下はどうだか知らないけど、上空の雨は凄いものだ。風と雨とが叩きつけるように吹いてきて、バランスを取るのでいっぱいいっぱい。だけどすぐ近くをまるで僕らをからかうようにスニッチが飛び回る。ハッフルパフのシーカーの2年生君は、小柄な体で凄いテクニックだ。負けてられるか。 「――――!」 遥か下で、相棒が僕の名を叫んだような気がした。 128. 「!」 「っ、・・・!」 セーブしたクアッフルを放り投げると同時に反射的に箒から乗り出した。もう一つのクアッフルがゴールに迫り、一つゴールが決まる。でも連続得点なんかさせない。スピードをつけた箒の上から思い切り柄を蹴って一気に飛び出す! 「なっ・・・!」 体一つでクアッフルを受け止めた瞬間、飛んできた自分の箒を掴んだ。雨で滑ってつかみづらいけど、無事箒に戻れたことに今更ながらホッとする。ギルのフォローでクアッフルをパスする。 「スッゲェ!なんだ今の!!奇跡のセーブ、奇跡です!得点は許しましたが、20対10でグリフィンドールのリード!!」 あ、やべぇぐらぐらする。さすがに無茶をし過ぎたかな――――冷たい雨が体力を奪っていく。ここまで普通じゃないプレイでセーブしてるんだ、疲れるのも当然かもしれない。けれどハッフルパフも確実に強くなっていることがよく分かる。 「雨が酷くなってきたな・・・怪我はないか」 「ああ、ギル、サンキューな―――」 「無茶過ぎんだろ。なんだよ今のセーブ」 「褒めろよ」 「成功したからいいけど、失敗したら落ちてるぞお前。気をつけろよ」 「おう」 雨の中、弾丸のようにアスターが飛んでいくのを見て、ギルがその後を追ってオレから離れる。みんな疲れていく。あまり長続きしても良いことないよな―――タイミングよく、近くを飛んでた選手がくしゃみをする。風邪もひくよな、そりゃ。 「・・・ジェームズ」 頼むよ。 * 視界が壮絶に悪い。前にも同じような嵐の日があったよな―――ギルがあのときは、眼鏡に防水魔法をしてくれたんだっけ。同じ魔法はかけておいたけれど、それでもやっぱり見えづらい。あと怖いのは、雷だ。 フィールド横の避雷針に雷が落ちていくわけで、割れるような音がひっきりなしに響く。耳がおかしくなりそうだ。鼓膜がびりびりと震える。もちろん、フィールド内にはある程度安全を保てるような魔法が先生たちによってかけられているけれど、それでも近くで光が炸裂すればビビる。 「ぐっ!・・・くそ!」 風に煽られて思わず目をつぶった瞬間、スニッチが姿をくらました。ああもう!箒の柄を掴む手が痺れてきている。あまり長引くとヤバい。 「わあっ!」 ハッフルパフの小さなシーカーが吹っ飛ばされる。思わず腕を伸ばして彼を受け止めるけど、おかげで2人揃って吹っ飛ぶことになった。箒だけは手放さないようにぎゅうっと腕に力を込める。 「す、すいませ・・・!」 「気にするなよ後輩君。箒は手放すなよ」 謝りながらも鋭い瞳が周囲を見渡している。本当に優秀な選手になりそうだなあ、なんて呑気に考えるけれど、目の端に金色の姿が入った瞬間僕は身を翻した。 「!」 すぐに気づいた彼が追っかけてくるけれど、箒一つ分の間隔は絶対に保ってみせる。雨が強い。風も強い。気を抜けば見失う! 「届け!」 大丈夫だ届く、捕まえろ! その瞬間、視界が真っ白に染まった。 ←BACK**NEXT→ 130812 |