「ハッピーハロウィン!アンド・トリックオアトリート!!!」 「喰らえ百味ビーンズ悪味セレクト」 「え」 「嘘だよ。ハイ、カップケーキ」 14. 昨日の真夜中(もちろんコッソリ)厨房にお邪魔して作らせてもらった大量のチョコチップカップケーキ。ふっふっふ、もちろんしっかりと用意した。お菓子を忘れてイタズラを食らうなんて真っ平だ。だってあいつらは(オレも含めて)イタズラに関しては一流だ。 ちなみに厨房の場所はアオト兄に聞いておいたおかげでしっかりと頭に叩き込まれている。ついでに言えば抜け道や部屋の数々も。けど全部は知らない。アオト兄曰く、「自分で探すのも勉強だ」だそう。なんの勉強だよ。 「えー、にイタズラしたかったのになぁ」 「リーマス怖い。笑顔の下の黒さが隠しきれてないよ。怖い怖いだから怖いってば!」 なにするつもりだったんだ、お前。 「!」 「ハッピーハロウィン!!」 「トリックオアトリート!!!」 「はいはいはいはいトリートトリートトリート」 「「「ええええ」」」 連続して手を突き出したジェームズにシリウスにピーター。すかさず放り投げるカップケーキ。途端に彼らは残念そうに眉を下げて不満の声を上げる。てめえら。 「ところでこっちも!ハイ、トリックオアトリート!」 「もちろんTreat!おらよ!!」 投げられたシリウスのキャンディをキャッチ。リーマスはハニーデュークスのチョコレート、ジェームズは・・・・・・・得体の知れない蛍光ピンクできらきら輝いているがおそらくクッキー(後で誰か捕まえて食べさせてからにしよう、自分で試すには怖すぎる)、ピーターは本人によく似たマシュマロ(失敬。けど似てる。このもちふわ感が)だ。一気に増えたお菓子にほくほくしながらオレは大広間を歩く。 「いたずら用意してたのになー」 「どうする?問答無用でやるかい?」 「あ、でもこのケーキ、おいしいよ!」 「のことだから何か入ってると僕は踏んでたんだけど・・・大丈夫のようだね、ピーター?」 「え!?僕、毒見だったの!!??ちょっとリーマス!!」 ・・・物騒かつ失礼な言葉が聞こえてきたけれど・・・聞こえなかったことにしよう。断わっておくが、オレは今回はマトモなケーキを作った。呪いもかけてないし薬だって入れてない。全く、それくらい信用してくれてもいいのに!・・・本当は、ただ単に作ったのが真夜中だったからイタズラをしこむような余裕がなかっただけだけど。 「・!!」 「んあ?」 「トリック・アンド・トリートぉおおおっ!!」 「・・・・・・・・・・・・・・・・」 目の前に立ちふさがったディサーダとその愉快な仲間たちを見て、オレは思わず言葉を失った。1,2,3,4,5,6人。・・・・・・6人?残っているケーキをちらと見る。リリーには部屋で渡した。女子数人にも持ってかれた。「」の名を知ってるやつやアオト兄の知り合いにも持ってかれた。残りは。1つはセブだ。前には6人。―――・・・ええと・・・。 「――――えっと」 「ん?なに、用意していないのか?」 「いや、その、あの、えーっと・・・」 「あれ?もしかして、もう足りないのかい?」 「ジェ、ジェームズ!」 からかうような声音に慌てる。ディサーダはスリザリンだけど、この前の飛行術の授業の時の勝負のおかげで、妙なライバルのような関係になっていた。ケンカを売ってくるのは相変わらずだけれど、ちょっぴり友好的な感じ。・・・もちろん他のグリフィンドール生に対しては普通のスリザリンと同じような反応らしいが。 けれど、そんなオレとジェームズはともかく、特に、誰よりもシリウスが、突然過敏に反応した。オレに声がかけられたその時から、ぐっと押し黙ったのは気づいていたけれど。いつ爆発するか分からない彼にそっと気を配りながら、オレはディサーダとしゃべり続けた。 