「・・・リーマス、あの子本当に、・・・かなあ?」
「・・・・・・・・・・たぶん」


 女って、怖い。





 105.





 僕が叫びの屋敷から帰ってきて聞かされたとシリウスの大喧嘩については、ジェームズがシリウスに大目玉を食らわせたらしいから僕はあえて何も言わなかった。まあ、傷だらけなのは二人ともだし?ていうか筋力も腕力も身長も体重も上回るシリウスにあそこまでダメージを負わせるって、あの子凄いなあ、本当に。いろんな意味で。


「でシリウスはあんなに落ち込んでるってわけだね?」
「とうとうに『もう馬鹿犬なんてどーでもいい』なーんて言われちゃったわけだからねえ。まあ自業自得だよ」


 単細胞なシリウスが珍しいほどに落ち込んでいて、さすがに傷に塩を塗るようなことはできなかった。そうこうしているうちに数日が経ち、やってきたのはホグズミードの日。とディゴリーがデートをする日で、しかもシリウスもあの巨乳さんとデートらしい。付き合っていたら当然なんだけど、それにしたって間が悪い。


「そこで僕から提案なんだけどね親愛なるわが友、ムーニー、ワームテール」
「君が提案することってことは警戒してもいいんだねプロングズ?」


 なんて言いながらジェームズが出してきたのは、要するにこの2つのデートの後をつけるというものだった。別にぶち壊そうとかそんなつもりはないんだけど、僕らとしては今の状況は非常に不本意なわけで。できるなら早く仲直りしてほしいわけで。――――もちろん興味本位でもあるんだけどね!


「なんで私がジェームズと一緒にシリウスなんかのあとつけなきゃいけないのよ!」
「そう言わないでくれよ、リリー。君がをつけたら気づかれそうじゃないか!あんなに仲が良いんだから」


 相当におかんむりだったリリーの表情が、ジェームズの言葉に少し和らいだ。と仲がいいと言われるのが嬉しいらしい。こういうところはうまいんだよね、ジェームズって。結局なだめすかして、最初の思惑通りに事を運ぶことに成功した。つまり僕とピーターがの後をつけて、ジェームズとリリーがシリウスの後をつけてるってこと。
 ていうかジェームズ、これを口実にリリーとデートするのが目的だろう?別にいいけど。


「ところで、ってあんな服持ってたの?5年間付き合いあるけど、一度も見たことないんだけど」
「え、えっとね、リリーが貸してあげたんだって・・・!渾身のコーデとかって言ってたよっ・・・!」


 ピーターの言葉に、なるほどと頷く。ってゆーか今日のはいつもと全然違う。本当に本人なんだろうか?特徴的な透き通るような金糸と空色の瞳はそのままなんだけれど、いつもはぼさぼさな髪にきちんと櫛が入れられ、しかも毛先がちょっとウェーブしている。肩が大きく開いたデザインのオフホワイトロングニットはほとんどワンピース状態で、パステルブルーのタンクトップがのぞく。濃い色のミニスカートに生足、華奢なパンプス。首筋には銀色の細い鎖。・・・こういう恰好をしていると、本当に女の子なんだなぁ。





*





 まじで無理!なにこれ!オレこんなキャラじゃないんだけど!
 あーもうスカートも短いし足こんなに出したの初めてだし、あああああああもう、リリー!!!!

 内心で親友に抗議の声を上げて、オレは悪あがきでスカートの裾を引っ張った。スースーする感じに違和感を覚える。たぶん、制服のスカートよりもずっと短いし、薄い素材だ。普段なら絶対にしないような服装。動きづらいし、寒いし、もう帰りたい。


!早いね」
「あ、どーも」


 オレを見るなり駆けてきたディゴリーは、目をまん丸くしてそのあと笑った。決して馬鹿にするような笑いではなくて、本当にうれしそうに。最初はドギマギしてなに話せばいいのかも分からなかった彼だったけれど、最近は慣れてきたのか素で話せるようになってきた。その点でいえば世話焼きのお兄さんって感じだ。アオト兄はこんなに優しくないしなあ。


「じゃあ行こうか、
「・・・うん」


 すごく自然に手を握られて思わずびっくりした。・・・そういえば、手を繋いだことなんか、シリウスとすら無かった。












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