「クィディッチを初めて4年目だけど、相変わらずはノーコンだね」 「ほっとけ!」 ジェームズの辛辣な言葉に噛みついた。オレだって気にしてるもん! 111. あのホグズミード騒動の後、半分泣きそうなリリーに抱きしめられてから帰寮して、ごたごたといろんなことがあったのだけど、なんだかめまぐるしくてあまり覚えていない。ただ確かなのは実行犯だった4人?に対して、校長にチクる代わりにジェームズ・リーマスによる特別オシオキタイムが施されたってことだ。あの2人だけは敵に回したくない。本当に。 何故チクらなかったかというとオレが反対したからだ。あと一歩で物凄くヤバいことになってたとはいえ、結果としてオレの能力もバレてはいないし怪我もない。まあとはいえ色々危険なのは確かなので、アオト兄には詳細加えて報告しておいた。アオト兄は闇祓いだし、漏れなく彼らの周辺に魔法省から取り調べが行くはずだ――――当然その筋で、校長に報告は行くだろうけど。結果的にチクったことになるのかな?でもあとのことはオレは知らない。 「さすがだね、」 「ううん、そっちこそ」 寮対抗クィディッチ、ハッフルパフVSグリフィンドールは、グリフィンドールが先にスニッチを握り、200点差をつけて勝利。キャプテンであるディゴリーと、フィールドで握手を交わしたのが懐かしい。その日の夜、改めてオレは彼に会いに行った。正式にお断りするために。 「そう言うだろうなと、思ったよ」 「うん。ごめん。でもオレは、やっぱり付き合う気持ちには、なれない。この先も、ずっと」 そっか、とどこか切なげに優しく笑うディゴリーは、最初の夜の時と変わらない笑顔だった。 「は、あの4人に大切にされてるんだね」 「4人て・・・あいつらか」 「本当に大事な仲間なんだね。君を仲間だと、胸を張って言える彼らが羨ましいよ」 「・・・うん。大事な、親友だ」 もちろん、リリーだってセブだってオレの大事な親友だ。何故そんなことを、と怪訝に思いながら彼を見上げると、ディゴリーは優しく笑いながらオレの髪に触れる。 「最初はね、なんだか面白そうだから手を出したんだ。でも君は本当に可愛くて、知るたびに好きになった。今は本当に君が好きだよ、」 「・・・。うん。ありがとう」 「だけど、君たちの間に割って入ることは出来ないみたいだ」 君たち・・・って仕掛け人のあいつらのことだろうか。それは確かに無理だろうけれど。ぽかんとしながらとりあえず頷くと、ディゴリーはおかしそうに笑う。君はそのままでいいよ、と言う彼の台詞はどこかで聞いたことがあるような・・・。なんだか、子ども扱いされているような気もする。 それから以降、いつのまにか巨乳さんと別れたらしいシリウスは機嫌を直したらしく(そもそもなんで怒ってたのかよくわからないけれど)なんというか、日常が戻ってきた感じだ。OWL試験まで半年を切り、先生たちもなんだかとっても厳しくなってきた。 「クリスマスはどうするんだい、」 「今年は帰らないよ。アオト兄もムーディも、忙しいらしいから」 クリスマス。父さん、母さん、アリアさんの命日だ。正直バカ騒ぎをする気分はなれないけれど、かといって帰るのもしんどいし、なによりアオト兄たちが仕事で帰ってこれないらしい。しんとした家に一人でいるくらいならホグワーツにいたい。余計なことを考えたくないし。 「そっか」 その時はかるく流したんだけれど、クリスマス休暇に入ってオレは驚くことになる。 「えっ・・・みんな残るの!?」 「まーな。そもそもオレ、勘当されてるから帰る家ねーし」 「たまにはいいかなと思ってね!リリーもいるし!」 「両親がクリスマス旅行に行くことになっちゃってね。僕は留守番なんだ」 「僕、一人だと課題出来ないから・・・」 「妹とケンカして、帰ってくるなって言われちゃったのよ」 見事にいつもの面々がずらりと談話室に顔を並べたのでびっくりした。なんというか、ほとんどが言い訳にしか聞こえない。けれど明らかにオレのことを気遣ってくれているのが分かって嬉しかった。――――だったら、せっかくのクリスマスを楽しまないわけにはいかないだろ? 「じゃあクリスマスパーティ、盛大にやろうぜ!!」 ということで、寮どころか休暇中の学校全てを巻き込んだクリスマスの大騒ぎは、そのあとホグワーツに数年間語り継がれる伝説的出来事となった。悪戯仕掛人の久しぶりの大仕事。フィルチがもれなく機嫌をすこぶる損ねたけれど、マクゴナガル先生までもが笑ってくれたから大成功だったと思う。大食堂に降り注ぐ雪に大騒ぎしながらオレたちは笑った。 夜、遊び疲れたみんなが寝室どころか談話室でひっくり返って寝始めてから、オレはそっと寮を抜け出した。ジェームズの透明マントを拝借して夜のホグワーツを歩く。 「・・・・・・ふわぁ」 寒い。当たり前だけど雪のなかだ。しっかりと防寒はしたけれどそれでも寒い。深々と静かに雪が降り、月がきらきらと煌めいている。湖のほとりまで来ると、オレはそっと胸にかかった銀のロケットを取り出した。掲げると月の光を反射してきらきら光る。 「・・・メリークリスマス、父さん、母さん、アリアさん」 いつまでもうじうじしてるんじゃない、と怒る声が聞こえてきそうだ。 ほんの少し、そこで泣いてから、オレは城まで引き返した。 大好きな人たちに囲まれて生きていることに、感謝しよう。 ←BACK**NEXT→ 130317 |