





「・・・・・・お前は本当に女か」
「一応。セブこそ一緒に遊べばよかったじゃねぇか」
「結構だ」


 ずば!とそう言ったセブは心底嫌そうな顔をした。運動しねーからいつも青白いんだよもー。・・・健康的なセブもそれはそれで気持ち悪いんだけどな。


「あら、!セブもいるじゃない!!なんだかセブとは久しぶりね」


 ぱぁっと笑顔になったリリーが廊下の向こうから駆けてくる。オレとセブだけだということを確認して安心して、彼女はオレたちを見上げて笑った。


「鼻が赤いわよ、
「え、マジ?」


 雪の中で遊んでたせいかな。思いきりダイブしたし。そんなことを考えて、オレは少し前から考えていたことを唐突に思い出した。リリーとセブを交互に見てから口を開く。


「なぁ、リリー、セブ。クリスマス休暇にオレんち来ない?」
「は?」
「え、いいの!?」


 ぽかんとオレを見たセブに対し、リリーは嬉しそうに顔を輝かせた。意味が掴み切れていないようなセブのために、オレは笑いながら説明を始める。


「こないだ親から手紙が来てさ。今年のクリスマスは帰ってこい、て。友だち連れてきてもいいって言うから、リリーとは夏休みにって約束してたけど早いほうがいいかなと思って。どう?セブもどうかな。今回はジェームズたちはお預けにするし」


 2人が来るならね。そう言ってオレは2人を窺う。リリーは前々から考えていたし、セブは今の思い付きだけど来てくれるなら大歓迎だ。ジェームズもシリウスもリーマスもピーターも大好きだけどこの2人も大好きなんだ。それは絶対に譲れない。


「私はもちろんオールオッケーよ!嬉しいわ!!」
「よかった。寮に帰るとどうも言うの忘れちゃうんだよな。で、セブはどうよ?」
「・・・・・・僕は遠慮する」
「えー!」


 難しそうな顔で眉を寄せて、セブはそう言った。思わずオレのあげた不満そうな声に更に眉間のしわを深くする。リリーが残念そうに肩を落とした。


「なんで?やっぱりオレら女子の中に男子一人っていうのは、気まずいかな」
「まあ・・・それもあるが・・・。僕は、スリザリンの先輩に今年のクリスマスはお呼ばれしているんだ。1年のころから良くしてもらってる先輩で、すでに約束してしまったんだ。だから、行けない」
「スリザリンの先輩?」
も知ってるだろう?マルフォイ先輩だ。去年羽ペンを返せってお前が詰め寄った先輩だ」
「げ」


 あ。あの人か。オレの苦手そうなタイプだ。


「気難しい人ではあるが、僕には目を掛けてくれているんだ」
「・・・そっか。じゃ、しかたないね」
「そうね」
「・・・・・・・すまん」


 リリーと二人して頷く。セブは本気ですまなそうに顔をしかめてオレたちを見た。いいよいいよ、なんてオレは笑う。そっかー。スリザリンか。そうだよな、今さらだけどセブってスリザリンなんだよな。忘れてた。普段全然意識しないから。


「じゃ、セブ。次は絶対オレんち来いよな」
「ああ」
「約束!」


 セブがふっと笑った。うわぉレアだ。久々だ。なんか嬉しいな。

 その後、寮に戻ってから手紙を書いて、翌日ふくろう便で家に送った。内容は「家に帰るよー。今年は女の子を連れてくよー」とか。すると帰ってきたのは、「その子お前の彼女か?やるじゃねえか妹よ☆」というアオト兄からの返事だった。なんでだよ!!オレ女だよ!!だから親友だってば!!














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091031