「う、う、うぇぇええぇぇ・・・・・・・・」
「落ち着いてよ、希望する教科を取れたんだから」
「へ、へ、変身術のクラスの人数、めっちゃ少ない・・・・・・・」


 リーマスが横で宥めてくれるけれど、そんなの耳に入らないくらいにオレは震えていた。人数少ない=集中砲火じゃん!うわああああああ!






 123.





 『闇祓い』になるための教科はすべて選択できた。そこは問題じゃない、いや少し前のオレにとっては重大な案件だったかもしれない、でも今は違う。問題は優、もしくは良をとっている生徒しか授業にいないってことだ!そんなのがほぼ全教科で、気が遠くなりそうだ。


「大丈夫だよ、。君ならなんとかなるよ。今までなんとかなってきたじゃないか」
「でも、リーマス、オレ・・・」
「大丈夫だよ。ね?それにほとんどの教科で僕ら4人は一緒だ。ピーターは残念だけど・・・」
「あ・・・そ、だね」


 『闇祓い』志望のジェームズ・シリウスとは必然的に同じ授業だし、教師志望のリーマスも指導希望教科以上の受講が必要だから、当然のように3人とは同じ授業だ。ピーターは3つくらい一緒。そういえばリリーはどうなったんだろう。・・・あと、セブも。


「なにやってんだ、?授業行くぞ、ほら」
「・・・シリウス・・・」


 無造作に腕を取られて、まだ混乱状態にあるオレはふらふらとそのままシリウスについていった。横からひょいとジェームズが顔をだして、リーマスが笑いながらついてくる。


もたまには弱音を吐くんだねー」
「・・・ジェームズ」
「あといつもなら、ピーターがついて来るんだけど。ま、こればかりは仕方ないね」
「ピーターは?」
「魔法生物飼育学だよ。良をとれたのがそれだけだったらしい」
「そうなんだ・・・」

 
 いつも後ろをくっついてきていたピーターを思って少し寂しくなる。けど、寮に戻ればいつでもいるわけだし、同じ授業もある。そんなに悲観することもないかもしれない。


「そんなことより、聞いてくれよ!ちょっと僕、やりたいことがあるんだけど!」
「やりたいこと?」


 イキイキしたジェームズの言葉になんだか素直に喜べず、またなにか企んでいるのだろうとそっちを見る。


「これさ」


 ジェームズがチラリと荷物の中から見せたものに、オレたちは一斉に目を丸くした。




 *




「地図?」
「そうさ、ピーター」


 ぽかんと目を丸くするピーターの反応は、今朝方オレたちがジェームズに向かって返した反応と全く同じものだった。そりゃそうだよな!そうなるよな!


「これはホグワーツの古い地図だ。それから、こっちは古いルーマニア地方・・・かな?の古城の地図。この古城は、かのナントカいう凄い貴族が住んでた場所で、その一族だけが受け継いだ魔法の地図があったらしいんだ」


 ペラペラと楽しそうに話すジェームズの顔は輝いていて、ぽかんとしたままのピーターはただただ唖然と頷いた。長い長いジェームズの説明を要約すると、つまりこういうことだ。


「ホグワーツの魔法の地図を作ろうよ、ってことでしょ?」
「その通り、ムーニー」
「始めから一言でいいと思うよ、プロングズ」


 呆れた声でリーマスが告げる。その言葉にもめげず、ジェームズは続けて大演説を始める。その声をBGMにオレは目の前のチェス台を睨んだ。


「アッ!?まじでシリウス!?」
「チェックメイト」
ウワアアアア馬鹿ァァァァシリウスのばかー!ばかばかばかばふざけんな馬鹿犬!」
「ふふーん。勝負は勝負だぜ。さて罰ゲームだ」
「うっ・・・・・・・」


 シリウスがドヤ顔で見下ろしてくる。ムカつく。大変ムカつく。非常にムカつく。いくら負けとはいってもムカつく。・・・が、負けは負けだ。


「悔しいいいぃぃぃぃい」
「ホラ罰ゲームっつってんだろ」
「・・・。ニャー


 丸1日語尾にニャーとかそんなオーソドックスな罰ゲームなんか・・・!マジでムカつくこの馬鹿犬。


「ねぇ聞いてる君たち」
「アーうん、聞いてる聞いてる」


 適当に返すシリウスはさっさと手で続きを促した。ジェームズは若干不服そうながらも、話を再開する。


「もし僕が思い描いているように、ホグワーツ中のすべての部屋が、道が、地下室が、抜け道が、全部ひとつの地図上に描けたら。そして―――ホグワーツ中のすべての生き物が地図の上を動き回る・・・!ワクワクしないかい?
 誰がどこでなにをしているかが手に取るようにわかるんだ。今以上に完全犯罪を狙える!」


「・・・・完全犯罪か」


「そうさ。それだけじゃない、完成したらこの地図はきっと、僕らが卒業したあとも、僕らの意思を引き継ぐ者によって使われていく――――青春に彩りを深めてくれるだろう!」




 きっと、まだ見ぬ未来の子供たちが。
 もしかしたら遠い未来の、僕らの子供たちが。




「さすが、ジェームズは乗せるのうまいよなぁ」
「全くだね」
「だから、ついていこうと思うんだけどね・・・ニャー」
「う、うん、僕も、面白いと思うよ・・・!」




 あと、ジェームズは気づかなかったみたいだけど。 
 その古城って、の先祖が住んでた城なんだけどなあ。

 あれ?ということはヒントになる図面とか、資料とかって、もしかして我が家にあるかも?

















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