「・・・あの、シリウスさん?」
「んあ?」
「そんなに見られてると恥ずかしいんですけど」
「あっそ」
「やめてよ」
「ヤダ」
「ガキかあんたは。なにか変なモノでもついてるの?」
「うん」
「えっ嘘!」


 マジか!じゃあ言ってくれてもいいじゃん、そんなじろじろ見てないでさあ!文句もそこそこにあたしは慌ててポーチから鏡を取り出して自分の顔を覗き込んだ。小さい手鏡はシンプルだけど女の子らしい小さな花の装飾があって、とある雑貨屋さんで一目ぼれして購入したものだ。これくらいのオシャレくらい楽しんでもいいよね。毎日おんなじ制服なんだもの!


「え?ね、どこ?」
「嘘。なんもついてねーよ」
「はあ!?なんなの!」


 つるりとなんにもついてないいつも通りのあたしが鏡の中にいて、聞けばやっぱり嘘。なにそれ、何がしたいの!シリウスは相変わらずあたしの顔をじっと見続けるから、どうにも恥ずかしい。綺麗に整ったその顔で見られ続けられるのは、あの、ツライんですけど。


「・・・コレ、」
「へ?いやちょっと!」


 しまおうとしていた手鏡がするりと手から抜けて彼の手のもとへ。慌てて取り返そうと身を乗り出すけれど、彼は長身であたしが背伸びしたってその腕には届かない。じろじろと手鏡を見ながら彼は「ふーん」だなんて呟いた。


「ちょっと返して、バカシリウス!」
「別にいいだろ、減るもんじゃねーし」
「楽しくないでしょ、そんなの見たって!」
「んなことねーよ」


 なんなのマジでなにがしたいのこのひと!鼻歌を歌いながら鏡の装飾を目でなぞるシリウスに、あたしは懸命に手を伸ばした。だから届かないんだってば!


「ねえ返してってば!」
「やだ」
「もぉ、シリウスっ!」






「随分楽しそうだねぇ我らがパッドフットくんは」
は可愛い反応してくれるから楽しいんだよ、きっと」
「好きな子はイジめたくなるって本当なんだね、ムーニー」
「ガキんちょだね、まるで。ところでプロングズ、君は彼女を助ける気はないの?」
「無論ないよ。面白いじゃないか」
「そ。じゃ僕も高みの見物と行こうか」

















伸ばした指の先


(返してってばバカ!!)
(キスしてくれたら返してやるよ)
(ちょ、え、はあ・・・!?)










110309
すげー短い。あれ?