拝啓、父さん、母さん。
 貴方たちの息子はとんでもなく無茶苦茶です。

 拝啓、アリアさん。
 貴方のご主人を止めてください。


「寝てんじゃねぇさっさと立ち上がれ!!」


 ・・・・・・・・・・なんでこんなことに!!!




 117.





「はー・・・相変わらず容赦ねェな、アオトさん」
「流石だよね・・・」


 シリウスとジェームズが疲れ果てた顔で呟いた。ここは、『闇祓い』の試験をクリアした見習いの『闇祓い』が鍛えられる訓練場だ。なんでこんなことに。オレが聞きたい。てゆーかなんで二人はそんなに簡単に受け入れられてるんだ!おかしいだろこの状況!!

 話は、ホグワーツ特急列車がロンドンに到着したころに遡る。




「久しぶりだな、シェスア。無事OWLはクリアしたか?」
「あー・・・わかんないけど、とりあえずは」


 そうか、と笑うアオト兄は少し痩せて精悍な空気を身にまとっていた。もともと細身だけれど、なんというか筋肉がついたというか。あと傷が増えた。首に巻かれた包帯はそのままで、見慣れてしまったことが少し悲しい。


「なあ、お前らの中で『闇祓い』を志望している奴はいるか?」


 荷物を降ろし終えたオレたちに、唐突なアオト兄の質問が落ちた。みんなで顔を見合わせる。結局そろそろと手を挙げたのは、オレと、シリウスと、ジェームズだった。その3人を一瞥してから、アオト兄は快活に笑った。なんか悪い予感しかしない。


「そうか、ちょうどよかった。『闇祓い』の訓練に参加してみないか?」
「・・・・・・へ!?」


 あまりにも唐突な言葉にぱかっと口をあけると、兄は面白そうに眼元を緩ませる。目を丸くするオレたちを見回してから始まった説明を簡単にまとめると、こういうことだった。

 本来なら闇祓いは公式の試験を通過しないとなれないものだけど、いまちょうど有能な闇祓い志望の学生に対して本来の訓練に近いものを体験してもらおう、というなんだか友好的な(?)企画らしい。魔法省なんか迷走してないか?いいのか、そんなにオープンで。

 呆然とするオレを尻目に、一気に目を輝かせてジェームズとシリウスがもろ手を挙げて賛成し、まずはOWL試験の結果を待つことになった。いくら体験とはいえ、OWLで最低ラインはクリアしていないと訓練に参加できなかったために、ひやひやしながら結果を待つことになった。いやもとから緊張はしていたけど、こんなことならもっと早く教えてくれればいいのに!

 そして結局、無事に規定の成績はクリアしていたので、8月から一か月間に渡り闇祓い訓練に参加することになる。でもって――――なんと、教官はアオト兄だ。


「嫌ァな予感したんだよな・・・・・・・・・・」
「むしろ幸運だと思うよ、僕は。アオトさんみたいな有能な魔法使いに鍛えてもらえるなんて、素晴らしいじゃないか!」
「そういやジェー、お前はアオトさんのファンだったっけ」


 もちろん!と目をキラキラさせるジェームズが眩しい。そりゃオレだって、直接しごかれることなんてそうそう無かったし、魔法を使った戦闘実習や防衛術を教えてもらえるのは嬉しいし、でも、・・・・・・でもなぁ。


「飯は食い終わったか?」
「「「はい!」」」


 突如背中から聞こえた声に、オレたちは反射的に声をそろえて背筋を伸ばした。訓練を受けてもう2週間になるけれど、『教官』としてのアオト兄はすこぶる怖い。ここじゃコーラルリーフ教官、か教官と呼ぶようにと最初に言われ、ものの数分で「アオト兄!」なんて呼んだオレの受けたオシオキを思い出すといまだに冷や汗が出る。


「そろそろ実践訓練の時間だ。準備しろ」
「「「はい!」」」



















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130414