大好きなの。すきなの。どうしようもないの。ねえ、どうしてかな。なんで私はあなたの隣にいられないのかな。一番最初に仲良くなったよね?一緒にいる時間は誰よりも長かったよね(・・・「彼ら」には敵わないかもしれないけれど)。どうして?


「おい、。聞いてんのかよ」
「・・・ハッ。ごめんきいてなかった!」
「お前なあ・・・。全くしょーがねえ奴だな。じゃもっかい言うぞ?」


 いいか、だなんて前置きしてから再び楽しそうに話し始めたシリウスの話題は、新しく出来た彼女の話ばっかりだ。惚れられることのほうが圧倒的に多いシリウスが、初めて。私の知る限りで初めて、ほんとうに恋をした女の子をようやく射止めたのだった。別の寮だから一緒にいられる時間が短くて、その分彼はその子との時間を大切にしている様で。


「ほんとにもう、ノロケばっか。私にも幸せ分けてよねー」
「うるせぇなあ・・・。でも、には感謝してるよ。お前が後押ししてくんなきゃ全然進歩しなかったぜ」
「ほんとよね。チキンだもんねシリウスって実は」
「チキン言うな」


 でもね、本当に幸せそうな笑顔でありがとう、だなんて言われたら。許しちゃうでしょう?ああ、いいかな、なんて。思っちゃうでしょう?シリウスが大好きなあの子の話をするたびに、あの子のもとへ駆けていくたびに、ずっと泣きそうになってるの、知らないよね。知るわけないよ、私、嘘つくの上手いし、シリウスは鈍感だから。気付いて。ううん、嘘。気付かないで。気付かないでね。お願いだから、私の前では、笑顔のいつものシリウスのままで。いてほしいんだ。


「じゃ感謝のしるしに今度ハニーデュークスの特性パフェオゴってねー」
「げ!お前あんなん食うのかよ!吐く!!」
「ちょっ、あんた世界中の甘党に今すぐ土下座しろ!土下座!」
「アレ人間の食いモンじゃねえだろ!!リーマスと同類かお前は!」
「リーマスとはその辺は話が合うのよね」


 あの子の話ですらいいから、シリウスとこうして喋っていたい。彼の心がどんなにあの子のものでも、この時間だけは私のものでしょう?これくらいの幸せ、願ってもいいよね。

 困らせたくない。好きだって伝えたくない。伝えて今の関係を壊したくない。いいの、友だちでいい。だから本当は泣きそうなことも、気が狂いそうなくらいに恋をしていることも、知らなくていいよ。


「ところでお前は好きなヤツいないのか?オレだって、の恋なら応援するぜ」
「・・・んー、今のとこそういうのはないかなー。恋とかしてる暇ないし?」
「ホントかよ」


 どうして私じゃないのかな。シリウスが幸せそうに語る女の子は、私とは全然違う、女の子らしくてかわいくて大人しい子。シリウスの隣にいられるのは、私じゃなくて。そう、そういう子がお似合いだ。私には座れないその場所。仲良しで、お互いに大切だけれど、私は決してその場所にはいけないのだ。「友達」の特権を得た私には、絶対に。

 ほんとうは甘いものなんて苦手。あんな特大のパフェなんて食べたら泣きたくなる。吐きそうになるくらいに口に無理やり放り込んで、零れた涙で全てを忘れられたらいい。素直になれない自分も、伝えられない思いも、全部。










嘘つきは泣き虫のはじまり

(どうしたらよかったのかな)








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