ふわふわの猫っ毛がほんのり赤く染まってるような気がして、俺は何の前触れもなく横の彼女を抱きよせた。「ほわっ、」だとか間抜けな声をあげて俺の腕の中にすっぽりと収まったは、俺を見上げる。その目が本当に愛しくて、吸い込まれるようにしてキスをした。 「んー・・・、」 「酔った?」 「み、たい」 虚ろな口調でそう言ったは、緩慢な動作で俺の首に手をまわした。膝の上に乗った彼女は相当軽い。俺と頭一つは離れないくらいの身長なのだから、女性にしては低いほうではない、ていうか高い。なのになんでこんなに羽みたいに軽いんだろう。痩せすぎではないか、常にそう言ってるけど別に食事の量は普通だし、本人曰く「普通。むしろ重い。」だそうで。とりあえずはその言葉を信じることにはしたけれど、まあ、信用できないよな?俺が相手をしてきた数多くの女たちの中でも、こんなに細い子なんていないだろう。―――っていうか、さ。 「ねえ、」 「・・・・・・うー」 「ちょっとってば。ねえ」 「んー・・・、なに、シャル」 「また痩せただろ」 「んなことないってば」 「嘘つけ、痩せたよ」 「だからぁ、シャルは力が強すぎるん、だってば!」 ちょっとだけ怒ったように言って、は俺を見上げる。「あのね。シャルは強いから、ただの人間の女の体重なんて、あってないようなものに感じちゃうんでしょ。そうでしょ」反論しようと口を開くと、それを彼女はさえぎってなおも続ける。「だって普段からトン単位のものを担いだりしてるじゃない」・・・それは、そうなんだけど。「トン単位に比べればそりゃ軽いよ。重かったら問題だよ。はい、結論。シャルの感覚がおかしいだけですー」うるさいよこの酔っぱらい。でも明らかにこないだより軽く感じるんだけど。そう言おうかと思ったけど、ここはの言葉を素直に受け取っておこうか。一応ほめられた、ってことで。酒で真っ赤な顔、あーあ、相当酔ってるな、これ。酒に弱いわけでもないが強いわけでもないは、結構こうやって酔っぱらう。ねえ、こんな姿。ほかの男の前なんかでやったら殺すよ?そう言うといつも嬉しそうに笑う。 「わたし、シャルにだったら殺されてもいいな」 「そう?じゃあ殺してあげるよ」 「そうだね。いつ殺してくれる?」 「いつがいい?」 「うーん・・・」 困ったように笑って、は首をかしげる。どうせ明日の朝にはこんな会話、覚えていないんだろうな。そう思いながら俺は潤んだ瞳を見つめた。 カシス・オレンジにキス
(太ったら殺して) (却下) 090805 |