「ならイタズラされても仕方ないな?」 「―――――――――――ふッ」 瞬間的に浮かんだオレの不敵な笑みに、余裕だったディサーダが怯んだ。そのとき、オレは即座に6つの小さな包みを取り出し完璧なコントロールで彼らに投げた。驚異的なスピードで飛んでいくそれらは、愉快な仲間たちの2人のあごにクリーンヒットし(すぱかーんという小気味よい音が響いた)、1人の喉にブチ当たり(直後彼は吐いた)、3人の顔面に直撃した(見事に彼らは地面に頭突きした)。そしてディサーダの頭部に命中して彼はそのまま地面と熱いキスを交わした。 「ふん!なめんなよ、オレだってしっかりと用意してたんだからな!」 多めに作っといただけだけどな! そう言ってびしぃ!とポーズを決めれば、ゾンビのようにずるずると這い上がるディサーダ。後ろでピーターがひぃ!だとか情けない悲鳴を上げた。シリウスはちょっと置いといて、リーマスはとりあえずもう完全なる傍観者だ。ジェームズは面白そうに見物してるし。あのなぁ! 「ふ・・・・・・ふふふふふふふふふふふ」 「・・・気味悪いぞ、なんだよ?」 「お前、気づかなかったのか・・・?オレがさっきなんと言ったのか」 「?・・・トリック・オア・トリート・・・お菓子くれなきゃ悪戯するぞ、じゃ・・・」 言いながらオレは最大のミスに気づく。―――しまった! 「・・・・・・・・・アンド・・・・・・・・!!!」 「もう遅い!」 ディサーダが数秒前に言った言葉。それは「トリック・アンド・トリート(お菓子くれても悪戯するぞ)」―――むしろ、「お菓子ももらうが悪戯もさせてもらうぜ☆悪く思うなよ?」的な・・・。感じ、だったような・・・。 「うぇっ、ちょっとオレ、ちゃんとあげたじゃんよ!やめろ――――――!!!!」 「やっちまえ野郎ども!」 オレの制止の声は完全に無視され、ディサーダは意気揚々と右手を高々と振り上げて叫んだ。お前どこのチンピラだよ!「おぅ!」だとか妙に声をそろえて、愉快な仲間たちもディサーダにならう。にぃと邪悪な笑みが彼らに浮かぶ。・・・くっ、さすがスリザリン。 「Wingerdium Leviosa!」 「ッ・・・え、」 上を振り仰げば、降ってくる大量の緑色の液体。このまま黙って食らってたまるか!!慌てて床を蹴って避ける。緑色の液体は、そのままオレのいた場所にどべちゃあ、と落ちた。・・・怖。思わず安堵の息をつく。しかしそれもつかの間、その液体はうぞうぞと動いてオレの方へ移動してくる。 「げ!?何コレ!!」 「特製呪いのスライム。どうなるかはつかまってからのお楽しみだ」 「悪趣味なモン作るな―――――――――っっ!!!」 悲鳴をあげて逃げる。追ってくるスライム。・・・なんか速度上がってね?オレだって、足の速さに位は自信がある。だけど、着実に狭められている距離。いやだあああ!!! 「リリリーマス!HELP!HELPME!!」 「あ―――、・・・・・・」 ふと気づけばリーマスは、ピーターと一緒にシリウスの腕をがっちり押さえて、彼の暴走を抑えていた。傍観者には違いないけど。それを見て一瞬ためらうけれど、スライムはそれでもオレを追ってくる。追ってくるんだよ!!たまらずオレはリーマスを引っ張った。 「・・・・・・。ごめんね?」 「え――――」 刹那にリーマスにそう言われ、呆然とするコンマ数秒。―――リーマスは優しく、そっと、オレを緑色のスライムのほうに突き飛ばした。 「ッ、リーマス――――――――――――――ッッッッ!!!!!」 オレの大絶叫が響く。にっこりと笑うリーマスも見えた。ああ・・・黒いオーラが迸ってるよ・・・。それを最後に、オレの意識はブラックアウトした。 ←BACK**NEXT→ 090223 |