「・・・ん?・・・は!?な、!?」 「・・・・・・・・あ、セブだー・・・」 「だ、大丈夫か!?」 通りすがりのセブに慌てて聞かれるほど、オレ、そんなにひどい顔してんのか。 34. 「なんでもいいから何か食え!何か!!」 「ううう、喉通らないんだよ」 「いいから!!」 いいからじゃねえよ・・・。 オレのカップに勢いよく紅茶を注ぐセブ。空だったオレの皿に次々とベーコンやらトーストやらフルーツやらを乗せていくのはリリーだ。2人のおかげでオレの目の前に、しっかりと朝食のお皿が用意されている。けど、だから、食べたくないんだって。 「だめよ、!食べなきゃ!!倒れちゃうわ!」 「だ、だって・・・」 「緊張しすぎだってば、」 苦笑しながら現れたのはリーマスだ。リーマスはその手に持っていたグレープフルーツのかけらを問答無用でオレの口にツッコむ。 「大事なクィディッチの初試合なんだしね」 「そうよ、リーマスの言う通りよ!」 「もっともだな」 セブとリリーにまでそう言われて、オレはとりあえず口の中にあるグレープフルーツを処理しようと必死で飲みこんだ。大きくため息をつくと、セブが珍しいものを見るような顔でオレを見る。 「お前でもそんなに緊張することがあるんだな」 「・・・うん」 「だっていくらキーパーとはいえコントロール力皆無なのに選手になっちゃったもんね」 「そ、それを言うなよ!」 さらりと言うリーマスの頬にはガーゼ、腕には白い包帯が巻かれている。これはこないだ帰ってきた時にしていたものだ。夏休みの時よりはひどくないけれど、オレたちはやっぱり大騒ぎした。それでもリーマスは結局「犬にかまれたんだって」と言ってはぐらかした。 ・・・もうそれが嘘だってことくらい、わかってるんだけどな。 「ところでジェームズは?」 「シリウスとピーターつれて『敵情視察!』とか元気に叫んでスリザリンを見に言ったよ」 「なんであいつは緊張しないんだよ!!」 「そりゃまあジェームズだもん」 普通にそう言ってリーマスは自分のトーストをかじった。相変わらずオレはリリーとセブに用意されたお皿の前で唸るだけだ。それを見かねたセブが、突然、トーストにバターを塗りたくってオレの口の中にツッコむ。お前らオレをなんだと思ってんだよ!? 「むぐ!むぐぐ!」 「食え!!」 「むーぐー!!」 「食え」 「・・・・・・」 真っ黒なオーラを放ち始めたセブに、オレは降参しておとなしくトーストをかじり始める。あーあー。試合出たくねーなぁ。 「大丈夫だ」 「むぐ?」 「お前は・だろう。なんとかしてみせるやつだ。僕は知ってる」 「そうよ、。応援してるわ」 「うん。頑張ってね、。みんなで観客席にいるよ」 セブとリリーとリーマスの揃って3人に声援を受けて、オレは笑った。 「ん。さんきゅ。頑張るよ」 ・・・でも今日の対戦相手ってスリザリンなんだけど、いいのかよセブ・・・? * 「さて、みんな」 真紅の試合用ローブに着替えたオレたちは、更衣室でクライス(先輩はつけなくていいよと言ってくれた)が話しだした言葉に耳を傾けた。ジェームズはものすごくウキウキとしてる。対照的にオレはなんだかげっそりしてきた。 「今日のこのメンバーは最高のチームになると僕は信じている。もちろん、あのグリフィンドール黄金期にすら引けを取らないくらいにね。そのくらい、僕はこのチームに自信がある。黄金期が終わっただなんて言わせない。これからもずっと、グリフィンドールの黄金期の歴史は続く」 うんうん、と頷く人、ニヤリと笑う人、反応は様々だ。そんなチームメイトみんなを見渡して、クライスは力強く笑う。 「言いたいのはこれだけだ。―――勝とう」 その言葉にみんなで拳をぶつけ合う。 さあ、試合が始まる。 * 「レディース・アンド・ジェントルメーン!!お待たせいたしました皆様!いよいよ始まりますグリフィンドールVSスリザリン!!」 箒に乗ってフィールドに出て、大歓声とともに聞こえてきた聞き慣れた声にオレは思わずむせかえった。マクゴナガル先生の隣で実況中継をしているのは、なんとまさかのシリウスだった。はあ!?お前なにやってんの!!っていうかお前が中継したら、明らかに偏ったものになるじゃん!!・・・だからこそのマクゴナガル先生か。 ジェームズを見れば、彼もさすがに知らなかったらしく、やられた!みたいな顔をして笑って手を振った。意気揚揚とグリフィンドールとスリザリンのチームの紹介をしながらシリウスも手を振る。そこからほんの少し離れたところに真紅の横断幕を掲げたリーマスとピーターがいて、リリーが座っていた。ついでにケイシュウとメイファも見つけた。 「ひゅー、すごいじゃないか!」 ジェームズが嬉しそうに笑う。リーマスとピーターが掲げる巨大な横断幕にはグリフィンドールのライオンが描かれていて、金が日の光でできらきらと輝いていて。風ではためくたびに色も図柄も刻々と変化していく。あいつらの仕業だよ、明らかに。得意げなシリウスとリーマス、ピーターの笑顔が見える。 「すっげぇ・・・!勝つぞ、ジェームズ!」 「ああ、もちろん!!」 最後にもう一度、ジェームズとハイタッチして。 それからオレたちは各自のポジションに着いて試合開始のホイッスルを待った。 審判の銀の笛が、高らかに試合の始まりを告げる。 ―――さぁ、勝つぞ!! ←BACK**NEXT→ 090710 |