「ハイ、家の魔法の地図の資料。古いものだから、正直信憑性には欠けるんだけど・・・それでもいいなら」 「なるほど・・・ここをこうして・・・この魔法は」 オレが持ってきた資料を見るなりぶつぶつと呟きだして、ジェームズは完全に自分の世界に没入したようだった。こういうときのこいつは邪魔しない方がいい。そう目配せしあって、オレたちはそっと彼から離れた。 126. 魔法の地図作りは基本的にジェームズが主導してやっている。その間、シリウスやリーマス、ピーターとオレは相変わらずに小さな悪戯を提供し続けた。クィディッチの試合も近づき、毎日が本当に早く過ぎていく。そんな中でオレは時間を見つけては自分で呪術の勉強をし始めた。 「真夜中にいつも、なにやってるの?」 「あ、ごめんリリー。起きてたのか」 「ええ」 リリーに事情を話すと、彼女は興味津々でオレの修行を手伝ってくれた。とはいっても資料や教本はすべて日本語だから、術の精度を試してくれたり他の授業のレポートを手伝ってくれたり、くらいだけれど。でも嬉しかった。さすがは親友。 「ところでリリー、最近ちょっとジェームズに優しいよな?」 「っ!?あ!!キャアアアアア!!?」 「うわああああああちょっと待ってリリー落ち着いて動かないで!」 レポートを書くために羽ペンを用意しようとしていたリリーは、思いっきり動揺して肩を跳ねさせてインクを盛大にぶちまけた。おろおろする間にインクが染みていきリリーの服に垂れて、見かねたオレは杖を振って綺麗にする。息を切らした親友の真っ赤な顔に思わずオレはにやにやと笑みを浮かべた。 「どーしたのさ、あんなにジェームズを嫌ってたのに」 「・・・なんでもないわよ。変わってないわ」 「顔が赤いよリリー」 「うるさいわねもうっ!じゃあ聞くけど、貴方こそ最近シリウスと仲良しなんじゃないのー?」 「え」 思わぬ反撃にビシッと固まる。攻守逆転とばかりにリリーがにやりと笑ってオレを見る。ああ可愛いなあ、ってそういう場合じゃなくて! 「そんなことない、いつも通りだよ」 「そう?なんだか前より、シリウスとの距離が近いような気がするんだけど?」 「きょ、距離??」 「あら、気づいてないの?夏になにかあったのかしらって思ってたけど」 そんなことを言われても、シリウスはずっと隣にいるような存在だったし、特に変化は感じなかった。そういえばちょっと優しくなったような気がしなくもないけど、それってただ単にシリウスのキレやすい単純熱血馬鹿なところが収まっただけなような気がするし。 「はどうなの?シリウスと、リーマスのこと。どう思ってるの?」 「・・・え、シリウスとリーマス?」 「二人とものことが気になってるわよ」 「・・・・・・・・・・・・え!!?」 本気で驚いて口が開いたまま塞がらない。まあシリウスに関しては何度かからかわれてきたことがあるけど(好きとか以前にあいつ絶対オレのこと女として見てないし)、リーマス!?リーマスが!? 「んなわけないじゃん!?なんでオレ!?」 「だからいつも言ってるでしょ、は可愛いの!綺麗なの!自覚して!」 「いやそんなこと言われても」 「で!?はどう思ってるの!?」 詰め寄られる。なんでこんなことに。たまには恋バナもいいかななんて思ったオレはバカだった!そもそもこういう話題は苦手なのに!恋バナ大好きなリリーに口で勝てるわけなかったバカだったしまったどうしよう! 「・・・ふ、二人とも大事な親友だよ」 「ふーん?でも、シリウスとは手を繋いだこともあるでしょ?」 「っ!!?あ、あれは不可抗力でっ・・・!」 「へーえ本当にあるんだーあ」 やられた。くっそ、これだからリリーには敵わない! ←BACK**NEXT→ |