すなわち僕が言いたいのはね?1811年6月21日にかのリーマス・ルーピン氏も言ったように「愛とは世界において最も至高な存在である」という言葉を僕らは素直に信じようじゃないかということであってね?「勝手に僕を歴史上の哲学者にしないでくれるかなジェームズ」おやおや!小さいことを気にするなよ!おかしいな、僕の記憶では確かにそうだったと思うんだけれども?さすがにそんなことはないか。まぁともかく誰が言ったかなんてどうだっていいのさ、重要なのはこの言葉の意味だと思わないかい?常々から僕はそれを主張しているのだけれどね、つれないリリー・エヴァンズはいつだって僕を受け入れてくれないのさ!何故だろうね?僕はこんなにも彼女を好きだっていうのに!「けどオレがエヴァンズでもお前は嫌だぜ、ジェームズ」うるさいよシリウス。別に君に選ばれたいだなんて思ってないよ。君がエヴァンズだったらなんて想像もしたくないね、僕の神聖な彼女を汚すような発言は控えてくれないかな!ところで君は今、レイブンクローのマドンナと付き合っているんじゃなかったかい?つい先月は我が寮の後輩と付き合っていたような気がするんだけれども僕の記憶違いだろうか?あまりにもころころと彼女が変わるものだからこの僕も把握しきれないね!告白されたら付き合うというとはどうなんだい正直のところ。ああ、別に誰でもいいわけじゃないってことは知ってるよ、それくらいはね。でもそう思われても仕方ないぜ君は。おそらくホグワーツ中の男子生徒から羨望と恨みを抱かれているだろう。僕らは例外だよ。リーマスもピーターも別に君を羨ましくは思ってないだろうし。ん?そうだろ?全く君もつくづく罪な男だね。たった一人を永遠に愛し続けようという思いは君にはないのかい?僕?僕は勿論リリー一筋に決まってるじゃないか!!「どうしてリリーなの?」何を言うんだピーター!彼女ほど素晴らしい女性はいないよ?何故かって?そうだな、何から話せばいいかい?ん?なんだいその顔は。さて、じゃああの話から行こうか。あれは・・・


 ジェームズ・ポッターがとうとうと恋する少女について語り続ける声をBGMに(周りの例の3人は呆れたような迷惑そうな顔でそれを聞き流していたけれど)、私は横の少女をちらりと振り返った。さすがに耳まで真っ赤になった彼女はまるでここから今にも逃げ出しそうに見えた。だけど、逃げない。その理由は私にもわかる。3枚くらい窓をはさんでもリリーの姿に気づくポッターに気づかれていないという奇跡的な今、要は動けば彼に気づかれることが明らかなのだ。それに。


「まるで逃げたみたいじゃないっ」
「そう?」


 そうなの!と頑固にいうリリーは、さらに耳から入ってくるポッターの声にますます顔を赤らめた。


「いいなぁ」
「何が!!?」


 かみつくリリーを笑う。心底わからない、とでもいうように彼女は首を振った。

 
 きらきらと笑うポッターは、どうしてそんなに一直線にリリーを好きになれたのだろう。あの独特の鮮やかな光を放つ瞳に映れたのならどんなにか良かっただろうに。だけどそれは決してあり得ないことであって。横で真っ赤な顔して座るリリーは、いつかきっとあの人の隣で優しく笑うだろう。そして私はきっと、それを優しく祝福するのだ。私はそっと目を細めた。













胸に刺さった小さな
気づかないふりして私は
笑う。


(それは恋だったのかもしれない、)







091113