・・・っ!!」
「リリー!!!リリー!!」
「会いたかったわ・・・っこの2か月、寂しくて仕方なかったの!」
「オレもだよリリー!!」


 ガッ!と抱擁しあうオレの後ろで、ジェームズが低く唸ったけれど気にしないふりをして、オレは腕の中のリリーを見下ろして笑う。


「髪、伸びたね、リリー。可愛い」
「あら、ありがとう。は・・・なんだか、日に焼けたわね。あと、細くなったわ」
「そう?」


 首をかしげるとリリーはふわりと顔を赤らめて微笑んだ。可愛いなー!お嫁に出したくないや。




 
 121.





「ホント、が男だったらプロングズ、お前に勝ち目ねぇぞ」
「・・・・・・ホントのこと言わないでくれるかなあ、パッドフット。傷つく」
「相変わらず仲良しだね。ああやってハグしあえるのって女の子同士ならではだよね」


 へへーん、せいぜい羨ましがればいい。リーマスの言うとおり、女の子に抱きつけるのなんて同姓の特権だ。しかし本当にリリーに会うのは久しぶりで嬉しかった。手紙のやりとりをしていたとはいえやっぱりずっと会いたかった。それだけに新学期が恋しかったくらいだ。


「ねぇ、本当に痩せたわよ、。もともと華奢だったけれど。あ、でも」
「ん?」


 一度言葉をきったリリーは、オレをまじまじと見ながら目を細めた。なんだか嬉しそうな表情になんとなくとまどいながら首を傾げる。


「楽しかったのね、夏休み。よかった」
「・・・・・・・うん。ありがとう、リリー」
「そろそろ城に向かうぞ、ほら」


 頭を突かれて振り向くと、シリウスが無愛想な顔をして立っていた。灰になったジェームズを引きずるリーマスとピーターが城に向かって歩き始めていて、慌てて後を追いかける。ふと違和感に気付いてシリウスを振り返ると怪訝な瞳が返ってきた。


「なんだよ?」
「・・・・・・いや」


 なんか、なんというか、いつもより、
 ・・・・・・・ちょっとだけ優しいような気がした。





*





 城に入ればいつも通りで、いくつもの再会を喜ぶ声が飛び交い、賑やかな生徒たちの姿で一杯だ。教職員席の先生方もズラリとお揃いでなんだか新学期が始まることを実感する。ケイシュウとメイファの喧嘩の声まで聞こえてきて、変わってないなあと可笑しくなる。


「ポッター、今年のクィディッチ選抜の件なんだけど」
「ああ、ギビンズ。分かった、すぐ行く」
「ルーピン!監督生はこっちへ」
「そうだった・・・ごめん」
「リリー!!頼まれてた本なんだけどー」
「え、今なの・・・?分かったわ」
「ペディグリュー!列車に忘れ物があったぞ!」
「えっ!ご、ごめんなさい!」


「「・・・・・・・」」


 あれよあれよという間にいつものメンバーが連れて行かれ、思わず取り残されたオレたち二人は顔を見合わせた。ちょうど空席を見つけて、シリウスと一緒に腰を下ろす。まだ食事は出ない。新入生の入場がまだだからだ。もうそろそろかなあと入口の方に視線を向ける。


「・・・
「ん?」
「えーっと・・・いや、あの、OWLの結果どうだった?」
「へ?話さなかったっけ」


 どー見ても不自然に目を逸らされたんだけどこれ突っ込まない方がいいのかな。ちょっとおかしい様子のシリウスだけど、機嫌が悪いわけじゃないみたいだから、まあ、いっか。


「オレは防衛術、呪文学、変身術は優。占い学と天文学と飼育学が良。魔法史と魔法薬学は可。なんとかスレスレで『闇祓い』合格基準を満たしたって・・・言わなかったっけ」
「ああ・・・そういえば」


 優が3つもあることに歓喜したけど、もともと得意なのもあるとはいえこれは明らかにアニメーガスの特訓の成果だ。超難関のあの魔法を3年間もかけて練習して習得したのは決して無駄じゃなかった。占い学と天文学は母さんから習ってきた陰陽術と歴術のおかげだろうし、一つも落第は無かったし、魔法薬も思ってたより良かったし、個人的には結構満足している。
 魔法薬がキアリス教授からスラグホーンに変わったおかげで、何だか気に入られてるみたいで(多分両親と兄のおかげ)成績が上がったし。結果的によかった。


「シリウスは魔法史ひとつ良で、後は全部優だよな?」
「あぁ」
「・・・あのさ、シリウス。さっきからなんかヘンだけど・・・熱とかあんの?」


 なんか、顔赤いんだけど。


「なっ・・・なんでもねぇよ!!!」


 いや、なんでもなく見えないんだけど。














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