「・・・はあ」 「が溜息なんて珍しいね」 「ここのところいろいろあったからね。もうなんか、整理できないよ、いろいろ」 リーマスが苦笑しながら紅茶とお菓子を用意してくれた。さりげない優しさがほんと、いいやつだよなぁ・・・!!でもおいちょっと待て、砂糖は入れ過ぎだ。 102. 「ちょっとここ数日間あったことを整理しようぜ」 「整理するほどたくさんのことあったっけ?」 「・・・・・・。えーと、まずオレが告られた。でもってシリウスが巨乳さんと付き合いだした。オレは週末にデートに行く。なにこれ」 「青春だね〜」 「ヒトゴトだと思って・・・!」 「その通りです」 面白そうに笑いながら、リーマスは角砂糖10個放り込んだカップに口づけた。今さらだけど、リーマスは味音痴だと思う。ていうか極度の甘党?将来糖尿病になりそうだよな。言っても聞かないだろうけれど! オレは軽く唸りながらテーブルの上に突っ伏した。こんな色恋沙汰な悩み、初めてだ!オレはジェームズみたいに好きな人はいないし、シリウスみたいにモテまくってたわけでもないし、リーマスみたいに・・・って、あれ?リーマスとこういう話、そういえばしたことなかったな。 「ねえ、リーマスは好きな人とかいないの?」 「・・・・・・、とそんな話になる日が来るとは思わなかったな」 なんだそれ。同感だけどさ。 カップを置いたリーマスはなんだか神妙な顔だ。視線が合う。鳶色の瞳がぽかんとしたアホ面のオレを映している。ほんとなんでこんなアホみたいなのが告られたんだかほんとわからない。 「・・・僕は」 リーマスが口を開いた瞬間、談話室のドアが開いてけたたましい騒ぎ声。反射的に振り返ると、見慣れた顔が並んでいた。 「ああ!ここにいたのか!今度のクィディッチの対戦相手は覚えているかい?」 「なんだよジェームズ、ハッフルパフだろ?」 「そう!そのハッフルパフなんだけど!キャプテンが変わって随分体制が変わったみたいなんだ。僕らもちゃんと作戦を立てないといけないかもしれない」 「ん、そうなんだ?」 よくわからないなりになんだか張り切っているジェームズが鼻息荒くそう告げる。けれどその顔が唐突にビシッと凍りついた。視線の先はオレの後ろで、それを追ってまた姿勢を元に戻してリーマスに向き直る。別に、リーマスは普段通りだけど。どうしたんだろう。 「や、やあリーマス!お茶してたのかい?」 「やあジェームズそうそう、面白い話をしてたんだけど君も間が悪いね。ね、?」 「へ?ああ、うん」 笑顔のリーマスの迫力に押されてとりあえず頷く。なんだよこれオレ置いてけぼりじゃない?ああ、そうだ。オレ、もう一個気になってることがあったんだ。ちょうどジェームズがいることだし、と隣に座った彼を見上げる。 「なぁ、ジェームズ。新学期が始まってから、セブになにかした?」 「スニベルスにかい?」 「その呼び方やめろっつってんだろ・・・・・・」 「スネイプくん!・・・なにか、って?ちょっとした悪戯くらいなら。けど別に、去年までと大差ないよ」 「してんじゃねーかよセブに手ぇ出すなってもお5年も言い続けてんだろおおおおお」 「あーあーあー!ごめんって!!」 首根っこをひっつかんでがくがくとジェームズを揺さぶる。ギブギブ!とテーブルを叩いて降参を訴える馬鹿に、最後に思い切り頭突きを食らわせておいた。もういい加減にしろって言ってんだろ! 「・・・だからっ、去年とは大差ないって言ってるじゃないか。なにかあったのかい?」 「うーん、それがね」 ちょっと不安に思ってることを、ぽつぽつと話し始める。リーマスとジェームズは首をかしげた。 「スネイプが?ふーん・・・でも、もともとあいつスリザリンだし」 「でも、放課後に図書館に行けば、いつだってセブはいたんだよ。去年までは。・・・なのに今年は、一回もあいつに会えないし・・・授業だってスリザリンとの合同は無くなったから、全然会えないんだ」 「まあ寮が違うから多少は仕方ないんじゃないの?」 「・・・・・・でも、同じ学校なのに、すれ違うこともないんだよ?」 「うーん?」 「ああ、でもなんかそういえば、ヘンなヤツらとつるんでるって話は聞いたよ」 リーマスの話に耳を傾ける。 「スリザリンの、特によく問題を起こしてるグループ・・・ええと、マルフォイとかれストレンジとか?あのへんとつるんでるみたいだよ」 「え、でもセブって純血じゃないだろ?そいつら有名な純血派じゃん。なんでセブが?」 もともと、純血じゃないのにスリザリンで、寮では結構浮いてたはずだ。だからオレと仲良くしててもそんなに反感を買うことは無かった・・・と思ってる。なのに、なんで今更? 「まあ、ちょっと調べてみるよ」 ジェームズの言葉に頷いて、オレはさめた紅茶に口づけた。 ←BACK**NEXT→ 130208 |