「殺したのね」 もうとうに分かりきっている事実を確認する。電話線と言うただの無機質なコードで繋がっているだけの相手は、知っている彼のはずだ。幻影旅団の団長で、ずっと私のもとに通ってきていて、そして、境界線に決して触れようとしなかった、あの、彼。なのに。 「ああ」 「・・・・・・・どうして」 声が、震える。どうしようもなく震える。けれど涙は流れない。哀しくはなかったし、悔しくもなかった。なんだろうこの感情は。電話の向こうの低い声はいやに落ち着いていた。 「どうして」 もう一度同じ言葉を繰り返す。それしか言えなかった。声が、手が、震えが止まらない。クロロは沈黙のあと、まるでそれが日常茶飯事のことを告げるかのように、普通の声で。普通の音で。告げる。 「偶然だ」 切り裂くような沈黙のなか、「・・・うそ」電話の向こうの愛しい声が言った。震えるような声だった。泣いているのか、と思ったけれどもそれは違う、とも思いなおした。決して泣くような女ではなかった。少なくとも、誰かと繋がっているときに弱みを見せるような女ではなかった。それは分かっていた。 が付き合い始めた男が死んだ。優しく頼れる、社会人。オレと、同じ年。そして殺したのは、オレだった。事実だった。そして偶然だということも事実だった。は疑うような声を出したけれども、それが真実なのだから仕方がない。 「うそでしょう」 「何度も言わせるな」 「・・・・・・」 真実だ。いや、真実だと思いたかった。街角を曲がるとその男を見た瞬間から苛立っていたのはわかっていた。オレの見てきたの笑顔、オレを呼ぶ声、それらがすべてオレではない男に向けられる。愛しい女のそのすべてが。それを理解した時、男と言うものはかくも愚かな行為に走るものだった。後からオレはそれを知った。 盗みを働くとき、邪魔だと感じれば誰だろうがすぐに始末するが、その男の顔を見た瞬間にの顔が頭をよぎったのはオレだけが知っている事実だ。顔など見なかった、たまたまそこにいる男を殺したらそれがの今の恋人だった、そう主張すればいいだけの話だったのだ。 「・・・・・・そう」 すう、と息を吸う音がして、それからの声が聞こえる。哀しそうな音だった。 「それじゃあ、仕方ないね」 仕方ない。恋人が死んだことを仕方ないで片づけられるのか。あまりにも不自然だったけれどもオレは敢えてそこには触れなかった。きっと誰もが言うだろう、そんなに彼女を独占したいのならば自分の女にしてしまえばいいだろうと。駄目なのだ。彼女には幸せになってもらいたい、それがオレの願う望みだ。なのに現実はどうだ。彼女が幸せになろうとする道をつぶしているのは紛れもないオレ自身ではないか。なんという矛盾だろう。幸せになってもらいたいのに、それを許せないのだった。 「・・・クロロが幸せにしてくれればいいのに」 「駄目だ」 まるでオレの本心を全て知っているかのように、の哀しそうな声が電話から洩れた。だけどがオレのもとで幸せになるなど想像もできず、また不可能であると分かっていた。オレは闇の世界の住人であり、彼女は一般人。出会ったことすら奇跡であるのに。 電話だけで繋がっているのに、その表情なんて見えないのに、声は本当に哀しそうに響くのに。何故だろう、彼女が笑ったような気がしたのは。だけど、その想像の中の笑顔ですらも、の笑顔はやはり哀しそうだった。 境界線をなぞる指 (すれ違った、交わらなかった、超えようともしなかった) 10000HIT!THANKS A LOT! 企画リクエストでした。香颯 莉菜様のみお持ち帰りOKです。ありがとうございましたv あのすみませんまず言い訳させてくださいまさかこんな長くなるとは思わなかったんです!(ノンブレス)← いやあの・・・初めの1本を書いた後に・・・いやこれじゃクロロが収まるわけがないと思ってしまい・・・その・・・あれ?2本?続編?あれ?みたいな・・・。 長くね!?と自分で思いました。そしてこれ悲恋!?悲恋なのか!? ややこしいので解説しますと、要は2人とも両想いなんですよ。でもクロロは大事にし過ぎてなにもできない→夢主さん不安かつ意思確認なし・・・→なぜか3年間音信不通→帰ってきたとき夢主さんには彼氏ができてた→クロロはその幸せを願いつつも独占欲が顔を出す→独占欲に支配されちゃった→でも夢主さんを前にする(電話越しだけど)とやっぱり幸せになってほしいほうが強い→堂々巡り ・・・え、こんなの差し上げていいのか・・・ちょっと待てこれは・・・。 再筆しろと言われたら書きますので!差し戻しOKです!趣味に走りすぎました!!← も、申し訳ありません・・・! リク、本当にありがとうございました! これからもよろしくお願いしますv 100102 |