「まったくしょうがないなぁは!こっちだって言ったじゃないか☆」
「ごっめーんオレってばドジッ子ちゃん☆」


ふざけんなこのノーコン――――――――――――――!!!


 シリウスの怒声がフィールドに響き渡った。




 31.




「この野郎!てめぇあぶねえんだよ!!」
「もー、シリウスったらそんなに怒ってたら眉間のシワが消えなくなっちゃうゾ☆」
「可愛子ぶっても無駄だからな」


 ちっ。口の中で舌打つと思いっきり頭をひっぱたかれた。なにすんだよ。苦笑した リーマスがまあまあ、とシリウスをなだめた。箒を手に立つオレとジェームズは動きやすい恰好で、ついでに言えばすこし離れたところにはグリフィンドール・クィディッチチームの先輩方が練習している。

 つまり今、スカウトされたオレたちはポジション決定も兼ねて練習に参加させて貰っているのだ。


「大丈夫だったかな、ルーピン、ペディグリュー?」
「あ、はい!」
「大丈夫です!」


 元気良く返した声に安心したように笑うクライス先輩は、それからオレとジェームズを見た。


「ええと、さっきのは失敗と言うことにしておこうか?
「・・・すみません」
「じゃあもう一度箒に乗って上がろうか」


 指示にしたがって箒に乗って空に上がる。風に乗る。上にも下にも広がる真っ青な世界。やっぱりオレ、飛ぶの好きだ。


「じゃあ、いくよー」


 クライス先輩の投げたクアッフルを軽々とキャッチして、ジェームズはそのままオレへとパスする。それを難なく受け止めて、それからオレは肩を上げた。


!こっちだからね!!ここだからね!?」
「わかってるっ―――でぇい!!」


 ぽーん。


「・・・」
「・・・・・・」
・・・・・・・・・・・・


 ジェームズのいたほうと真逆のほうに大きく弧を描いて飛んでいくクアッフルを見た全員が沈黙した。いち早く動いたジェームズは、真逆にいたにも関わらず地面に落ちる前にそれを受け止めた。うん。すごいね。でも。


 ・・・・・・・なんでオレ、こんなにコントロール悪いの?


 さっきシリウスが怒鳴った原因。それは、練習中のオレらのところに様子を見にきた3人の方に、とんでもない勢いでオレの投げたクアッフルが飛んでいったからだ。ケガはなかったけど。もちろん、本来投げる相手だったジェームズはといえば彼らからは遠く離れた場所にいたんだけれども。


「・・・うーん・・・調子悪い?」


 優しいクラレス先輩はそう言う。すみませ・・・っ!!


 けれどそれから数時間、オレの投げるクアッフルはことごとくとんちんかんな方向に飛んでいったのだった。とんでもない方向に飛んでいくそれを全て見事に受け止めるジェームズはすごい。すごいのだけれど。・・・ねえ、オレの立場は!!??


「・・・・・・あの子、方向音痴なのかしら・・・?」
「アオトの妹だろ?そんなバカな」
「いやだってこんだけプレイしてて一度もまともに投げられてないぞ」
「でもスピードはあるわね。この中で競ってもかなり早い方じゃない?」
「力もあるし、動体視力もよさそうだよな。箒さばきもなかなかじゃないか」
「・・・でも、どうしてあんなにコントロールが悪いんだ・・・??」


 聞こえてます先輩方!


 途中まではオレの投げたクアッフルを次々とキャッチするジェームズへの評価をわいわいと言っていた先輩方が、途中から難しそうな顔でオレについて議論しているのが全部丸っと丸聞こえだ。なんかところどころ褒められてるような気がしなくもないけど大半はオレのコントロールに対する疑問だ。オレが知りたいわ!


。いいかい?こっちだよ、ここをちゃんと見て」
「っ、うん」


 ジェームズの示すその手のひらを見つめて、というか睨んで、オレは一回深呼吸をしてから身構えた。よし。・・・なのに。


「なんでそっちに行くんだよ――――――!!??」


 遥か彼方に吹っ飛んでいくそれを追いかけて飛んでいくジェームズの後ろ姿を見ながらオレは頭を抱えた。なんで!?

 ひらひらと手を振るクライス先輩に気がついて、オレはジェームズに呼びかけてから地上へ降り立った。リーマスやシリウス、ピーターはオレの二次災害に合わないように遠くで練習を見学している。・・・悪かったな、巻き込みそうで。


「お疲れ。そろそろ暗くなってきたから、もう終わりにしよう」
「はい。・・・あの、」
「ん?」


 クライス先輩を見上げて、オレは少しためらいながらも聞く。


「・・・・・・・オレ、戦力になりますか?」
「・・・そうだね、」


 少しだけ思案気に唸ってから、クライス先輩はオレを見下ろす。その後ろからぞろぞろと先輩たちも集まってくる。


のスピードと身軽さ、体力は買ってるんだ。かなり早いよね。それにクアッフルを投げてるのを見てると分かるよ、結構パワーもある。問題は分かってるだろうけどコントロール力、かな」
「すみません・・・」
「でも戦力にはなるよ。そうだなぁ、ねえみんな?今のを見てて、とジェームズ、彼らの合うポジションってどこだと思った?」


 オレの後ろに軽い音をたてて降り立ったジェームズを見てから、クライス先輩はそう言ってチームメイトを振り向いた。先輩たちが順々に口を開く。


はキーパー、ジェームズはシーカー」
「オレ逆。がシーカーでジェームズがキーパー」
がキーパーでジェームズがチェイサーって思ったわ」
「いや、がキーパーでジェームズがシーカーだろ」


 ざわざわと言う先輩たちを示して、クライス先輩は笑う。


「な?しっかり戦力になるから、大丈夫だよ。ちょっと相談してから君らのポジションについては連絡するから。今日は帰っていいよ」


 オレはジェームズと顔を見合せて、それから声をそろえて言った。


「「お疲れ様でした!!」」




 それから数時間後、寮でクライス先輩に言い渡されたオレとジェームズのポジション。それは、

 オレがキーパーで、ジェームズがシーカー。


「「よろしくお願いします!」」


 そうして、オレたちはグリフィンドール・クィディッチチームの仲間入りを果たしたのだった。




















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090530