ていうかワケわかんない。あたしはそう口の中でつぶやく。



 あいつがワケわからないのはいつものことだ。いつもいつも部活部活、あたしなんて二の次。でもあいつが卓球に命賭けてる(それは言いすぎかもしれないけれど)のは知っているから、そんなに気にしてない。そりゃあ最初は嫌だったし馬鹿なこともたくさんして困らせたりもしたけれど、嫉妬する対象がイキモノじゃない事実があたしを黙らせた。世の中には仕事と自分のどっちが大事なのかを聞いてしまう人もいるわけだが、あたしも――まぁ以前はともかく――それはなんだか馬鹿馬鹿しく感じている。その部に美少女がいたりするならともかく、我が校の卓球部は男子ばかり、しかも少数。少数精鋭といえば聞こえはいいかもしれないけれど。それに。

 あたしも卓球をやっているからこそ、文句が言えないのだ。


「涼!」
「・・・」


 幼馴染で一緒に卓球も始めた。実力は同じくらい、と言いたい所だがさすがにそれはない。いつのまにやらすごく差が出来ていた。悔しい。あたしのほうが上手かった時期もあったのにね。


「・・・、その」
「・・・。――例の一年坊主クンはどーよ?」
「・・・・・・・・・・・・・」
「聞いてる?」


 ものすごい沈黙が漂う。なんでそんな無言なの、ああもしかして。


「・・・えっ・・・と」
「来週の合宿は参加人数の確認は取ったから。保護者への挨拶も済んだよ」

「加えてそろそろ試合へのレギュラー陣も組んどいたほうがいいよね。合宿の結果から考えてみるよ、先生と話しておく」
、」
「ああそうそう、予備のピンポン玉なんだけどもしかしたら一年分使い切る?合宿のスケジュールみるとそんな気がするんだけど。特に二年の間で。まぁ、一年生は今回耐えられるといいね。だから」
!」


 怒鳴られた。気まずそうだけれど、なんだか睨まれる。あ、怒った。だけど今回の喧嘩はどう考えても涼が悪い。だからあたしは謝らない。謝るまで、卓球部副部長とマネージャーという関係で話してやる。あたしにだって意地はある。少し睨み返す。


「何か?副部長さん」
「・・・・・・悪かった」


 え。うそ、謝った。


「本当に、悪い。――ごめん」
「・・・」


 うわ。珍しい。


「・・・?」





(たまには本気で怒ってみるのもいいかもしれないと謝る君を見て理不尽に思った)







(じゃあ悪いと思ってるんだ)
(・・・・・・ああ。ほんとに悪かった)
(これでデート潰れるの5回目だよね)
(・・・・・・・・・ああ。)
(・・・じゃああの有名アイス店のトリプルで許してあげる)
(腹壊すぞ?)
(涼が診てくれるもんね)
(・・・・・・・・・そのあと、何があっても俺は責任取らないからな)
(え)
(覚悟しとくんだな)