神よ!一体私が何をしたというのでしょうか――でせうか?嗚呼――聖職者でもなければ有神論者でもなくかといって無神論者でもない、周りに流され続けてきた私が問うのはおこがましいことなのでしょうか、嗚呼!迷える子羊をどうかお導き下さいませ、だなんてもっともらしくぶつぶつと口の中で唱えてはみるものの、私の腹にどっかりとまたがって、そうちょうど私を押し倒したまま馬乗りになっている目の前の男は消えてくれそうにない。目の前からあっさりくっきりかっきりと、空気のように夢のように掻き消えてくれることを望んでいたのに――、まあそんなことは普通に考えて起きるわけはなく、すぱりと鮮やかに私の頬を何かが滑って、痛みを自覚する前に赤い糸が床に向かって伝っていくのも全て現実、だ。認めたくない。右手に禍々しい形状のナイフをもって、まるで誕生日プレゼントを開封する子供のように無邪気に笑って。いくつものシルバー・アクセサリーをつけた左手が私の頬の傷から血をすくい、私の唇をなぜた。ゆっくりと広がる金属の味。こんな生々しい人間の味、美味しくない。この男の血の味はどんなものなのだろう?思ったあとには既に行動していた。唇をなぞっていく男の指を噛んだ。痛みに一瞬怯んだようにひっこめようとしたその指にそのまま吸いついた。広がったのは私とおなじ金属の味。なんだつまらない、それでも男は驚いたように目を見張っていたけれど、かはは――だなんて笑ってそのまま指を私の口の中、喉の奥へと突っ込んだ。どんどんと鉄の味は広がっていく。なのに不快ではなかったのはどうしてだろう?面白ェ、漏らした呟きが耳に入った。ねぇこの状況ってどう考えても生命の危機、だよね、え、普通怖いとか恐ろしいとか嫌だとかそういう「恐怖」の感情が浮かぶはずでしょう?アレ、なんで私こんなに呑気に命を奪おうとしている相手の血なんか吸ってるんだろう、あ、わかった、恐怖だなんて感情もう通り過ぎてるんだ、感覚が麻痺してるんだ、だったら仕方ないや――死ぬのは、うん、ちょっと残念だけど。怖くないから別にいいや。てゆかね、コレが現実だってこと、いまいち把握できてないの。まるで蜃気楼の中にでもいるような。その間にも男の指は私の口の中を暴れまわった。透明な雫がつう、と口の端からこぼれた。それでも私の眼はきっと冷静なままなのだろう、ぼんやりとまたがった男を見上げると不意にその瞳と目が合う。その瞳の下にある顔の半分くらいの大きさの刺青(顔に刺青入れるとか正気じゃない)(正気な人間はこんなことしない)に視線が行く。すると、ス、と口が解放された。べとべとになったはずの指を軽く振って、男は楽しそうに笑うと身を屈めて私の血を流し続ける頬の傷を舐めていく。喰われるってこういうことなのか。思っていたよりはずっと狂気を孕んでいる行為だ。























カニバリズムの前戯
















081221












相手の名前も夢主の名前も出てこない。
でも一回こんな雰囲気書いてみたかった。

人識らぶ・・・!