「キャアアアアアアアアア!!!????」
「うわあああああああああ!!!!???」


 一際大きな雷が上空で炸裂した。爆発音に近い爆音が轟き、観客席の生徒たちが悲鳴を上げる。オレまで思わず悲鳴を上げた。心臓が早鐘を撃っている。


「・・・ジェームズ!!?」




129.




「ジェームズ!!!」


 その場にいる全員が固唾をのんで見守る。あまりにも眩しい光に、空を駆けていたシーカー二人の姿が霞んで見えなくなる。静まり返った場内に、雨と風の音だけが響く。

 そして、次の瞬間。


「・・・!?あれは!」
「おい、まさか・・・!」


 悠々と、右腕を高く高く突きあげながら、土砂降りの雨の中をゆっくりと降りてきたその、赤いユニフォームの姿に。


「――――ッッよっしゃあァァァァァァ!!!!ジェームズ・ポッターです!ポッターがスニッチを取りました!!!!」


 シリウスの絶叫が聞こえ、同時に赤色の弾幕を持った生徒たちの歓声が爆発する。満面の笑みで降り立った我らがキャプテンの姿を見て、オレは。


――――今年こそ、優勝できるかもしれない。


 そう思いながら、箒から降り立つと、全速力でジェームズのもとへ駆け寄った。






*





「・・・・・・んっ」
!みんな、が目を覚ましたよ!」
「ピーター・・・?」


 嬉しそうなピーターの声。ふらふらする体を無理やり起こしてあたりを見回すと、いろんなところに包帯を巻いたグリフィンドールチームとハッフルパフチームがずらりとベットに並べられていた。みんな笑顔でオレを見る。


「起きたな!お疲れ、
「あ、うん・・・」


 替えの包帯と水を持って、シリウスが顔を出した。ぱちくりと目を瞬かせている間に、テキパキとベッドサイドに座ってオレの腕を取る。


「え、これどういう状況」
「落雷のなかのクィディッチで、ほぼ全員がどっかしら怪我をしていたから大事を取って全員1日入院だとさ。お前もな。ったく、心配かけんじゃねーよ」
「・・・オレも?」
「お前は過労。倒れたんだよ、覚えてねーの?エネルギーを吸い取られ過ぎているだとさ。心当たりは」
「・・・・・・・・・・・・げ」


 心当たりがあるとすれば、チーム全員にかけた雷・雨避けの術のせいだ。っていうか上手くいってたのか、気休め程度だと思っていたけど。


「やっぱりな。グリフィンドールチームの方が怪我の程度が少ないし軽い。お前のおかげだろ」
「マジで・・・?」
のおかげだよ、ありがとう」
「ジェームズ!」

 
 隣のベッドからひょっこり顔を出したジェームズの頭には包帯が巻かれている。


「あの雷のなか、僕らがこの程度のケガで済んだのは奇跡みたいなんだってさ。に助けられたんだよ、僕らは」
「その分、力を使い果たしてテメェが倒れてちゃ世話ねえんだよ、バカ」
「・・・・・・・え、ほんとに?」


 シリウスの呆れた声が何か言ってるけど、聞こえない。本当に上手くいったのか。あんなに才能も力も無くて、とりあえず形だけでもと勉強して、練習はしていたけれど、大した成果も結びつかなかったのに。成功した?


「大丈夫。、僕らは君に助けられたよ。ありがとう」
「・・・・・・、うん」


 泣きそうにくしゃりと歪めた顔を見られないように、枕にそのまま、ぼすんと埋もれた。シリウスの大きな手がぽんぽんと頭をたたく。あ、だめだ泣きそうだ。嬉しい。


「ちょっと、安静にしてちゃんと寝てなよ?ジェームズも!」 
「うわリーマスに見つかった!」
「見つかったじゃないよ、ジェームズが一番重症なんだよ!?死んでたかもしれないんだから!!ちゃんと寝て!!」


 リーマスの怒る声に、喉の奥から少しだけ笑い声がこぼれた。


 










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130812