「やぁ、ちょっと、あ、いやっ・・・待って、ねえ・・・待って、ルフィっ」
「・・・んー、やだ」
「やだ、って・・・!ちょ、ちょっと・・・!ん・・・っ」


 にこっと太陽みたいに笑う彼にごまかされてしまう私も私である。流されるままに受け入れてしまってから他人事のようにそう思う。だって仕方ないじゃないか。とろけるようなこの笑顔に惑わされずにすむ様な女子がいるなら会ってみたい。



*



「おい、ルフィ。最近ちょっと多すぎんじゃなねえのか」
「ん?何がだ?」
ちゃんだよ!」


 サンジくんの少し苛立ちの混じった声が聞こえて、私は足を止めた。キッチンに返しに行こうとしていたカップがを持った手が軽く震えて足が止まる。「ああ!」とあっけらかんとしたルフィの返事。

「お前なあ・・・。最近、無理させすぎだろうって言ってんだよ」
「んん?そうか?」

 呆れかえったようなサンジくんのため息。私はひっそりと気配を出来るだけ殺して、ゆっくりと壁沿いに進んだ。ギリギリ向こうの様子が見えるところから、そっと窺う。ルフィが楽しそうに笑う横で、サンジくんは渋い顔をしていた。「ししし!」と笑うルフィは、次の瞬間、とんでもないことを口にした。


「おれから誘ってんじゃねえよ。あいつのほうがやりたそーな顔してんだ」
「な、」


 にを言ってるんだあの男。みるみるうちに熱を持つ自分の頬。同じように思わず赤くなったサンジくんをよそに、ルフィは答える。


「おれ、が好きだ。もおれが好きだ。だからわかるんだ」


 ――――ちょっとまって。待ってよ、そんな恥ずかしいこと、よく他人に言えたものだ。そりゃあ、ルフィとする、のは嫌いじゃないっていうか嬉しくて仕方のないことだけれど――――って私は何を考えてるんだ!動揺した拍子にカップが手から滑り落ちる。なすすべなく床に落ちるカップはもちろん重力に逆らえずに乾いた音を立ててあっさりと割れた。その音にばっと二人も私を振り向く。「おお!!」嬉しそうに笑うルフィと思いきり気まずそうに顔を引きつらせるサンジくん。で、多分真っ赤なまま固まった私。うわあ、どんな状況だろうコレ。


「ん?、こっち来いよ」
「え、あ、う・・・」


 ぎこちなく返事をして、割れたカップに手を伸ばす。「――ああ!ちゃん、いいよ危ないからおれが――」と言ったのは、サンジくんだった、はず・・・なのに。突然目の前に現れた顔に、私は慌てた。ソファから一瞬でここまで来たルフィ。そんなことには今さら驚きはしないけれど、あんな話を聞いてしまった後じゃあ、どうしても目を合わせるのが恥ずかしい。そんなことを思っている間に、彼はひょいひょいと破片を拾い上げてくれた。


「んー、ウソップとかフランキーに持ってったら直してくれるんじゃねえか?」
「・・・・・・」


 それはさすがにどうなんだろう。「ん?、熱でもあんのか?さっきからおかしいぞ」お前のせいだお前の。「なんでパクパクしてんだ?」声が出ないんです恥ずかしすぎて!!ああ、もう。だけど、心配そうに私を下からのぞきこむルフィの顔を、二人だけの夜にしか見せることのない熱の灯った火照った視線を思い出してしまう私も、相当参っているんだろう。傍にサンジくんがいるんだから、と必死に抑えた、彼の細くてしなやかな腕の中に飛び込んでしまいたいという衝動は、もしかしてルフィは全部お見通しなんじゃないだろうか。私と視線が合った瞬間に嬉しそうに悪戯っぽく笑った彼に、きっと今日も許してしまうんだろうと考えて、どうしようもないこの心にこっそりと苦笑した。
















ADDICT?

(先にはまったのは、どっち?)











100228