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あたしはこれまで幸せに何も知らずに生きてきたんだね。ぼんやりともやのかかった頭で考える。この世に存在する全ての悪意も醜さも羞恥も残酷も罪悪も最悪も凶悪も兇悪も全て全て知って、あたしはこの世界を知ったつもりになっていたんだね。たかが十代そこそこのクソガキがよくもまぁここまで自惚れられたもんだよ。はっ、そんなの知ってたって?お生憎様、あたしも実はずうっと知ってたんだよ気づこうとしなかったただそれだけのこと。それがどんなに愚かなのかさえ知らずにね。この愚行に気づくこと、それがもしかしたら一番大切なことかもしれなかったな。笑っちゃうよね。滑稽。だけど世界があたしを裏切るのなら世界なんてもういらない。必要ない。ウラギリ――いいよ、どうぞどうぞ。もうあたしは世界を信じない何も信じない自分を信じない誰も信じない信じてなんてやるものか。もう信じるものなんか何もない。 くつくつ。喉の奥から声がもれる。ははははははは。笑声に応える声はなくそれでもあたしは笑い続けた。何なんだろう何なんだろうね。あたしはあたしでいられればそれでいいと思っていたのに、それさえも叶わないだなんて冗談にも程があるねふざけてる。世界はそんなにあたしに喧嘩を売りたいのかな。別に買って欲しいのならいくらでも買ってやるのに。遠慮なんかしなくていいのに。まるで道化。 罪も咎も何も知らないような真っ白いベッドの上にはあたしが横たわっていた。同じく白いけれど血や医薬品などでところどころ染まっている包帯はぐるぐるとがんじがらめにあたしを縛り付ける。普段なら簡単にこんな枷、取り外して逃げ出せるのに今は満身創痍、ぴくりとも動ける身体じゃあなかった。辛うじて首だけが動かせる状態。ベッドの周囲にはほとんどといってなにもなかった。黒い無機質な印象のソファ。幼子がなんとか通れるだろう大きさの窓には鉄格子。まるで囚人のよう。さしずめあたしは正義に囚われた哀れな死刑囚というところか。言いえて妙。口元に笑みが浮かんだ。夜の影に暗いドアは、ここからでは分からないけれど確実に鍵が閉まっているだろう。その一番上にカード大ほどの窓があり、律儀にもそこにもしっかりと鉄格子がはめられていた。こんな大きさのを作るのは大変だっただろう。他人事のように考える。その奥から人の話し声が聞こえた。くぐもった若い声。時折、怒ったような幼い声が聞こえ、それを抑える低い声。聞き覚えはあるけれど、こんな頼りないもやもやした頭では記憶の照合など不可能。ただぼんやりと誰だろうと思う。知っているはずなのに浮かんでこない。今のあたしには無理なんだな。そう結論付けて思い出すという行為にピリオドを打つ。まるで操り人形。誰の?勝手に人のせいにしてんじゃねぇよ。はは、自虐的。 それにしても何もない。病室なんだから果物とか、もう少し色のあるものがあってもおかしくないのに。ここはただ黒白の世界。黒白灰色。無彩色の世界。そこに、包帯に滲んだ血の赤だけが異常に際立つ。じっと見ているとその赤は世界に侵食していった。次第に眼の前が真っ赤に染まっていく。それから何も考えられなくなっていく。ただ意識の最後にこれだけ思った。ああ、あの人たちはそんなにあたしを自殺させたくないんだね。こんなにも何もない上に囚人のような鉄格子がそれを物語る。動けないんだから何かできるわけがないというのに、そんなにもそんなにも、あたしは大事にされているのか。それとも、縛り付けられているのか。 真っ赤の世界に沈む直前にドアが開きばたばたと煩い声と怒鳴り声、あとは悲鳴と泣き声――が聞こえた。ああもう放っといていいのに放っといてください。うるさいな静かにしててよ眠りたいんだから。 そうして、瞼を閉じて脳裏に蘇ったのは細い肢体と見事なまでの金髪を真っ赤に染めて地に倒れ伏す「彼」の姿だった。そして思い出す。今のこの状況に行き着くまでを。そうか、大丈夫だよ。2人で世界に別れを告げよう。今行くから。こんな世界もう要らない。貴方を切った世界は要らない。だからあたしも要らない。もう何もかも、要らない。黒白の世界なんか捨てよう。真っ赤に染まっていい。そう、もういいの。 一つだけ聞かせてください。クラピカ、貴方は最期に何を思いましたか? (陵に眠る骸は何色の夢を見るか) (それを知るものはもうどこにもいないよ) 080402 なんと夢主の名前が一度も 出 て こ な い ! うわぁ。すいませんorz 人物名が出たのはなんと最後だけ。コレハンター夢として扱っていいんだろうか。。← |