「あっ、セブ・・・」


 ふい、と視線を逸らされて。彼はそのまま、緑のネクタイをした同級生たちと去っていく。・・・・・・やっぱり、もう話すことは出来ないのかな。





 124.





「・・・・・・・」
、おーい」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
!!」
「ハッ!?ん!?な、なにシリウス」
「なにぼさっとしてんだよ、移動だ」


 シリウスにベチンと叩かれた背中が痛い。まとめた教材を手に、オレは慌てて立ち上がった。ジェームズとリーマスとピーターが、もう先を歩いている。
 すぐ横を歩くシリウスを見上げる。もう頭一つ分も離されてしまって、もう追いつけないんだろうなあとぼんやりと思った。元から長身のこいつには、一度も追いつけたことなんてなかったけれど。


「・・・シリウスは、いいなあ」
「は?」


 なんだお前、とばかりに怪訝な顔が見下ろしてくる。


「背は高ぇし、力はあるし、魔法はうまいし、頭は良いし。ちょっとバカだけど」
「オイ褒めてんのか貶してんのか」
「いいなぁ」


「・・・・・・・おい、ジェームズ、リーマス、ピーター」
「えっおいシリウスちょっと待っ」


 オレの静止の言葉を完全に無視したシリウスは、そのまま前を歩く3人に声をかけた。振り向く彼らに間髪入れずにシリウスは言葉を続ける。慌てて止めようと長身の腰を掴んでも無視。だからやめろっつってんだろー!!


はオレが羨ましいんだと。背が高くて魔法がうまくて頭が良くて」
「は?パッドフット、それ本気で言ってるとしたら耳鼻科言ってきた方がいいよ」
「ムーニーに同意。確かに腹立つほど君の外面はいいけどがわざわざ羨ましがることはないじゃないか」
「え、僕は、だっていいところはいっぱいあると思うけどなあ・・・」
「リーマスとジェームズは一言多いわ」


 ぐい、と腕を引っ張られて顔を上げさせられる。気が付いたらみんなオレよりずっと背が高くて、体格も違くて、だけどそれでも彼らは。


「底抜けにアホで明るくて煩くてアホで」
「だけど人一倍の努力家で負けず嫌いで」
「女の子だってことを忘れるくらい、かっこよくてさ」
「強くて元気なは、僕には憧れだよ・・・!」


「・・・・・・アホで、悪かったな」


 ないものねだりしたって意味がないのは分かってた。だけど欲しいのは、大切なひとたちを守る力で。そのためには強くなりたくて。だからシリウスが羨ましかった。
 でも、オレにしかできないこと。オレにできること。それは。


「――――ありがとうお前ら」


 オレ、決めたよ。





*





「セブルスさんっ」
「・・・レギュラス」


 同学年の大嫌いなアイツを少し幼くして、もっと素直にして作りなおしたら出来上がったような後輩は何故か入学当初からずっと僕に懐いていた。ただ、なんだかよく分からないうちに問題を起こしているところがあって、トラブルメーカーなところは兄を受け継いでしまったらしい。


「次の会合は出席されますか?」
「・・・ああ、そのつもりだ」


 会合とはスリザリンのなかでもごく一部の人間のみしか参加できない秘密集会のことだ。不定期に行われているそれは、『死喰い人』と呼ばれる闇の一派が主催しており、現在の7年生にもその幹部がいるらしいが、詳細は分からない。


「ルシウスさんが今回は主催しているそうですよ」
「そうか」


 ルシウス・マルフォイ。3年前に卒業した彼が主催するときは、大体が現在のホグワーツの様子の報告会だ。大した内容ではない。
 『死喰い人』主催の秘密集会とはいえ、学生ばかりのためにそこまで重要なものがあるわけではない。基本的には卒業する優秀なホグワーツ生を闇の勢力に引き入れることが主な目的だ。もしくは、親が『死喰い人』である子供たちが所属しているか。その程度だ。ホグワーツで目立つわけには行かない。


「そこで、今回の会合で、セブルスさんに聞きたいことがあるんだそうです」
「・・・?」


 レギュラスの灰色の瞳が僕を映して鈍く光る。その瞬間に嫌な予感がぞわりと背中を駆け巡る。


について」


 ごくりと息をのむ音が、嫌に大きく聞こえた。























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