舌の上で溶けていく淡い綺麗な可愛いピンク色。なんていう色だったかな。覚えているはずなのに―――。思い出せない。私が右手に持ったそんな色のシャーベットは、隣で歩く彼、クロロが私に買い与えてくれたものだ。店の前を通るとき、ちらりと私の視線が「それ」に向けられたのをしっかりと見ていてくれたらしくて、前を通り過ぎて一つ目の角を曲がろうとした時に「ちょっと待ってろ」とか横柄に言って足早に戻っていくから、そのときは正直言って腹が立ったけれど、数分もしないうちに戻ってきた彼の手にあった可愛いパステルカラーのそれを見てもちろん私は歓声を上げた。単純なやつだよな、お前、とかなんとかクロロは笑ったけれど嬉しかったんだから仕方ないでしょう?本当に、こういうところの気遣いはものすごいんだ、彼は。


 「何の味だ?」ふと横から私に向けて発せられた問いに、私はちょっと悩んで答える。「桃かな」味もそうだけど色も含めた上での推測だ。だって加工されたものの味ってそのもの本来の味とは少し違うから。「買った時にわからなかったの?」「ああ」「どうして?」「そのピンクと青いのひとつずつって言った」「味は見てなかったんだ」「色で買ったの?」「そう」「青いの、何味?」「・・・多分、サイダー


 色で買う人なんて初めてだ。そう思いながらもクロロらしいな、と思って笑った。「ピンクと青ひとつずつ」「はあ?」みたいなクロロと店員の会話を想像する。変な顔をして接客されなかったみたいだからいいけど。だってそんなことしたらあのアイスクリーム店はただじゃすまない。なんてったって天下の幻影旅団団長なんだから。私の隣で青いシャーベットを齧る(舐めるじゃなく、齧る)今のその姿からは想像できないけれど。そういえば、なんでこの色を買ったんだろう?


ねえ、なんで私はピンクなの?」「ピンク好きだろう」「黄色も好きだよ」「ピンクじゃいやか」「ううん、でも、どうして?」「・・・さあ、なんでだろうな」「なにそれ」「気づいたらピンクと青って言ってた」「無意識?」「多分」「変なの」「ほっとけ。あ、それと」「え?」「さっきから口元についてる」「嘘!


 慌てて口を拭こうとして、その前にぺろっと舐められた。呆然と「・・・犬」と呟くと頭をはたかれた。こぼすから!怒ると笑われた。ああもう、いつもながら私、振り回されすぎだよ。あ、思いだした。この色。・・・アザレアピンク、だ。 
















溶解パステルカラー

(アザレアピンク=恋の喜び!)






090615